伊藤結花理「ブラディ―M 白い毒薬」(2004年5月10日初版第一刷発行)

 中世、最強の魔女としてその名を知られながらも、火刑に処せられたマゼンダ・マリア(真紅の聖母)。
 彼女は様々な時代に転生し、占い師「M」として活躍する。
 そして、彼女を愛した錬金術師、べリルを使い魔として、様々な悪と対峙するのであった…。

・「白い毒薬」(2003年「月刊ホラーM」10月号」)
「1500年のイタリア。
 チェーザレ・ボルジアは、その残忍性と陰謀策術によって、次々と城を落としていた。
 プリマヴェーラ城落城の際、一月、城主の世話になっていた「M」は、捕虜として、バチカンのチェーザレ邸へと連れ去られる。
 Mはチェーザレは治療をしたことをきっかけに、彼の「女医者」に任命される。
 それをチェーザレの妹、ルクレツィアは快くは思わない。
 また、Mは、自害したプリマヴェーラ城主に頼まれ、チェーザレを毒殺しようとしていた。
 Mの目的に気付いたチェーザレは、Mに勝負を挑む。
 チェーザレはMに、ボルジア家の秘毒「カンタレラ」を、Mはチェーザレに彼女の最高の秘毒を飲ませる。
 もし、チェーザレが勝てば、Mの身体で、彼の望むところにキスを、そして、Mが勝てば、彼の命は自由にしてもよいという。
 この勝負の行方は…?」

・「サイコ・ビューティー」(2002年「月刊ホラーM」10月号」)
「カリスマ美容師、羽鳥エリザが代表取締役を務めるエステサロン「羽鳥エリザ・ビューティー・クリニック」。
 エリザの右腕は、彼女の息子の羽島牧で、彼は22歳の若さでアメリカで成功した天才美容外科医であった。
 あるホテルで、美容整形した娘をお披露目しようとした時、無理が祟って、娘は急死してしまう。
 その場に居合わせたMは急遽、彼女の代役をつとめることとなり、記者会見は大成功。
 牧に頼みで、Mはしばらくの間、死んだ娘のダミーを続け、羽鳥親子のもとで過ごす。
 そのうちに、意外なことが次々と明らかとなる。
 エリザは、牧の母親ではなく、祖母で、本当の母親のカレンは、精神薄弱にされ、監禁されていた。
 更に、エリザは、牧開発の「集血マシン」によって、若い娘達から集めた血でエキスを作り、自分の美貌を保つ。
 真実を知ったMは、エリザによって「集血マシン」に入れられてしまうのだが…」

・「羽ばたき」(2001年「月刊ホラーM」10月号」)
「アメリカ南部、ニューオーリンズ。
 Mは、旅の占い師として、「小さな戸棚亭(リトル・クローゼット)」に滞在する。
 宿には、ヘンリーとベティの夫婦に、娘のジェミニの三人家族。
 ジェミニは重度の鳥恐怖症で、鳥を見ると、過剰に身づくろいをするという発作が起こしていた。
 Mがジェミニをタロットで占うと、どうやら「隠された秘密」があるらしい。
 その秘密を探るべく、Mは彼女の奥底を覗く。
 この家に隠された「戸棚の中のドクロ」とは…?」

・「魔女誕生」(2001年「月刊ホラーM」6月号」)
「冤罪を着せられ、夜中に焼き討ちをされたジプシーの一行。
 たった二人の生き残り、幼いマリアとその母は、森の中の沼の畔で、不思議な娘に出会う。
 彼女の名はフェイで、このあたりでは魔女として知られ、その片目は、金色であった。
 母親はフェイにマリアのことを託して、亡くなる。
 フェイはマリアに「マゼンダ・マリア」と名付け、様々な薬草の知識を与える。
 二年後、フェイの家を、昔の恋人であるイアンが訪れる。
 過去、フェイはイアンと不倫の恋をして、身もごるが、嫉妬した女主人の拷問によって、流産していた。
 イアンは、難産で死にかけている妻を助けてくれるよう、フェイに頭を下げる。
 フェイの処置によって、赤ん坊は無事に産まれるのだが…」

 故・伊藤結花理先生(1960〜2014)の「ブラディ―M」シリーズのベスト・セレクションです。
 そのせいか、どの作品も読み応えはバッチリで、お気に入りは、マッドなカリスマ美容師を描いた「サイコ・ビューティー」。
 と、良質な作品なのですが、単行本はこれと「ブラディ―M@」のみ。
 雑誌の「ホラーM」を大して所有していないため、詳しいことはわからないのですが、単行本に未収録の作品は多いのではないでしょうか?
 このまま埋もれてしまうには惜しい作品と思いますので、電子書籍等、多くの人の目に触れる機会を得られるよう祈っております。

2021年1月26日 ページ作成・執筆

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