伊藤潤二「路地裏」(1992年12月20日第一刷発行)
収録作品(「月刊ハロウィン」1992年2月号〜9月号掲載)
・「遺書」
「妹の妙子が電車へ飛び込み自殺した。
その手にはしっかりと遺書が握られており、その遺書には呪いの言葉が書き連ねていた。ただ、血に染まって誰を呪ったものかはわからない。
妙子は、実はもらい子で、家族はそのことが心の重荷になったのではないか、と考える。
が、姉は他に原因があるのではないかと考え、妙子のクラスメートに誰か憎んでいた人間がいたかどうか尋ねる。
クラスメートが答えるには、山田啓子という女生徒と猛烈に反発し合っていたという話だが、山田啓子は去年には転校していた。
その夜、二階の妙子の部屋から、奇妙な声が聞こえる。
家族が部屋に向かうと、そこに血まみれの妙子の幽霊がいた…」
・「路地裏」
「ある町中にある民家の二階に下宿することになった学生。
その家には母親と、忍という娘の二人。父親は行方不明になったという。
下宿に泊まった最初の夜、彼は壁の向こうから子供達の遊び声を耳にする。
夜遅くに迷惑だと思い、窓から身を乗り出し、声がする壁の向こう側を覗き込んだが、そこは両端を高い壁で塞がれている路地裏であった。
その次の夜、今度は忍の名を呼ぶ薄気味の悪い声が聞こえてくる。
どうもあの外部から遮断されている路地裏から聞こえてくるようだが…」
・「押切異談」
「押切トオルは、彼の住む屋敷で、クラスメートの藤井未央の姿を見かける。
が、彼女は押切を見ると、悲鳴を上げて逃げようとし、その姿は薄れて消えてしまう。
このことが気にかかり、彼が教室で藤井未央を見つめていたところを、同級の青山にからかわれ、喧嘩になる。
その夜、押切の屋敷で、巨大な青山が現われるが、すぐにどろどろに溶けてしまう。
翌日、藤井未央と一緒に帰宅することになるが、彼女は押切の屋敷を見たがる。
押切はこの屋敷は異次元とつながっているので彼女に入らないように勧めるが、門の所で彼女は姿を消してしまうのだった…」
・「ファッション・モデル」
「大学での映画サークル。
彼らは映画を撮ろうと、ヒロインを募集すると、恐ろしく個性的な「ファッション・モデル」が応募していた。
作品に箔がつくからと、可愛い女の子とその「ファッション・モデル」を採用して、郊外で撮影を開始。
ただ、この「ファッション・モデル」には牙もはえていて、プライドも高かった…」
・「双一の楽しい日記」
「一年ぶりに親戚の家を訪ねる、裕介と路菜。
路菜は早速双一の悪戯に引っかかり、双一は逃亡。
その間にこっそりと双一の部屋を路菜は覗くが、そこに双一の日記があった…」
・「双一の家庭訪問」
「夏休み、問題行動が多い双一を立ちなおさせるために、担任の柳田教師が家を訪れる。
熱心な先生だが、相手が相手だけにどんどんやつれていく。
柳田は、双一が片思いをしている女生徒を彼に引き合わせるが…」
平成27年2月5日 ページ作成・執筆