楳図かずお「うろこの顔」(1970年7月10日初版・1984年5月30日12刷発行)

「陽子は幼い頃、母親と共に沼田家の一員となる。
 そこで、新しい父親の娘、久留美と非常に仲睦まじい姉妹となる。
 だが、姉の久留美が中学校に通っている頃、脳性小児まひにかかり、四肢が不自由となる。
 寝たきりの姉を、陽子は甲斐甲斐しく世話するが、久留美は五体満足な陽子に憎しみを募らせる。
 ある日、陽子が、姉をおぶって散歩に連れ出した時、大苦手な蛇に驚き、姉をその場に残して、逃げ出してしまう。
 陽子が戻ろうと逡巡していると、雨の中、姉はどうにか這いずって、家まで戻ってくる。
 そして、姉の後には幾匹もの蛇がついて来ていた。
 以来、陽子の前でのみ、姉の様子がおかしくなり、その様子はまるで蛇のよう。
 陽子は、鏡を釘で固定した際に蛇の頭を打ち抜いた祟りと怯え、ノイローゼ気味となる。
 遂には、二階から窓と共に転落し、大怪我を負って、入院。
 病院でも、陽子は、病室に姉は這って来て、傷を悪化させると訴える。
 だが、その姉が自宅で急死、父親は火葬するに忍びなく地下室に死体を安置する。
 姉の死のお陰か、陽子は順調に回復し、明るい日々を取り戻したかに見えた。
 しかし、あらゆるものに蛇の幻を見るようになり、自分が正常であるかどうかわからなくなっていく。
 ある日の入浴中、陽子は、病院で姉に傷つけられた右ひじの傷の周囲がうろこに覆われていることを知り、ショックを受ける。
 その頃から、少女が何者かに襲われ、血を吸われる事件が起こるようになる。
 知り合いの魔子が陽子を訪ねると、彼女は死んだはずの姉が生きていると恐怖に震えていた。
 へび少女は一体誰なのであろうか…?」
(「少女フレンド」1967年2月27日号〜6月4日号にて連載)(注1)

 楳図かずお先生の典型的な「蛇もの」の一つですが、ラストが牽強付会に過ぎ、読後感は今一つです。(それでも、紛うことなき名作です。)
 それよりも、個人的には、ハマーの「へっぽこ」ホラー映画「蛇女の恐怖」の影響があるところが珍しく思いました。
(「夜更けの百物語」でgogo様が「ハマー的へび女」と鋭い指摘を先にしております。)
 蛇女の容姿もですが、映画での「蛇を崇める邪神教により呪いをかけられ蛇女になる」という設定も共通しております。
 とは言え、あくまでも表面的な影響にとどまり、「楳図かずお」ワールドは頑として揺るぎないところに凄さを感じます。

・注1
 単行本の解説ではこう書かれておりますが、「楳図かずお大解剖」では1968年に「少女コミック」に連載となってます。
 どちらが正しいのかは、よくわかりません…。

2017年6月14日 ページ作成・執筆

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