かずはしとも「空白の日記帳」(1997年12月1日初版第1刷発行)

 収録作品

・「8月の同窓会」(「月刊ホラーM」1997年7月号)
「市立上田小学校の同窓会。
 戦前からある校舎が取り壊されるため、全卒業生に連絡がなされ、様々な年齢層の男女が集まる。
 その中に昌平、布川、サキといった少年少女の姿もあった。
 思い出話に盛り上がる中、彼らが同級生だった日向時子を懐かしんでいると…」

・「目撃者」(「月刊ホラーM」1997年9月号)
「女子高生の千晶は援助交際(セックスはなし)していた。
 ある夜、彼女は睡眠薬を飲まされ、ラブホテルに連れ込まれる。
 彼女は抵抗し、オヤジを撲殺。
 証拠になるものは残さないようにしてホテルを出るが、スカートに付いた血だけはどうにもならない。
 彼女は暗い道を選んで、家に向かうが、家を目前にして若い男性にぶつかってしまう。
 スカートの血を見られたと思い、家に駆けこむが、彼は警察に届けなかった。
 翌日、彼女はその彼から声をかけられ、交際を申し込まれる。
 彼は元木という大学生であった。
 彼女には圭太という粗暴な彼氏がいたが、この状況下では彼の申し出を断れない。
 だが、元木は殺人事件のことについては一切触れず、彼女と会ってお茶をするだけ。
 ある時、彼は彼女を山に誘うのだが…」

・「空白の日記帳」(「月刊ホラーM」1996年11月号)
「杉下まさみは気が付くと、田舎の見知らぬ駅のベンチに座っていた。
 彼女は11月7日・8日の二日間の記憶がなく、精神科医より「心因性健忘症」と診断される。
 どうやら彼女の心の中の何かがストレスとなり、記憶を封印しているらしい。
 とりあえず、彼女は高校に戻り、普段の生活に戻る。
 彼女は至って普通の女子高生だが、先月、渡部という教師が江崎綾花という女子生徒に乱暴しようとした現場を目撃したことがあった。
 これにより、渡部は失職。
 また、綾花にとって渡部は金づるで、逆恨みされたまさみは綾花の雇った不良共に襲われる。
 その場はどうにか逃げ延びたものの、まさみは綾花を憎み、自分の身を守るため、ナイフを携帯する。
 そこまでは思い出したが、空白の二日間については手掛かりがないままであった。
 ある夜、まさみは夢を見る。
 学校を休んでいる綾花を見かけ、まさみが声をかけようとした時、目の前の綾花が背中を刺されて死んでいた。
 更に、翌日、綾花の死体が山中で発見されたとニュースで報道される。
 まさみは精神科医に「逆行催眠術」をかけてもらうのだが…。
 この二日間、彼女の身に何が起こったのだろうか…?」

・「記念日」(「月刊ホラーM」1997年3月号)
「銀行強盗をした青年。
 彼が雪の降る山道でバイクを走らせていると、カーブの向こう側から対向車が現れる。
 お互いによけようとして、車の運転手は岩壁に突っ込んで即死。
 一方、銀行強盗の男は崖から転落するも、命は無事であった。
 彼が雪山を歩いていると、別荘らしきログハウスが目に入る。
 その家には娘が一人だけであった。
 彼女は、今日は彼女の誕生日で、彼と一緒に過ごす約束をしていると話す。
 彼女の恋人はまだ来ておらず、雪のために遅れると電話がある。
 だが、銀行強盗の男は、彼女の恋人は先ほどの事故で死んだのでは?と疑問に思い始める。
 娘は恋人が必ず来ると確信しているのだが…」

・「MINE ワタシノモノ」(「月刊ホラーM」1997年5月号)
「水野冴は自分の欲しいものは絶対に手に入れないと気の済まない女。
 彼女は支倉公一という役者志望の青年に恋をしていたが、彼には内藤愛子という恋人がいた。
 内藤愛子は脚本家の卵で、彼のマンションの上の階に住む。
 冴は公一に愛子は似合わないと嫉妬し、ある時、彼女の部屋に忍び込む機会を得る。
 実に普通の部屋であったが、写真立ての裏に宝石箱のような小さな箱を見つける。
 その中には干からびた手のようなものが入っていた。
 冴はこれは「猿の手」で、これを使って、愛子が公一と恋人になったと考える。
 彼女はこれを持ち帰り、願い事をするのだが…」

 「MINE ワタシノモノ」がジェイコブス「猿の手」を作品に盛り込んでいて、興味深く感じました。
 ラストは考えが分かれるとは思いますが、個人的には、意外で良いと思います。

2023年7月23・24日 ページ作成・執筆

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