榎本由美「聖ワルプルギスの夜」(1992年1月20日初版発行)
収録作品
・「゛モルゴット・ラ・フェ″シリーズT 白い影のレクイエム」(1990年「少女フレンド増刊サスペンス&ホラー」4月1日号)
「憂夜は、赤い髪で中性的なルックスをした、「モルゴット・ラ・フェ」のボーカル。
彼には、この世ならざるものを引き付ける何かがあった。
バンドはデュラックホールという地下の劇場を借りて、ライブを計画する。
その劇場は新宿駅の近くで、公会堂規模の貸し切りで格安の値段であった。
バンドのメンバーは下見で気に入るが、憂夜は、ヒラヒラした衣装を来た若い女性の霊を視て、反対する。
だが、その霊が家に付いてきてしまい、翌日、仕方なく、劇場に戻る。
娘の霊は歌を歌いたがっているようなのだが…」
・「゛モルゴット・ラ・フェ″シリーズU 魔性の銀鱗」(1991年「少女フレンド増刊サスペンス&ホラー」1月5日号)
「ゴシック・パンク・バンドとして「モルゴット・ラ・フェ」は順調に人気を得る。
ある夜、ライブが終わった後、憂夜と佐藤修一(バンドのリーダー)は、ゴテゴテした西洋服を着た女性と出会う。
女性は、憂夜の声を「すてきな声」と褒め、くすくす笑いながら立ち去る。
次のライブの時、突如、憂夜の声が聞こえなくなる。
憂夜はライブを途中で脱け出し、後で、修一が理由を聞くと、彼の声が吸い込まれるように消えたと話す。
そこに、この前の女性がまた現れ、憂夜の声がおいしかったと話す。
彼女が立ち去った後には、鱗が残されていた。
憂夜は彼女が人間でないことを悟り、自分の声が食べられたらどうなるのか恐れる。
そんな時、バンドのビデオ撮影が水族館で行われることが決まるのだが…」
・「゛モルゴット・ラ・フェ″シリーズV 聖ワルプルギスの夜」(1991年「少女フレンド増刊サスペンス&ホラー」4月号)
「憂夜は「オールナイトGIG」に出演したくないと、リーダーの修一と大喧嘩。
彼がオールナイトを嫌がるのは、夜中にライブをすると、必ず霊が引き寄せられるからであった。
修一の計らいで、バンドは真夜中でなく、午後11時からの開始となる。
だが、当日、順番がずれて、バンドは午前二時が出番となる。
憂夜が危惧していた通り、一曲ごとに招かれざる客が増え、魔物達が彼を仲間に誘う…」
・「妖姫の宴」(1988年「パンドラ」11月号)
「法厳という和尚が開いている修行道場。
東京から城山冬也という少年がやって来る。
彼は痩せており、無口で偏屈であった。
寺に来て、数日後、重労働をさせているわけでもないのに、彼の顔色は悪くなり、遂には倒れてしまう。
法厳が理由を聞くと、彼は毎晩、金縛りにあっていた。
しかも、普通のと違い、身体中を撫でられるという。
その晩、法厳は冬也と一緒に寝る。
法厳が気配を感じ、目を覚ますと、冬也の身体に霊がまとわりついており、九字を切って祓う。
彼が見た夢から判断すると、どうやら色情霊らしい。
翌日、彼の母親が寺を訪れるのだが…」
・「海の声」(1988年「パンドラ」3月号)
「ある漁村には人魚伝説があり、社に人魚のミイラが祀られていた。
春の終わり頃(だと推測)、民宿を営む圭一は、海岸で13歳くらいの少女と出会う。
彼女の名前は海緒(みお)で、人魚伝説を聞いて、やって来たと話す。
彼女は彼の民宿に滞在するが、子供なのに、妙に大人びたところがある。
ある夜、子供の人魚が網にかかったと騒ぎになる。
人魚は海に帰すことが決まり、圭一が船を出すことになる。
だが、海緒にはある目的があった…」
・「蛇淵」(1988年「パンドラ」8月号)
「戦前のある農村。
静音は、東京から来た小説家の安彦と夜、密会をしていた。
彼女は彼が自分を愛してくれていると信じ、心から尽くす。
だが、二人の間に隙間風が吹き始め、彼女が彼に縋れば縋るほど、彼の心は遠のいて行く。
同時に、彼女の身体には蛇のような鱗ができ始める。
彼女は彼に蛇にさせないよう頼むのだが…」
・「バロック・ダンス」(1988年「パンドラ」9月号)
「1680年、フランスのヴェルサイユ。
フランソワーズ・アテナイス・ド・モルトワールは王の公式愛妾。
だが、それも束の間で、王は早速他の女に目移りしてしまう。
彼女が王の寵愛を願うと、悪魔が現れる。
彼女は望むものを何でも与えると言うが、悪魔が望んだのは、彼女を抱くことであった。
以来、アテナイスは再び王の関心を得るようになる。
しかし、それは彼女の腹の中にいる悪魔の子供の魔力によるものであった。
彼女は、その子供を恐れ、堕胎しようとするのだが…」
・「漫画家アシスタント物語」(描き下ろし)
榎本由美先生の個性的なアシスタントさんを何人かご紹介。
2022年2月12・14日 ページ作成・執筆