西川ジュン
「FLY@」(1999年10月1日初版第一刷発行)
「FLYA」(2000年9月10日初版第一刷発行)

単行本@
・「FLY1 トラブルトラベラー石田ユミ」(1997年「月刊ホラーM」11月号)
 石田ユミ(16歳)は普通の女子高生…のように見えるが、実は「瞬間移動能力者」であった。
 彼女は何の前触れもなく、突然に全く予期しない場所に瞬間移動してしまう。
 それ故にどんな時でも気は抜けず、また、いつ如何なる時でもサバイバル用のリュックは身に付けておかねばならない。
 そんな苦労を抱えながらも、彼女は普通の少女として日々生活を送る…。
・「FLY2 パティ&ユミ」(1998年「月刊ホラーM」8月号)
 登校途中、ユミがテレポートしたのは、どこかの山の中。
 そこで、小象のパティと出会う。
 パティは飼育係に怪我をさせ、和歌山県の動物園から逃走していた。
 そして、銃で武装した男達がパティを追っていた…。
・「FLY3 脱出不可能 怪奇の館」(1998年「月刊ホラーM」10月号)
 今回、ユミがテレポートしたのは誰かの家の中。
 しかし、携帯電話がつながらず、しかも、九月なのに真冬のように寒い。
 更に、壁には生きているような人間の彫刻の部分部分が浮き出ていた。
 彼女が家の中をさまよっていると、壁の彫刻が彼女に助けを求める。
 それは彫刻ではなく、壁に半ば埋まった男性の顔であった。
 男性は知らない間にこの家にいたらしく、「子供」と言ったところで石化する。
 彼女がここの彫刻は人間だったことに思い至った時、背後から呼びかけられる。
 それは幼い男の子で、彼は宙に浮いており、全て彼の仕業であった。
 ユミは「かくれんぼ」で彼から逃げおおせることができるのであろうか…?
・「FLY4 登場!!四方堂マモル」(1998年「月刊ホラーM」11月号)
 四方堂マモルは高校生でありながら、四方堂製薬の新薬開発主任という天才(?)。
 彼はユミに目を付け、彼女の瞬間移動能力を調べようとする。
 昼休み、彼は化学教室にユミを呼び出し、脅迫するが、二人は北海道の森の中にテレポートしてしまう。
 そこに瀕死の男性が現れ、「赤髪の化け物」がいると教える。
 ユミとマモルは逃げるが、途中でマモルが右足を骨折してしまい…。
・「FLY5 殺人鬼ヘッドクラッシャー」(1999年「月刊ホラーM」1月号)
 ユミは埼玉県の大宮公園にテレポートした際に、女子高生の殺害現場に遭遇する。
 それは「ヘッドクラッシャー」の犯行で、彼は道行く学生に問答をしかけ、正解の場合は金貨をくれるが、不正解だとゴルフパットで頭を叩き割るという殺人鬼であった。
 その「ヘッドクラッシャー」がユミの高校のある世田谷区にやって来たという噂が立つ。
 ユミはマモルに相談するが、二人とも「ヘッドクラッシャー」に捕らえられてしまい…。
・「FLY6 愛しのキリナちゃん」(1999年「月刊ホラーM」3月号)
 四年前、ユミは国立第U病院に左腕の骨折で入院していた。
 彼女はあるきっかけで、朝倉キリナという盲目の少女と知り合う。
 二人は生年月日から産まれた時刻まで一緒で、すぐに意気投合。
 病院の外のベンチで二人はいろんなことを話し合う。
 キリナは明後日が目の手術であった。
 ユミは自分の特殊能力について話そうか迷っていると、キリナの母親がやって来る。
 母親はキリナをむりやり病室に連れ戻そうとして、ユミがキリナの手を握った時…。

