楳図かずお
「笑い仮面(前)」(1990年9月20日初版発行)
「笑い仮面(後)」(1990年10月20日初版発行)

 収録作品

・「笑い仮面」(1967年「少年画報」連載)
「昭和十五年、日本の各地で、蟻のような奇形児が産まれる。
 天文学者の式島博士は「アリ人間」が産まれる原因を太陽黒点の周期にあると考え、二度目の黒点の年、つまり、二十二年後に地上が太陽に焼き尽くされると予言する。
 しかし、博士の説は軍部に弾圧され、激しい拷問にも自説を曲げなかった博士は、「笑い仮面」の刑を受けることとなる。
 それは、笑顔を浮かべた仮面を顔にはめられた後、焼きごてで継ぎ目を塞がれるというものであった。
 その後、式島博士は獄門島に送られるが、向かい側の部屋の囚人と知り合いになる。
 彼は、異状生物学者の南博士であり、アリ人間を研究していたために、投獄されたのであった。
 南博士自身もアリ人間と化し、土中にトンネルを掘って、式島博士の部屋に移動し、二人は研究を進める。
 その結果、アリ人間は、来たるべき人類の滅亡を避けるべく、地下生活に適応するように突然変異を起こしたことが判明する。
 ただ一つ、気掛かりなのは、人間が蟻に退化することであった。
 ある嵐の晩、式島博士は、南博士の協力を得て、獄門島から脱出する。
 その後、終戦を迎え、再び、黒点の年(昭和三十六年(1961年))が巡り来る。
 九州の日裏村には、山裾の屋敷に、笑い仮面という謎の人物が恐ろしい研究をしていると噂されていた。
 ある日、探偵五郎がその村の親戚宅に遊びに来る。
 幼馴染の黒岩マリに笑い仮面のことを教えられ、五郎は好奇心からその屋敷を調べようとする。
 すると、巨大なアリ人間が現れ、彼に襲いかかる。
 すんでのところを笑い仮面に助けられるが、アリ人間は逃走。
 村がパニックになる中、アリ人間は帰宅したマリを連れ去り、廃坑の奥へ消える。
 人々は笑い仮面の屋敷を焼き討ちし、マリの救出作業は難航。
 だが、皆が絶望した頃、奇跡的にマリは崩れた土砂の中を掘り出て来る。
 彼女の生還を喜ぶのも束の間、五郎はマリに奇妙な違和感を抱き始める。
 また、その頃から、村では奇怪な出来事が次々と起こるようになる。
 「笑い仮面」の研究とは…?
 そして、村の運命は…?」

・「首」(後編に収録/1970年「プレイコミック」掲載)
「シホ子は美しい女であった。
 男は、会社の政策上で、シホ子のもらわれ婿となる。
 シホ子はそんな男を嫌悪し、決して近寄らせず、男も彼女の美しさの前に委縮し、何もできない。
 シホ子の態度はエスカレートしていくにも関わらず、彼は彼女の虜となっていき、苛立ちを募らせていく。
 遂には、彼女は、平然と浮気をして、家にほとんど帰らなくなり、男は空しく車で彼女を捜す。
 ある夜、ひと気のない夜道で一人歩く彼女を目にした時、彼は衝動的に彼女を後ろから轢く。
 彼女の首は切断されていたが、彼女の首はどこにもない。
 仕方なく、彼女の胴体を車に乗せ、海岸に死体ごと車を捨てる。
 その後、彼は平凡な女性と再婚するが、いつしか、シホ子の首が現れるではないか、という思いに憑りつかれるようになる…」

・「独眼鬼」(後編に収録/1970年「デラックス少年サンデー」掲載)
「天正元年。飛騨山中の胸突山に立つ石垣城。
 武勇で名高い石垣兵衛は、鷹之助、虎之助の兄弟を、厳しく鍛える。
 弟の虎之助は兄に負けまいとし、兄弟の間には凄まじい闘争心が燃える。
 ある日、弓道の練習で、兄は、的を頭上に持って立つ勇気はないだろうと、弟を煽る。
 弟は兄の言う通りにするが、兄の放った矢が彼の左目に命中。
 虎之助は命はとりとめたものの、左目には醜い傷痕が残り、更に、鷹之助は、虎之助が逃げたために矢が当たったとの噂を流す。
 誰にも言うことを信じてもらえず、また、転落事故で身体に障害を負った虎之助は、部屋に引きこもるようになる。
 二年後、爺やが虎之助に、鷹之助は城主の座を狙って、わざと目を射たのではないか、と進言したことに、虎之助は激怒。
 以来、彼は今までとは打って変わって明るくなり、兄に敬意をもって接するようになる。
 鷹之助はそんな弟を気味悪く思うが、兄が城主の座に就いた時も、また、兄に息子が産まれた時も、一番喜んだのは、虎之助であった。
 鷹之助は徐々に虎之助を信用するようになるのだが…」

・「怪獣ギョ―」(後編に収録/1972年「少年サンデー」掲載)
「漁業の盛んな、静岡県Y市。
 小学生の青木靖男は、虚弱体質であった。
 頭ばかり大きくて、ひょろひょろだった彼に、級友たちは「怪獣」の綽名をつける。
 ある日、孤独な彼が海に行くと、奇怪な魚が浜に打ち上げられていた。
 その魚には毛が生え、歯は二重で、醜い容姿をしていた。
 靖男は泣き声から魚を「ギョ―」と名付け、傷ついたギョ―を岩場の洞窟で世話する。
 徐々に靖男は明るさを取り戻していくが、無理が祟って、入院。
 彼は父親にギョ―の世話を頼むものの、父親はギョ―の姿に驚き、タコ殴りにして、海に捨ててしまう。
 父親は、回復した靖男にギョ―は逃げていたと嘘をつき、靖男はギョ―と友達でなかったと嘆く。
 しばらくして、靖男の家族は、父親の転勤で町を去る。
 時は流れ、北海道で、靖男は原子工学の専門家となり、マサルという息子がいた。
 大人の靖男にとっては、ギョ―はかすかな思い出話であったのだが…」

2020年5月10日 ページ作成・執筆

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