御茶漬海苔「御茶漬海苔の妖怪図鑑@」(1991年11月20日初版発行)
・「第1話 真夜中のレストラン」(「月刊ハロウィン」1991年3月号)
「沢口鈴香は偏食の激しい、甘いものが大好きな女の子。
夕飯の時、パフェが食べたいと駄々をこね、何も食べずに部屋に引きこもる。
お腹をすかしていると、卵のような形の男(エッグマン)が彼女の部屋を訪れる。
彼に連れられ、鈴香が馬車でレストランに行くと、絶品の極上スイーツの連続で、鈴香は堪能。
エッグマンは次の夜も迎えに来るが…」
・「第2話 万華鏡」(「月刊ハロウィン」1991年3月号)
「中学生の沙織は春休みの間、祖母のもとに滞在する。
押し入れには祖母のしまっておいたおもちゃあり、その中に万華鏡があった。
沙織が覗くと、万華鏡は壊れているのか、真っ暗であった。
祖母は万華鏡を目にして、狼狽する。
その万華鏡は「人の願いをかなえる力を持って」いるが、「その代償としてとっても悪いことがその人にかかってくる」のだという。
沙織は祖母にその万華鏡を返すが、その夜、悲しい夢を見て、目覚めると、沙織の前にその万華鏡があった…」
・「第3話 釘」(「月刊ハロウィン」1991年4月号)
「都内の静かな住宅地に建つアンティークな一軒家。
家賃は月六万円という安さで、ある一家(両親と一人娘の美雪)が引っ越してくる。
素敵な家だが、ただ一つ、あちらこちらに釘が中途半端に打ち付けてある。
特に、ある部屋のドアにたくさんの釘が打ってあり、釘を抜いてドアを開くと、中は床、壁、家財まで釘だらけであった。
その夜…」
・「第4話 妖怪コブコブ」(「月刊ハロウィン」1991年4月号)
「温子は、友人の秀美が憧れの雅彦と付き合っていることを知り、嫉妬の炎を燃やす。
そんな時、ある路地で、一人の女性が小さな社にお参りしているのを目にする。
その人物はコブだらけの異様な風貌で、コブコブ様にコブをとってもらうよう祈っていた。
人物が立ち去った後、温子が神社の扉を開けると、丸いコブのようなものが入っていた。
そのコブは奇怪な生き物で、「コブつけてやろうか」としきりに繰り返す。
温子はこれを秀美にくっつければ、コブになると考え…」
・「第5話 妖怪サンビロッチ様」(「月刊ハロウィン」1991年5月号)
「姉は、いたずらな妹のメグに怒り心頭。
だが、風呂場で折檻しているうちに、メグは溺死してしまう。
慌てて、姉は妹の死体をバラバラにして、ゴミ袋に入れる。
その時、祖母の言葉が脳裏によみがえる。
サンビロッチ様と三回唱えれば、サンビロッチ様が願いを叶えてくれるというのだが…」
・「第6話 ネコバンマ」(「月刊ハロウィン」1991年5月号)
「雨の夜、雪子は捨て猫を見つけ、マンションに持ち帰る。
母親は物凄い形相で猫をもとの場所に戻すよう言うが、雪子は一晩だけここに置いてくれるよう頼む。
翌日、彼女は友人達の家をまわって、子猫を引き取ってくれるよう頼むが、みんな断られる。
雪子がマンションに戻ると、母親は子猫を「ネコの捨て墓場」に捨てていた。
雪子は慌てて「ネコの捨て墓場」に向かう。
そこは惨殺された猫の死体がたくさん転がっていた。
子猫はサラリーマン男性二人にいじめられており、雪子は子猫をかばうのだが…」
・「第7話 おいしいケーキ屋さん」(「月刊ハロウィン」1991年6月号)
「行列のできるケーキ屋、ベルケーキ。
この店は店長が一人で切り盛りしており、ケーキはクセになるぐらい美味しい。
