犬木加奈子「不気田くん@」(1995年8月1日初版発行)

 「永遠の恋人」を求めて、さすらう不気田くん(本名は、木田不美男(きだ・ふみお))。
 彼に目を付けられた少女達の運命は…?

・「第1話 愛と青春の旅立ち」(1991年「月刊ホラーハウス」6月号初出)
「マツ子は、同じクラスの不気田につきまとわれていた。
 彼女は彼を徹底して嫌うものの、全く糠に釘。
 ある時、不気田は、彼女を愛している証拠として、箱を差し出すが、彼女はそれを手で払いのける。
 箱の中身は、彼自身をモデルにした人形で、落ちた衝撃で、頭が半分欠けてしまう。
 直後、不気田はトラックに轢かれて、死亡。
 死に様は人形と同じようであった。
 マツ子は、不気田が死んでせいせいするが、うっかり、彼の人形を手元に置いたままにしてしまう。
 雨の夜、死んだはずの不気田が彼女のもとを訪れて…」

・「第2話 愛の標本箱」(1991年「月刊ホラーハウス」8月号初出)
「不気田は、隣のクラスの野々花蝶子に心を奪われる。
 ただ、蝶子はブリッ子で、男に対して態度を変える様子が、不気田には耐えられない。
 不気田は、魔法のかけられた、蝶の髪飾りを彼女にプレゼントして、彼女を彼の家へと誘い込む。
 不気田は彼女を地下室に監禁し、更に、魔法の蝶を壁にピン留めにして身体の自由を奪う。
 蝶子はどうにかして、不気田のもとから逃げようとするのだが…」

・「第3話 スター誕生」(1991年「月刊ホラーハウス」10月号初出)
「駆け出しのスター、中林ミコ。
 不気田は、彼女を「永遠の恋人」と思い込み、彼女の熱烈なファンになる。
 彼は、彼女を監視するために、自分の右目を抉りだし、それをもとにペンダントを作る。
 そのペンダントを通し、彼は彼女を見守り続けるが、彼女には彼氏ができ、ペンダントは踏み潰されてしまう。
 彼女を見守ることができなくなった不気田は、テレビの向こう側にいる彼女に会おうとして…」

・「第4話 病院へ行こう」(1991年「月刊ホラーハウス」11月号初出)
「前回の話で、右目を抉りだした不気田は、その傷が悪化、耐え切れず、霧崎医院へ向かう。
 そこの院長は、若くて美人の女医であったが、外科の腕はからっきしダメ。
 しかも、少女趣味で、醜いものや汚いものが大っ嫌いであった。
 とは言え、病院が潰れる寸前なので、イヤイヤながらも、不気田の治療をする。
 不気田はそれを桐崎女医の愛と勘違いし、彼女の愛があれば、どんな傷でも治ると訴えるのだが…」

・「第5話 ロリータ」(1991年「月刊ホラーハウス」12月号初出)
「五歳のマリモは、おませな女の子。
 彼女は外見は子供でも、心の中ではいっぱしの大人のつもりであった。
 ある日、彼女と知り合った不気田は、彼女が子供であることを知りつつも、妙に惹かれて仕方がない。
 早く大人になりたいと願う彼女のため、不気田は彼の家で、彼女に成長促進剤を飲ませる。
 マリモは、彼女の希望通り、年頃の娘に成長するが、頭の中は子供のままで…」

・「第6話 ある愛の詩」(1992年「月刊ホラーハウス」1月号初出)
「昼野夢子は、漫画を描くのが大好きな少女。
 ある日、男子生徒のヤナセにいたずらされ、眼鏡が割れてしまう。
 ド近眼のため、視界が霞んだまま、下校している途中、彼女はある青年に家まで送ってもらう。
 翌日、学校でその青年らしい人物と再会したと思うが、彼こそは不気田であった。
 夢子は不気田に理想の男性像を投影し、不気田は彼女を二人だけの世界へと誘う。
 一方、夢子に想いを寄せるヤナセは、不気田のことで奇怪な噂を耳にする。
 翌日、夢子が失踪し、ヤナセは不気田の行方を捜すのだが…」

 「不気田くん」は、「たたりちゃん」と並ぶ、犬木加奈子先生の代表作です。
 作者によると、「おそらく少女ホラーまんが界初の、恋愛ホラーまんが」(前袖より)とのことです。
 最初は「ホラーハウス」(大陸書房)というホラー漫画雑誌に連載され、「ホラーハウス」休刊の後、「ホラーM」(ぶんか社)にて続編が掲載されることとなりました。
 第一巻は「ホラーハウス」での連載分を収録したものです。(大陸書房からの単行本「不気田くん 愛のコレクター」と同じ内容です。)
 最初の方は、ゲテモノ・ホラーの要素が濃く、不気田くんも、思い込みの激しい、粘着質なストーカーというキャラクターで、後期のニヒルさはあまりありません。(ただ、徐々に繊細さが増してくるところが興味深くありました。)
 まあ、私如きがとやかく言っても詮無い話、文句なしの名作ですので、御一読を是非ともお勧めしたいと思います。

 ちなみに、この単行本での個人的ベストは「病院へ行こう」。
 血ドバドバ、内臓ドロドロな内容で、こういう単刀直入な話が私は好きです。
 あと、この頃は、心臓があったんだなあ〜。

2020年2月17日 ページ作成・執筆
2023年4月6日 加筆訂正

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