御茶漬海苔「暗黒辞典B」(1997年1月1日初版第1刷発行)
「暗黒辞典」…それは「人間の恐怖を集めた辞典」。
これを読む者は皆、恐怖の世界に誘い込まれる…。
・「第13章」(1995年「ホラーM」5月号)
「ルルちゃん」
清川有沙は、西洋人形のルルちゃんをとても大事にしていた。
ある日、両親が交通事故にあい、亡くなってしまう。
有沙の面倒を看るため、母方の叔母、清子が、家にやって来る。
清子は、有沙の父親に片想いしていて、母親と有沙を憎んでいた。
彼女は、母親のものを次々と破り捨てていく。
そして、有沙が何よりも大切にしているルルちゃんを奪い、刃物でバラバラにしようとする。
だが、人形に刃物を刺した時、人形から血が…。
・「第14章」(1995年「ホラーM」6月号)
「ミステリーハンター夢丘一郎@」
聖南女子中学校。
そこの実験室では二人も行方不明になり、幽霊が出ると噂されていた。
万世は三月と美雪を誘って、肝試しに行こうとするが、美雪は頑として行こうとしない。
とりあえず、万世と三月は別々のルートを通って実験室に行く。
万世が実験室の前に着いた時、凄まじい悲鳴と「グエエエエエエエ」という獣の呻きのような音が聞こえる。
戻ると、血だまりの中に、美雪の両足だけが残されていた。
家で万世が悲しんでいると、おじの夢丘一郎が訪ねてくる。
彼によると、一連の事件は、古文書に書かれる「人面鬼」の仕業らしい。
人面鬼は毎晩、人を喰い、足だけを食い残すと書かれてあった。
更に、人面鬼は食べた人間に化けることができるという。
万世と一郎は、三月が人面鬼ではないかと疑うのだが…」
・「第15章」(1995年「ホラーM」7月号)
「蟲男爵 第3話 昆虫採集」
夏休み。
葉月、黒山、妖子の三人は、山に昆虫採集に来る。
葉月は虫を殺すと蟲男爵に殺されると訴えるが、宿題なので、やらざるを得ない。
すると、彼女達と同じく、昆虫採集に来ていた女子生徒達の悲鳴が聞こえる。
駆け付けると、そこは血の海であった。
葉月達は山を下りようとするが、いつまで経っても山から出られず、気が付くと、蟲男爵の城の前にいた。
三人は蟲男爵に捕まり、まず、蝶を殺した黒山が制裁を加えられる。
次に、葉月と妖子は蟲男爵の「人間採集」を見せられる。
葉月はこれを見て、心を痛め、人間を許すよう蟲男爵に訴える。
蟲男爵は、今後、虫を見殺しにしないことを条件に、二人を人間の世界に返してくれるのだが…。
「ハエ」
清川家の長女、美雪は近所で評判の美人であった。
一方、妹は醜く、彼女は姉にコンプレックスを抱く。
ある夏の午後、妹は、昼寝をしている姉の頬にハエが止まっているのを目にする。
彼女はそれが妙におかしく、放っておくが、ハエは一時間ぐらい、そのままであった。
翌朝、姉の頬にブツブツができる。
それはハエが植え付けた卵で、中から蛆が湧き出てくる。
傷は悪化の一途をたどり、姉は部屋に閉じこもるようになる…。
・「第16章」(1995年「ホラーM」8月号)
「妖魔術師ヤン@」
聖夜中学校で突如、起こった惨劇。
沙夜という普通の少女がモンスターと化し、生徒が二十人食い殺されたのであった。
彼女の顔からは幾つもの触手が伸び、相手の顔を貫くと、頭頂部に開いた口から相手を丸飲みする。
彼女はこの状態で校内をねり歩き、二十分後に気絶し、警察病院に運ばれる。
検査によると、彼女の全身には針金のようなものが張り巡らされ、もはや人間とは言えず、医者には手の施しようがない。
そこに、妖魔術師ヤンと名乗る男が現れる。
彼は沙夜が妖魔にとり憑かれており、自分なら彼女を助けることができると話す。
ヤンは医者や警部の協力を得て、彼女の手術にとりかかる…。
・「第17章」(1995年「ホラーM」9月号)
「催眠術A」
富田は女子にモテモテで、青井、赤村、黒山の三人の女子生徒がいつも取り巻いていた。
日影千里は、彼のことが好きでたまらなかったが、容姿にコンプレックスがあり、嫉妬の炎を燃やしながら、遠くから見つめるだけであった。
帰宅途中、骨董屋のシューウィンドウにあった「催眠術の振子」が彼女の目に留まる。
値段は五百万円でとても手が出せないが、店主は、明日の夜8時に返しに来るという約束で、一日だけ貸してくれる。
翌日、千里は青井に侮辱された仕返しに、彼女に催眠術をかける。
その内容は、彼に近づく女を皆殺しにした後、自殺するというものであった。
青井は赤村、黒山を惨殺した後、千里にも襲いかかってきて…。
・「第18章」(1995年「ホラーM」11月号)
「蟲男爵C その4 毛虫」
春。
桜丘中学校の直子は、木から落ちてきた毛虫を殺す。
一人の少女が彼女を止めようとして、「虫を殺すと、蟲男爵に殺される」と言う。
バカにしていたが、彼女の周囲に奇怪な男が出没。
そして、彼女の身体に異変が…。
「第2話 窓」
雨の降る深夜。
受験勉強中の秋代は、家の門あたりに不審な男がたたずんでいるのを、二階の窓から見る。
変質者と思い無視することにするが、一時間半後にまた見ると、家の玄関の前に移動していた。
彼女は、母親を起こし、家の外を確認するのだが…。
「ミステリーハンター夢丘一郎@」と「妖魔術師ヤン@」が、荒唐無稽ながらも、奇想天外、かつ、スピーディな展開で面白いと思いました。
にしても、この二人、他の作品にも出ているのでしょうか…?
2021年7月23・25日 ページ作成・執筆