伊藤潤二「首のない彫刻」
(1991年10月20日第一刷・1995年11月20日第六刷発行)

 収録作品

・「ペンフレンド」(「月刊ハロウィン」1991年2月号)
「両親が海外赴任しているために、ただっ広い家に一人住む高校生、押切トオル。
 孤独には慣れているものの、たまに人寂しいことがある。
 そこで、彼は、美術室で一人、自画像を描いている女生徒、里見に声をかける。
 最初はしっくりいかなかったが、徐々に打ち解けていく。
 里見も孤独な身だったが、彼女にはペンフレンドが三人いた。
 そして、ペンフレンドとは心が通じ合っていると里見は言うが…」

・「橋」(「月刊ハロウィン」1991年3月号)
「老い先短い祖母を訪ねてきた女性。
 山奥の村落にある祖母の家は、小さな石橋の向こうにあった。
 その石橋の途中に、白装束の老人がたたずんでいた。
 女性が声をかけると、その老人は腐乱死体。
 祖母の家に逃げ込むと、祖母はあの老人は大昔に亡くなったおじだと言う。
 その昔、この村には奇妙な風習があり、人が亡くなると、畳に乗せて、流していた。
 そして、流している最中、畳から落ちて沈んでしまうと、成仏できないと言われていた。
 その成仏できない死者たちが祖母を呼んでいる…」

・「サーカスが来た」(「月刊ハロウィン」1991年4月号)
「ある田舎の小さな町にやってきたサーカス。
 しかし、初っ端からトラブル続き。
 片端から死んでいく団員達に観客の目は釘付けになる…」

・「蜂の巣」(「月刊ハロウィン」1991年5月号)
「スズメバチの巣を集めるのが趣味の青年、高野。
 しかし、彼の巣集めを邪魔する少年がいた。
 少年は、真昼間の住宅街で、殺虫剤も防護服も使わず素手で蜂の巣をもぎ取っては、どこかへ持ち去っている。
 高野は自分が目星をつけた巣を何度も持っていかれたため、少年の行く先を探ると…」

・「地図の町」(「月刊ハロウィン」1991年6月号)
「ささやかな新婚旅行で「導(しるべ)」という町を訪れたカップル。
 そこは町の至る所に、地図や標識があった。
 地元の人の話によると、ここには人間の方向感覚を麻痺させる地域で、皆、すぐに迷ってしまうらしい。
 カップルは旅館を目指すが、途中の地図で宝のありかを示す落書きがあった。
 とりあえず、その場所に行って掘ってみると、小判の詰まった壷が出てくる…」

・「首のない彫刻」(「月刊ハロウィン」1991年7月号)
「旧校舎の美術室。
 この学校の美術の先生は、個展を開くほどの人物だったが、彼のつくる彫像は皆、首がないのが特徴だった。
 ある日、数日後に迫った個展の準備のため、美術室に残っていた先生は、首なし死体で発見される。
 そして、先生とともに残っていたはずの男子生徒、島田もどうも様子がおかしい。
 島田のガールフレンド、留美に島田は真実を話すと言い、美術室に案内するが…」
 首のない人形が「首」を欲しがるマンガはいくつかあったように記憶しておりますが、その中での最高傑作でしょう。
 一つの「首」を巡って、首なしの彫刻が集まって蠢いている描写は圧倒的な迫力で、夢に出てきそうです。
 ただ、何故、彫刻が発声できるのか?という疑問が若干残りますが…。(怪奇マンガにそんなこと言っちゃダメ!!)

平成27年2月5日 ページ作成・執筆

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