単行本A
・「FLY7 フル・スロットル」(1999年「月刊ホラーM」4月号)
 北海道の次は奈良とあちこちに移動して、ユミは疲労困憊。
 風呂上がりに下着姿でうとうとしていると、またもやテレポートしてしまう。
 しかも、移動先は、超能力者、片桐ケーイチがスプーン曲げをテレビ中継している舞台であった。
 ケーイチは咄嗟に物体瞬間移動能力と言って、その場は大盛り上がりを見せる。
 収録の後、ユミは自分の超能力がばれたと思い、テレビ局からこっそり逃げようとする。
 その時、ケーイチとマネージャーの武藤との会話を立ち聞きして、番組がやらせだったことを知る。
 実は、ケーイチには超能力はなく、彼の見せる超能力は武藤のものだったのであった。
 ケーイチは最初は超能力を持っていたが、自分のために使ううちに弱くなり、消え失せてしまい、今は武藤の言いなりになるしかなかった。
 ユミはケーイチを別れるも、ある言葉が引っかかり…。
・「FLY8 マコリン危機一髪」(1999年「月刊ホラーM」6月号)
 ユミが目覚めると、深い森の中で会った。
 誤って彼女は川に転落し、河原に辿り着くが、そこでは堺屋貿易の社長が取引相手を殺害したところであった。
 社長の雇う殺し屋、字安・サクリファイスに銃で狙われるも、ユミは取引のトランクごと渋谷にテレポートする。
 だが、彼女の学生証が堺屋貿易の社長の手に渡っていた。
 登校途中、ユミは字安に狙われるが、そばにいたマコリンが被弾してしまう。
 マコリンはそのままさらわれ、ユミは横浜港にある倉庫にトランクを持ってくるよう要求される。
 ユミがトランクと共に向かうと、堺屋貿易の社長、字安、孫という中国人の娘の三人がいた。
 そして、孫はユミと同じ超能力者であった…。
・「FLY9 転移生命体『G』」(1999年「月刊ホラーM」7月号)
 下校途中、ユミと四方堂マモルは空間から突如、謎の動物が出現するのを目撃する。
 それは形は犬だが、様々な動物を寄せ集めたキメラであった。
 キメラ犬は翼も持ち、飛び去る瞬間、マモルは発信機を付け、その後を追う。
 二人がたどり着いた場所はミカグラ岳量子光学研究所で、ここでは極秘にテレポートの実験が行われていた。
 中に入ると、死体だらけで、死体は皆、内臓を抜かれていた。
 二人は巨大な化け物に追われ、ある部屋に逃げ込む。
 そこには唯一の生き残りの香田という女性科学者がいた。
 そして、その脇にはあのキメラ犬が…。
・「FLY10 バカンス三人娘」(1999年「月刊ホラーM」9月号)
 ユミ、マコリン、たまき(名字不明)は仲良し三人組。
 夏休みを利用して、三人は二泊三日の海水浴に出かける。(ユミはこの間、テレポートは『安全日』らしい。)
 早速、海で遊んでいると、たまきが海の中で指輪を拾う。
 彼女は金属アレルギーのため、ユミが指にはめると、ピッタリであった。
 すると、急に若い男が現れ、ユミに抱きついて来る。
 彼は富良戸という、三人が泊まる旅館の従業員であった。
 彼の恋人のミカは八年前に海で行方不明になっており、彼は彼女の死体をいまだに捜し続けていた。
 そして、ユミはミカにそっくりで、たまきが拾った指輪は富良戸が彼女に渡した婚約指輪であった。
 その晩、彼ら(ユミ、たまき、富良戸)の前にミカの亡霊が現れる。
 その時、彼らは洞窟にテレポートしてしまうのだが…。
・「闇の停学一年生」(1999年「月刊ホラーM」8月号)
 山口さやか(13歳)と田代夏美(13歳)は不真面目で無考えな女子中学生。
 二人は学校にある「あかずの間」に興味を持つ。
 その扉には「この扉を開けた者は3年間の停学処分とする」と書かれた貼り紙がしてあった。
 二人が後先考えず扉を開けると、扉の向こう側に転落する。
 そこはお化けの世界であった。
 二人はお化け達に囲まれながら「停学学園」で、3年間の停学生活を送ることとなる。
 担任はジャレットという鬼教師で、授業は超ハード。
 しかも、ここでは勉強が「仕事」で、テストの点に応じて給料が支払われるシステムになっていた。
 さやかと夏美の不良娘二人は停学学園でサバイバルできるのだろうか…?

 ハツラツとした女の子を描かせたら、右に出る者はいない(ような気が個人的にはする)西川ジュン先生。
 「FLY」は西川先生の代表作の一つで、瞬快移動能力者の少女が巻き起こすトラブルを描いたドタバタ・コメディです。
 と言っても、「ホラーM」に連載されたものですので、オカルト・ミステリー・SF・グロと様々な要素がミックスされ、極めて独特な味わいとなっております。
 ただし、単行本は二巻しかなく、続編もあるものの、これも単行本は一冊だけで、物足りなさは否めません。(朝倉キリナは他に出番はあるのでしょうか?)(注1)
 でも、面白さは折り紙付きですので、再評価が望まれます。
 ちなみに、いじられ(?)キャラの四方堂マモルがお気に入りで、ユミとは名コンビと言ってよいでしょう。(「殺人鬼ヘッドクラッシャー」の回が好き。)

・注1
 kindle版で「FLY」完全版が全五巻で出ております。
 未チェックのため、単行本との差異は不明です。

2023年5月12日/6月11・12日 ページ作成・執筆

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