伊藤潤二「布製教師」(1993年8月20日第一刷発行)
収録作品(「月刊ハロウィン」1992年10月号〜1993年3月号掲載)
・「落下」
「青年が帰宅した時、彼の妻エリカが首を吊っていた。
発見が早く大事には至らなかったが、遺書には「この町に異変が起きる」と書かれていた。
病院の看護婦が言うには、今年に入りこの町では自殺が多く、似たような遺書を残していると言う。
その夜、エリカは病院を抜け出す。他にも若い人間が二百人程度失踪。
幸い、エリカは高い木の枝に引っかかっているところを発見されるが、他の人間は行方が分からない。
エリカは極度の疲労で眠り続けるが、彼女の看病をする青年の前で宙に浮き上がる…」
・「相部屋」
「不注意なドライバーによる衝突事故。
車を運転していた女性二人はある病院の、同じ部屋に入院することになる。
彼女達とは四人の女性が相部屋なのだが、四人の女性達は皆、身体に異常があるわけでなかった。
しかし、点滴だけで食事をとらない。
また、夜中には四人一緒の夢を見て、トイレに行く時は四人揃ってだった。
あまりに気味悪く、怪我をした女性の一人は別室に移るが…」
・「旅館」
「光代が十歳ぐらいの頃。
彼女の父は、ご先祖様が枕元に立ち、温泉が出るというのを真に受け、家の床をぶち抜き、温泉を掘り始める。
二ヶ月も掘り続け、ようやく温泉に行き当たったものの、父親の奇妙な変貌に、母親は光代を連れ、家を出る。
それから、十年後、成人した光代からその話を聴いた青年は、父親が経営していると言う旅館に行ってみる…」
・「布製教師」
「夏休みが終わり、二学期が始まる。
が、柳田先生の様子がどうもおかしい。全くワケのわからない性格になってしまっている…まるで双一みたいに…。
級長達は、先生がニセモノだと気付き、双一の仕業であることを確信する。
何とか謎を明らかにしようとするものの、級長にヒゲが生えたり、女教師も人形にされたり、奇妙な事件が続発する…」
メテオールによる「先生は布」という曲がありました…変ですが、いい歌です。
・「押切異談・壁」
「あの屋敷で幻視や幻聴に悩まされる押切トオル。最近は壁の中を誰かが蠢いているような気配がある。
息抜きに、押切はいとこの家に泊まりに行った時、地震が起こる
屋敷に戻ってみると、壁の一部が壊れ、半ば石化した死体が露出していた。
死体のことを調べようと、昔の資料をあさっていると、奇妙な写真が見つかる。
それは、青年が暖炉の上の壁から上半身を突き出しているというものだったが、暖炉の上の壁を調べても、何もおかしなところはない。
その時、予定よりも早く両親が帰宅してきた…」
平成27年2月5日 ページ作成・執筆