ムロタニツネ象「地獄くん」(サン・ワイド・コミック)(1986年6月20日初版)

 収録作品

「地獄くん」
・「第一話 スペア・タイヤの悲鳴」
「飲酒運転の常習犯の運転手。
 乱暴な運転がたたり、夜道で親子連れの母親の方をはねてしまう。
 目撃者である娘の方も轢き殺そうとしたところに、地獄くんが現われる…」

・「第二話 地獄への片道切符」
「飛行機の機長の息子を誘拐して、密輸を企むギャング団。
 彼らは地獄くんの手によって、墓石のジャングルに送り込まれる。
 そこで一つ目の墓場怪獣に追いかけまわされる破目になるのだった…」

・「第三話 悪魔火」(「少年」12月号付録
「放火魔の大学生。
 彼は、火の燃え盛る様子が愉快で仕方がない。
 あるきっかけから、彼は、阿久魔建設の社長から放火のアルバイトに雇われる。
 放火の指定先は彼の母校である中学校。
 学生は深夜の学校に侵入し、油をまいて、火をつけようとするのだが…。
 学生と阿久魔建設の社長に地獄くんが正義の鉄槌を下す…」

・「第四話 一万円札の中」
「苦学生の青年がアルバイトからの帰り、不良学生達に稼いだ金を奪われそうになる。
 そこに地獄くんが現われ、苦学生の青年の危機を救う。
 そして、不良学生への制裁は…」

・「第五話 地獄の声」
「スポーツカーに轢き逃げされた三太郎。
 延々と続く亡者の行進に加わり、進んだ果てに、えんま大王の裁きがある。
 三太郎はえんま大王に生き返らしてくれるよう懇願。
 えんま大王は「二度目の生」を与える代わりに、「24時間の契約」を果たすよう言う。
「24時間の契約」とは、生き返ったから24時間誰とも口をきいてはいけないというものだった。
 契約を果たすため、三太郎は涙を飲んで、両親や友人たちを避けて、独りで隠れて過ごすが…」

「人形地獄」
・「第一話 怪奇死郎」
「女生徒の吉井邦子と彼女の弟、健は不良達の車に拉致され、シンナー遊びを強要される。
 邦子は車から逃げ出すが、シンナー中毒を起こし昏倒、そんな瀕死の女生徒吉井邦子を救ったのは、怪奇死郎という青年だった。
 邦子が不良達の車に戻ると、すでに弟は不良達と車内で中毒死していた。
 健の死体にすがり、生き返してくれるよう神様にお願いする。
 怪奇死郎は神などいないと言い放ち、自分と一緒に「ブラックゾーン」に来れば、健に会えるかもしれないと告げる。
 邦子はブラックゾーンに行くことを決意し、怪奇死郎と共に、池に映った満月に身体を沈める。
 二人は、健の姿を捜して、ブラックゾーンをさまようが、彼らの前には様々な障害が立ち塞がる…」

・「第二話 虫地獄」
「森で蝶採集をする小学生三人。
 彼らは蝶の群れを追って、森の奥に入り込むが、そこで蝶の化物に襲われる。
 何とか撃退したものの、そこは昆虫の化物が人間を「採集」する世界だった…」

・「第三話 人形地獄」
「雨の夜、三四郎と幸子の兄妹は、剣道の稽古からの帰りに、女性の悲鳴を耳にする。
 駆けつけると、外国人の娘、ヘレンが、人形に襲われていたのだった。
 壮年の男性の姿をした人形は通りがかった車に轢かれてバラバラになる。
 その車に乗っていたのは、ヘレンの近所に住む美鈴霊花という女性だった。
 三四郎達が霊花の車でヘレンの家まで送ってもらうと、ヘレン宅で三四郎は旧友ジョニーと偶然にも再会する。
 後日、ジョニーが道場の三四郎を訪ねてくる。
 彼によると、真夜中に、姉のヘレンがどこかへ出歩いているというのだ。
 その夜、三四郎とジョニーが見張りをしていると、夢遊病者のようにヘレンは寝室から外人墓地に向かう。
 すると、先導をする、小さな気味の悪い人形と共に、ヘレンは宙に浮かび上がり、墓地の森の中へと姿を消してしまう。
 朝になると、ヘレンはいつの間にかベッドに戻っていたが、その日にヘレンは急逝。
 何故、ヘレンは死んだのか?
 魔の手はジョニー、また、三四郎と幸子にも伸びる…」

 ソノラマ・コミックスの名作「地獄くん」と、傑作中の傑作「人形地獄」のカップリングです。
 惜しむらくは「人形地獄」内の「パビリオン地獄」が削られておりますが、「人形地獄」がプレミア化している現在、他の三作(傑作揃い!!)を読めるだけ御の字だと思います。
「地獄くん」に関しましては、太田出版による復刻もありますが、あの本は印刷ミスがあったと思いますので、私としてはサン・ワイド・コミックスの方をお勧めします。
 約三十年前の本でありますが、入手はそこまで困難ではありませんし、450ページもありますので、非常にお得だと思います。
 願わくば、復刻して欲しいところですが、もしそういう話があるのならば、歴史に埋もれているムロタニツネ象先生の怪奇マンガもどんどん発掘してほしいものです。
 とりあえず、ムロタニツネ象・版「モロー博士の島」が読みたいなあ…。

2015年2月3日 ページ作成・執筆
2017年1月1日 加筆訂正
2018年10月24日 加筆訂正

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