伊藤潤二「屋根裏の長い髪」
(1989年1月20日初版発行・4月20日改訂初版発行)
収録作品
・「富江」(「月刊ハロウィン」1987年2月号掲載/第一回楳図賞佳作入選作)
「バラバラ死体で発見された富江という女生徒。
死んだはずの富江がクラスに戻ってくる。
宿直室で富江に会った担当は発狂、クラスメートも富江を避ける。
富江は一体何者なのだろうか…」
・「富江 Part2 森田病院編」(「月刊ハロウィン」1988年8月号掲載)
「森田病院にて、腎臓病でずっと闘病中の三尾雪子。
彼女のボーイフレンドの北山正は心の優しいナイスガイ。
しかし、雪子は正にガールフレンドができたことを知る。
二日後、その女性が現われ、正に会わないよう言い放ち、雪子の心は乱れる。
一方、正はこの女性が嘘に塗り固められた存在であることを知りながら、別れることができない。
しかも、彼女といると、殺してバラバラにしたい衝動がわいてくるのだった…」
・「顔泥棒」(「月刊ハロウィン」1987年12月号掲載)
「悪さが過ぎて、ある高校へ転校することになったスケ番、町田由美。
彼女の隣の席に、亀井という女生徒が移ってくる。
何をするにも引っ付いて離れない亀井に由美はイライラし、ヤキを入れる。
そこへクラスの男子生徒の日比野がやって来て、止めるが、日比野は由美に亀井に近づかないよう警告する。
亀井はある人物のそばにいると、その人物そっくりの顔になるというのだ…」
現在の流麗な絵に慣れた目から見れば、初期の絵はなかなか味があります。
発想はいいのですが、それよりも、この「絵」に感じ入ってしまいます。
・「バイオハウス」(「ハロウィンナイト2」1987年初夏増刊号掲載)
「別荘を訪れる、社長とその美しい秘書。
二人は「悪食」という共通の趣味を持っていた。
しかし、社長は秘書を上回る「悪食」で、ゲテモノを生で食すというツワモノであった。
そして、食事の最後に秘書は何かの血を飲まされるが、まずくて飲めたものでない。
すると、社長はいたく立腹。何故なら、その血は社長の血だったのだ。
社長はナイフで切り開いた動脈から血をほとばしらせながら、自分の血を飲まそうと、秘書を追っかける…」
あの〜……これってギャグなんですよね……そうなんですよね……うん、ラブリ〜な小品です。
・「睡魔の部屋」(「月刊ハロウィン」1988年5月号掲載)
「マリの恋人、雄二は最近ひどくやつれている。雄二はほとんど眠っていなかった。
雄二は「夢の中に住むもう一人の自分」が現実世界に出て来ようとしていると話す。
「夢の中に住むもう一人の自分」と現実の自分が入れ替わらないよう見張って欲しいとマリは頼まれる。
半信半疑で彼のアパートに泊まりこむマリだが、雄二の手足をガムテープで縛り、見張ることにする。
そして、夜、うっかり眠り込んだ彼女が物音で目を覚ますと、眠り込んだ雄二の口の中から手が伸びて、あたりをまさぐっていた…」
マンガの作品内に出てくる本棚には、作者の愛読書が揃えてあったりするので、非常に興味深いです。
もちろん、怪奇マンガ好きなら、「まだらの(卵)」は外せませんよね!!
・「悪魔の理論」(ハロウィン増刊「殺人事件」1988年初夏号掲載)
「校舎の屋上からの女生徒の飛び降り自殺。
男子生徒は女生徒の死に疑念を抱く。
と言うのも、一時間前、女生徒はボーイフレンドと会うというので、うきうきしていたのだ。
男子生徒はその時、二人の会話を録音してやろうと、テープレコーダーをカバンの中に潜ませていた。
女生徒の死の原因を知るために、彼はそれを聞いてみることにするが…」
・「屋根裏の長い髪」(「月刊ハロウィン」1988年11月号掲載)
「美しいが、内に強い芯を秘めた女性であるチエミ。
彼女は付き合っている男に一方的に縁を切られる。男は容貌は優れているが、軽薄な男だった。
チエミは一晩を泣いて過ごし、翌朝には、その長い髪を切ることを決心する。
が、悲鳴が聞こえ、家族が駆けつけると、そこにはチエミの首なし死体が横たわり、血の海だった。
チエミを殺した犯人はわからず、チエミの首も行方不明だった。
ある日、妹のエミは天井裏のネズミ捕りを調べようと、父親と一緒に天井裏を覗きに行く…」
・「あとがきにかえて」
記念すべき、伊藤潤二先生の初単行本であります。
まだまだ駆け出しとは言え、意表をつくアイデアや描写が散りばめられておりまして、天賦の才能を感じさせます。
ちなみに、この単行本、本の中は「1989年1月20日初版発行」となっているのに、カバーの袖は「1989年4月20日改訂初版発行」となってます。何故…?
平成27年2月4日 ページ作成・執筆