諸星大二郎「栞と紙魚子 殺戮詩集」(2000年1月30日第1刷発行)

 女子校生コンビの栞と紙魚子。
 栞は新刊書店の娘で、紙魚子は古本屋、宇論堂の娘。
 彼女達は毎回、おかしな事件に巻き込まれる…。

・「魔書アッカバッカ」(「ネムキ」1998年3月号)
「宇論堂に奇妙な男が本を売りに来る。
 その本は洋書のようだが、文字は全く見たことがなく、また、挿絵が多いので、図鑑かと思いきや、絵は理解不能。
 そこに、段一知先生が立ち寄り、その本は「アッカバッカ」という珍しい本だと話す。
 段先生は「アッカバッカ」ともう一冊買って帰るが、入れ替わりに、黒いフードとローブの格好をした三人組が現れ、「アッカバッカ」について尋ねる。
 段先生が買ったと聞くと、彼らは段先生を追い、クトルーちゃんを人質にとるのだが…。
 更に、同じく「アッカバッカ」を捜す、一つの帽子をかぶった七人組の男達まで現れて…。
 「アッカバッカ」とは何の本なのだろうか…?」

・「頸山の怪病院」(「ネムキ」1998年5月号)
「栞は、盲腸で入院した紙魚子の見舞いに「首山病院」を訪れる。
 だが、看板は「頸山病院」となっており、建物は古く、人っ気もない。
 紙魚子のいる402号室に行くも、彼女はおらず、ベッドのおばさんから助けを求められる。
 おばさんが言うには、ここにいると、殺されて、内臓を移植用に取られてしまうらしい。
 栞は案内所で紙魚子のことを尋ねるが、彼女はここに入院していないと言われる。
 訝っていると、紙魚子に似た娘を乗せたストレッチャーを見かけ、それを追って、地下階に降りる。
 そこで、栞は、旧帝国軍人の亡霊達に遭遇し、看護婦にある部屋に引っ張り込まれる。
 看護婦によると、この病院は太平洋戦争中、化学兵器の研究をしていたという。
 話をしているうちに、栞は麻酔注射を打たれ、昏睡。
 気が付くと、ベッドに拘束されていた。
 そこに、紙魚子に似た、眼鏡をかけた娘が現れ、栞の拘束を解いてくれる。
 彼女は、その代わりに、廊下の一番奥の部屋にある戸棚から「川島」と書かれたビンを、廊下を曲がった先の保管室まで持ってきてほしいと頼むのだが…」

・「殺戮詩集」(「ネムキ」1998年7月号)
「初夏のある日。
 栞と紙魚子は、背が高く、黒髪の長い、陰気な女に声をかけられる。
 彼女はムルムルを生で丸飲みする、ワイルドな奇人であった。
 紙魚子は彼女に見覚えがあり、女流詩人の「菱田きとら」だと思い当たる。
 菱田きとらは年齢不詳、放浪癖があり、自費出版の「殺戮詩集」で知られていた。
 「殺戮詩集」は殺人を生々しく綴ったもので、その記述通りに、恋人を殺害。
 だが、心神喪失で、無罪になり、一年前に精神病院を退院したらしい。
 そして、きとらは、一年前の出版社のパーティで段一知先生に一目惚れして、彼を追って、胃の頭町までやって来た。
 紙魚子は、「殺戮詩集」と引き換えに、段先生を、きとらの朗読会に連れ込むのだが…」

・「ペットの散歩」(「ネムキ」1998年9月号)
「栞が散歩道で時々出会う、品のいい奥様。
 彼女はいつもペットをつれているが、それがなんなのか、よくわからない。
 ある日、栞は、彼女が買い物に行きたいが、ペットは連れて行けないと困っているのを知り、散歩を引き受ける。
 ルートはペットが知っており、一回りしたら、同じ所に戻ってくるというのだが、ペットの力が強く、栞は携帯電話で紙魚子に応援を頼む。
 二人で力を合わせて、茂みからペットを引っ張り出すものの、その姿は目に見えない。
 栞と紙魚子は引っぱりまわされるうちに、奇妙な所に入り込んでいく。
 ペットの「ジョン」の正体とは…?」

・「長い廊下」(「ネムキ」1998年11月号)
「栞と紙魚子は、首山町にある長頸寺を訪れる。
 長頸寺は応永年間の創建で、頸山城城主、顎(あぎと)長勝の菩提寺であった。
 寺を拝観している時、立ち入り禁止になっている場所がある。
 そこは薄暗い廊下で、栞はロープを越えて、入ってみる。
 そこはひたすら長い廊下であった。
 戻ろうとしても、背後も長い廊下が続き、もといた場所がわからなくなる。
 広大な回廊をさまよっていると、栞は一人の僧侶を目にする。
 彼に出口を聞こうとするが、僧侶は目の色を変えて、彼女に迫り、栞は逃げ出すのだが…。
 一方、紙魚子は、栞の姿が消えたので、立ち入り禁止の廊下に入ろうとしたところを住職に止められる。
 この廊下には、四百年前、若くして名僧と言われた岳念と、顎長勝の娘、長姫にまつわる恐ろしい話が伝えられていた…」

・「きとらのストーカー日記」(「ネムキ」1999年1月号)
「菱田きとらは段一知先生を今日もせっせとストーキング。
 先生とお近づきになるために、まず、クトルーちゃんと仲良くなり、段先生の奥さんともお知り合いになる。
 そこで、彼女は、今まで温めていた計画を実行に移す。
 それは、忘年会を兼ねた立食パーティ(会費は三千円)を開き、段先生の奥さんに、農薬を仕込んだムルムルを食べさせるというものであった。
 立食パーティには例の面々が集合するのだが、きとらの計画や如何に…?」

・「ゼノ奥さん」(「ネムキ」1999年3月号)
「新しくできた輸入雑貨の店で、栞と紙魚子は、「ペットの散歩」の回で出てきた婦人と出会う。
 今日はペットを別の人に預けてるとのことで安心していたら、結局、栞達がペットの「ベティ」のヒモを持つ破目になる。
 「ベティ」は食事の時間なので、空を飛んで、婦人の家に戻る。
 そこで、二人は、二匹の毛むくじゃらの生物に歓待されるのだが…」

・「頸山城妖姫録」(「ネムキ」1999年5月・7月号)
「栞と紙魚子は、首山にある「刹笑園(さっしょうえん)」という公園を訪れる。
 この庭園は鎌倉時代に顎氏によって建造され、最初は浄土式庭園だったものを書院造の回遊式庭園に作り替えたため、変わった点が幾つもあった。
 また、この庭園は、血生臭い逸話の多い長姫と関わりが深かった。
 庭園の茶屋で、その長姫が二人の前に姿を現す。
 長姫は栞の形を借りて復活し、栞は長姫の地底城に閉じ込められる。
 そこで、栞は若い侍と会うのだが、彼は頸山神社のお化け鳥居と関係があった。(「栞と紙魚子と青い馬」を参照のこと)
 一方の紙魚子は、栞を救うために、紙魚子は段一知先生に協力を仰ぐ。
 「刹笑園」の秘密とは…?」

 「妖怪ハンター」風の「頸山城妖姫録」が力作ですが、オツムの程度が低いために、よく理解できないのが悲しい…。
 あと、「アッカバッカ」のドト〜のバカバカしさがツボのハマってます。

2021年12月24・26・28・30日 ページ作成・執筆

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