小野双葉「ひとりちゃんとボッチくん」(1997年3月1日初版第一刷発行)

 収録作品

・「ひとりちゃんとボッチくん」(1996年「月刊ホラーM」8月号)
「アル中の母親と暮らす中学生の日取桐子と、父親に捨てられ、叔父宅で暮らす、いじめられっ子のボッチくん(本名は倉石一)。
 家に帰りたくない二人は公園のブランコで出会い、仲良くなる。
 ある晩、二人がブランコのところにいると、獰猛そうな犬が近寄ってくる。
 怯えたボッチが桐子に取りすがると、彼は彼女の身体の中に入り込んでしまう。
 犬が去った後、ボッチは彼女の身体から出て来るが、彼女の中はすごく気持ちが良かったらしい。
 翌日、いじめっ子に追われるボッチは、帰宅途中の桐子の身体にまた潜り込む。
 ボッチが出てこないので、仕方なく、桐子は家へと戻るのだが…」

・「あつしくん」(1994年「増刊ホラーM」Vol.4)
「第一小学校、一年三組、佐藤あつし。
 いじめられっ子の彼は、いつも誰かにいじめられている。
 いじめられた後、生活指導課の先生が「大丈夫か?」と聞くと、彼は微かな笑みを浮かべて「うん」と答える。
 だが、ある時、いじめがエスカレートして…」

・「ゆうこちゃん」(1995年「月刊ホラーM」3月号)
「ブス呼ばわりされている少女、ゆうこちゃん。
 ある日、彼女は、ブスを理由にふられた女性を目にして、「お姉ちゃん、ブスなの?」と話しかける。
 頭に来た女性とは、女の子は美人でなければ幸せになれないと、ゆうこちゃんを脅し、「美人になれる方法」を教えると言う。
 その方法は、ゴキブリとねずみとカエルとイモリを捕まえて…」

・「まりあちゃん」(1996年「月刊ホラーM」12月号)
「人見知りな少女、まりあは、兄に連れられて、公園へ行く。
 しかし、公園の子供達は「ひとりっ子団」を結成し、彼女を仲間に入れてくれない。
 帰ろうとした時、まりあは猫を追って、道路に出てしまい、彼女をかばった兄は交通事故死する。
 兄を亡くしたことで、まりあは「ひとりっ子団」への入団を許され、多くの友達ができる。
 だが、母親が妊娠していることを知り…」

・「W(ダブリュー)」(1990年「ホラーハウス」8〜11月号)
「立木シゲルとサトルは、元シャム双生児。
 生後六か月で分離手術が行われ、絶望視されていたサトルは奇跡的に助かる。
 だが、これ以後、シゲルの痛覚は全てサトルが感じることとなる。
 身体が弱く、神経質なサトルは発作を起こすようになるが、その発作はテレキネシス(念動力)のかたちをとって、シゲルの周囲の人間を傷つける。
 そのため、シゲルはスポーツもできず、友達もつくることができなかった。
 高校に入った頃、今まで外部となるべく接触を持たなかった二人に変化が訪れる。
 それは、シゲルに石橋史香という恋人ができたことであった。
 シゲルはサトルに発作を自分でコントロールするよう頼むが、サトルは冷笑するばかり。
 一方で、、精神科医である、史香の兄は、問題はシゲルの側にあると考えていた…」

 不思議な味わいのある作品集です。
 表題作をはじめとする短編も奇想が冴えて、良い出来ですが、双子をテーマとした力作中編「W」が目玉でしょう。(個人的に一番好きなのは「ひとりちゃんとボッチくん」)
 また、文章が中心の後書きや、後ろ側の袖の自己紹介文も、作者の考えに溢れていて、興味深いです。
 特に、自己紹介文の「生きている限り恐怖とは付き合わなければならないのです。だったらいっそ無二の親友にしてしまえ!!というコトで、仕事にしてしまいました。」には感銘を受けました。(そういう考え方もあるのか…。)
 にしても、小野双葉先生は写真通りのパンクな御方なんでしょうかね?

2020年7月22日 ページ作成・執筆

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