山岸凉子「赤い髪の少年」(1976年7月1日初版・12月15日2版発行)

 収録作品

・「赤い髪の少年」(ジュール・ルナール原作「にんじん」より/1973年5月「別冊セブンティーン」掲載)
「パリ大学のエマニュエル・オードは、従兄のジャンの子供達の家庭教師を勤めることになる。
 子供は三人いたが、末っ子のステファヌは彼は燃えるような赤毛をしており、「にんじん」というあだ名で呼ばれる。
 彼は家族から仲間外れにされており、特に、母親は「にんじん」のすることなすこと全てにケチをつけ、冷たい仕打ちをする。
 エマニュエルは「にんじん」や彼の家庭を観察するうちに、彼が背負っているものを知る…」

・「だれかが風の中で…」(1973年1月「別冊セブンティーン」掲載)
「音楽学校を卒業した後、ニコル・ルスールはラガッシュ家の邸で働くこととなる。
 ラガッシュ家は、当主で若手実業家のピエール、彼の母親、そして、年の離れた、ピエールの弟のジュールの三人。
 彼女の仕事は、目と足が不自由なジュールのピアノの教師兼看護婦であった。
 彼は盲目故に音に敏感で、ピアノの腕は確かであったが、非常に気難しく、そして、深い孤独の中にいた。
 だが、彼を外に連れ出した際、川に転落したことをきっかけに、二人は急速に親しくなる。
 ある日、ピエールがパリから邸に戻って来る。
 ニコルは彼に惹かれていたが、それに嫉妬したジュールは体調を崩す。
 その時、ニコルは彼の周囲に現れる少女の正体に気付くのだが…」

・「学園のムフフフ」(1974年5月「月刊セブンティーン」掲載)
「平岡伸江は進学校に入学して、早速、クラス委員になる。
 冷たそうな態度から「女史」というあだ名を頂戴するが、彼女の興味は「男の子さがし」にあった。
 ある日、彼女の靴箱に、南妙子宛てのラブレターが入っていたことから、彼女と交友を持つこととなる。
 南妙子は保健委員で、外見は非の打ち所のない大和撫子。
 しかして、その実体は、そのイメージを完膚なきまでにブチ壊す個性派レディーであった…」

・「ネジの叫び」(1971年7月「月刊りぼん」掲載)
「ジョージは億万長者の娘、セシル・パークと結婚する。
 セシルは器量も大して良くなく、退屈な娘であった。
 金目当てのジョージは彼女のすることが一々気に入らず、特に、午前十時に家宝の時計のネジを巻くことに苛立って仕方がない。
 ある日、二人はヨットで沖に出て、嵐にあう。
 二人は海に投げ出されるが、ジョージはセシルをわざと助けず、彼女は溺死。
 ジョージは自由になったと喜ぶものの、午前十時になると、セシルの幽霊が時計のネジを巻きに現れる…」

・「クリスマス」(1976年「プリンセス」1月号掲載)
「七歳のジョルジュは、両親の離婚騒動がもとで親戚の間を転々とし、雪の日、アイオワ州のフォーク家に辿り着く。
 そこで、彼はミス・クックという女性と出会う。
 彼女は四十を過ぎたオールド・ミスで、フォーク家の実権を握るマーガレテの姉なのに、家族からは全く相手にされていなかった。
 彼は、この感傷的で、繊細すぎる従姉の「騎士(ナイト)」になろうと決意する。
 粗末な台所部屋で、二人と犬のバディは貧しいながらも満ちたりた生活を送る。
 そして、五年目のクリスマス…」

 怪奇マンガの名品、「だれかが風の中で…」と「ネジの叫び」が収録されております。
 特に、「ネジの叫び」は、幽霊の無機質な描写と強烈なバッド・エンドで、名作の呼び声高い作品です。
 あと、「学園のムフフフ」は山岸流学園コメディーで、(いろんな意味で)唸らされます。

2022年1月16・17日 ページ作成・執筆

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