この店のせいで家のケーキ屋が潰れたリカは、友人のカヤコと一緒に、ケーキの秘密を暴こうと考える。
夜、店長がトラックで外出する際、二人は後ろの荷台に潜り込む。
トラックは山道を行き、店長はある湖に網を持って入っていく。
彼が捕まえたものは人魚で…」
・「第8話 妖怪タバコ」(「月刊ハロウィン」1991年6月号)
「幸子と祥子は中学生なのに、タバコを吸っていた。
幸子の母親にタバコを没収され、二人は深夜、自動販売機にタバコを買いに行く。
すると、見慣れぬ販売機があり、中には見た事のない銘柄のタバコが売られていた。
お金を入れてないのに、何故かタバコが出てきて、二人は早速、味見をする。
全く知らない銘柄であったが、今まで吸ったどんなタバコよりも、これはうまい。
しかし、このタバコを吸ううちに、幸子の身体中に黒いシミができていく。
禁断症状に苦しむ彼女の前に、「妖怪タバコ」が現れ、もっと吸うよう唆すが…」
・「第9話 妖怪薬局」(「月刊ハロウィン」1991年7月号)
「田中という女子中学生が、高校受験の前夜、猛烈な歯痛に襲われる。
このままでは受験をあきらめるしかなく、彼女は薬局を捜してまわる。
遅い時間にもかかわらず、一軒だけ、「妖怪薬局」という所が開いていた。
彼女は痛み止めをもらうと、先程の歯痛が嘘のようにぴったり止まる。
薬局の店主は彼女にある忠告をするのだが…」
・「第10話 妖怪刑事」(「月刊ハロウィン」1991年7月号)
「正義中学校2年D組。
ドジコは大人しい眼鏡っ子で、いじめの標的にされていた。
ある日の体育の授業、クラスメートの財布が盗まれ、ドジコにその罪が着せられる。
教師も父親も彼女の訴えを信じてくれず、彼女は悔しさのあまり、外へと駆け出す。
どんどん走っているうちに、雨が降り出し、彼女は雨宿りのために、電話ボックスに入る。
中には「妖怪刑事 無実の罪でお悩みのあなたをおすくいいたします」というチラシが貼ってあった。
彼女がチラシの電話番号にかけると、妖怪刑事が現れ、自分の目を見るよう命令する。
嘘をつく者が、妖怪刑事の目を見ると、両目が潰れてしまうのであった。
ドジコの無実を知った妖怪刑事は真犯人を捜しに行く…」
1980年代後半、御茶漬海苔先生は「惨劇館」でノリに乗っておりました。
しかし、1989年の宮崎勤(注1)事件の煽りをもろにくらい、規制に雁字搦めになって、妖怪ものを始めたのが本作です。(注2)
よほど自由がなかったのか、切れ味の鈍い作品が多く、苦労が偲ばれます。
あえて単行本のベストを選ぶとすれば、痛い描写で満載の「釘」です。
ぶんか社・コミックスにてほぼ同内容で再刊されております。(差異は表紙、目次、タイトル表紙の文字の写植ぐらいだと思います。)
・注1
先日、稲川淳二さんの怪談ライブに行ったところ、宮崎勤の話題が出て驚きました。
うろ覚えで申し訳ないのですが、稲川さんによると、宮崎勤は普通の青年だったとのこと。
そして、その普通の青年があのようなことをしでかしたのは、何かにとり憑かれたのではないのかと…。
その真偽はともかくとして、宮崎勤の部屋の様子を捏造して、日野日出志先生に多大な迷惑をかけた記者は地獄に堕ちろ!!
・注2
ハロウィン時代の御茶漬海苔先生に関しては、「消えたマンガ雑誌」(メディア・ファクトリー/2000年2月14日発行)のインタビュー(pp104〜108)が非常に参考になります。
2023年10月4日 ページ作成・執筆