千之ナイフ「迷宮サーカス」(2002年4月1日初版第1刷発行)

 収録作品

・「迷宮サーカス」(2000年「月刊ホラーM1月号」掲載)
「校舎の屋上から飛び降り自殺を図ろうとする少女、麻里乃。
 彼女は、赤池という男教師に無理矢理キスされたところを、他の女生徒達に目撃され、陰湿ないじめを受けていた。
 彼女が柵から身を乗り出そうとした時、見知らぬ女生徒が彼女を呼び止める。
 女生徒は、死ぬのは「迷宮サーカス」を観てからにしたら、と、麻里乃にチケットを渡す。
 そこでは、彼女自身と引き換えに、彼女の望みを叶えてくれると言う。
 その夜、人々の歓声で目を覚ますと、寮の庭で、迷宮サーカスが開催されていた。
 麻里乃がそこで目にする、数々の出し物とは…?」

・「迷宮サーカス 透明少女」(2000年「月刊ホラーM4月号」掲載)
「美都は、タレントスクールに通う娘。
 ある日、赤座という大物プロデューサーに声をかけられるが、彼の目当ては彼女の身体であった。
 断ったものの、スクールの実力者、桐島姉妹に目を付けられ、更には、電車の中で太股を何者かに斬りつけられる。
 散々な目にあい、暗澹たる気持ちで、眠りに就くと、彼女はいつの間にか、汽車に乗っていた。
 向かいの席に座る女性はフィオーレという名で、「迷宮サーカス」の主催者と自己紹介する。
 汽車が止まると、目の前に「迷宮サーカス」のテントがあった。
 そこで、美都は姿をガラスの中に移され、透明な存在となる。
 タイム・リミットは翌日の午前零時までで、それまでに「迷宮サーカス」に戻らねばならない。
 透明になった彼女は、怨みある相手に復讐していくのだが…」

・「コロシアム」(2001年「月刊ホラーM1月号」掲載)
「いじめを受けていた彩子が、夢で守護天使からもらった、コロシアムのミニチュア。
 彼女が憎い相手を思い浮かべると、その中には、小さくなった相手が閉じ込められていた。
 彩子は気に入らない相手をどんどんコロシアムに送り込み、惨殺していく。
 そして、この話を聞かされた、友人の香織もコロシアム送りとなるのだが…」

・「霊人形」(2001年「月刊ホラーM11月号」掲載)
「栞は、親友の正美の通夜の際、父親から人形をもらう。
 この人形は、正美の小学校時代の友人が亡くなった際に譲り受けたものであった。
 だが、それ以来、正美は何かに怯えるようになり、学校を休んだ一週間後、車の前にとび出て事故死する。
 形見の品で断るわけにいかず、正美は家に人形を持ち帰るが、どうも気持が悪い。
 奇怪なことが続き、捨てようとしても、誰かが人形を彼女のもとに持ち帰ってくる。
 友人の勧めで、栞は人形を霊能者に見せる。
 実は、この人形はある少女の遺骨でできており、自分が死んだことに気付いていない少女の霊は友達を求めて、大勢の命を奪っていたのであった…」

・「赤魔術の少女」(1999年「ザ・ホラー4月号」掲載)
「ニュータウンができる前の廃村で信仰されていた赤魔術。
 それは礼拝堂で赤魔術の儀式をすると、死者が蘇えると伝えられていた。
 その伝説に憑りつかれた葉我洋子はそれを実証するために自殺する。
 転校したばかりの三条由利は遺書を残されるが、それには、自分の血を、礼拝堂の壷の中に流しいれてほしいと書かれていた。
 とりあえず、由利は遺書に従うが、果たして儀式の結果は…?」

・「妖虫」(2002年「月刊ホラーM1月号」掲載)
「ある日、雪乃は、空があまりに透明だったため、よく見ようと、校舎の屋上に上る。
 すると、彼女の横に、クラスメートの桐香がいて、宙を指さし、雪乃には見えない何かを数えていた。
 翌日、桐香は学校で倒れるが、彼女の肩甲骨のあたりには何かが突き出ていた。
 程なくして、世間に「妖虫病」というものが流行し始める。
 性別年齢は関係なく、多くは、身体がどんどん変形していって、死んでしまうらしい。
 雪乃も妖虫病を発症し、療養所に隔離される。
 だが、雪乃は病状が進むにつれて、感覚が鋭敏になり、「空の生き物」達の誘いが聴こえるようになる。
 「妖虫病」とは一体…?」

 個人的なお気に入りは「コロシアム」。
 原型は恐らく、強烈なトラウマ名作である、いけうち誠一先生の「小ちゃくなあれ」でしょうが、アレンジが非常にうまく、これはこれで傑作だと思います。
 あと、「妖虫」の夢幻的な味わいもまた格別…。

2019年8月29日・9月24日 ページ作成・執筆

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