杉山敏「シムグル@」(2021年3月30日第1刷発行)

単行本@
・「プロローグ 解放」
 北の海。
 ロシアのコンテナ船の横に停泊する日本の中型貨物船。
 貨物船を借りているのは、ITベンチャー企業の真備社長であった。
 彼は通訳と共にタンカーに乗り込み、アバルキンというロシア人と出会う。
 アバルキンは真備社長に、ロシアの研究所で遺伝子操作された強化動物達を見せる。
 人語を解する鸚鵡、天才的な頭脳を持ったナマケモノ、迷彩能力に長けたカメレオン…etc…。
 そして、極めつけは、神話に出てくる氷の神から名付けられた、巨大な虎「シムグル」。
 シムグルは生物としてあらゆる要素が最大限に強化され、体高5.2m、頭胴長11.5m、体重7.3tという桁外れの大きさであった。
 真備社長とアルバキンが商談をしている中、ナマケモノは木の棒を使い、操作盤を操作し…。
・「第1話 邂逅」
 北海道、雄部町は「陸の孤島」と言われる田舎町。
 成島昴はそこの市役所の生活環境係であった。
 彼は観光協会からガイドも兼任しており、その日、岩上キャンプ場で観光客を案内していた。
 観光客は、わけありの父娘(父親は即応予備自衛官、娘の名は園香)、映画を撮影する二人連れの男(清水と飯塚)、チャラいカップル(コージとマリ)、老夫婦の八人。
 野生動物を遠くから見物した後、キャンプ場に向かっていると、銃声が聞こえる。
 熊が出たのかもしらないとキャンプ場に急ぐと、キャンプ場には人気がなく、スマホも通じない。
 訝りながら、先に進むと、無残な死体が幾つも転がっていた…。
・「第2話 襲撃」
 彼らの前に現れた巨大な虎、シムグル。
 即応予備自衛官の男性のとっさの判断で、彼らは管理棟の建物に避難する。
 だが、シムグルは建物の屋根の上に乗り、屋根を突き破る。
 彼らは駐車場の方へと走るのだが…。
・「第3話 異変」
 その頃、ロシアでは…。
 強化種を乗せたコンテナ船が北海道北東部の沿岸で座礁したことから、ガルノエ生命科学研究所は軍により制圧される。
 所長のレスコフと助手のトルスタヤは、危機管理局の副局長、ゼーリンと会う。
 状況は悪化しつつあり、レスコフとトルスタヤはゼーリンに同行しなければならなくなる。
 一方、雄部町のキャンプ場では、車は全てひっくり返され、基地局も破壊されていた。
 背後からはシムグルが迫り、町のある方向に向かって藪を突っ切るしかない。
 しかし、逃げるうちに、彼らは離れ離れになり…。
・「第4話 逃走」
 昴と園香はシムグルに狙われる。
 猟銃の弾も尽き、絶体絶命。
 その時、昴は唯一、避難できる場所を思いつく。
 二人はそこまでたどり着けるのか…?
・「第5話 警報」
 雄部町の警察署に、江口という老人がやって来る。
 彼は、巨大なヤシガニの死体を警察官達に見せ、警報を出すよう言う。
 警察官達が話し合いをしている最中、停電が起こる。
 その原因とは…?
 一方、昴は、このままでは日が暮れてしまうので、別の出口から脱出を試みる…」

 作者の杉山敏先生は巨大昆虫を扱った「インセクト」で知られる御方ですが、この作品では、強化動物達が北海道の田舎町を襲っております。
 しかも、次巻予告ではこれに加えて、ロシアの特殊部隊が上陸すると書かれており、期待度がいやが上にも高まるばかりですが、悲しい哉、次巻は未発売です…。
 私の検索の仕方が下手なせいかもしれませんが、いくら調べても、一巻の情報しか見つかりません。
 打ち切りになったのか、掲載雑誌が潰れたのか…理由は不明です。
 でも、もしも、杉山敏先生に続きを描く意欲があるのであれば、どこかの出版社様、チャンスを与えていただけないものでしょうか?
 1巻を読んだだけですが、未完にするには惜しい内容だと思います。

2022年12月17・18日 ページ作成・執筆

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