高橋葉介「マンイーター」(1997年8月1日初版第1刷発行)

 収録作品

・「人喰い(マンイーター)」(1994年「月刊ホラーM」9月号)
「女はマンイーター、天性の狩人。
 彼女に声をかける男は皆、彼女の餌食となり、何百年もの間、失敗はない。
 ある夜、彼女はある青年が気になり、声をかける。
 二人は宿で抱き合い、ことの後で、彼女は食事に取り掛かろうとする。
 しかし、彼もまた…」

・「肉蟲」(1994年「月刊ホラーM」11月号)
「レイコは他人の彼氏を横取りするのが趣味。
 ある日、彼女は女友達からユミの噂を聞く。
 ユミはレイコに恋人のヒロシを奪われたショックで、家に引きこもり、延々とやけ食いをしていた。
 しかも、何か月もそうした生活を続けた結果、ユミはぶよぶよに太り、その様は肉の塊だと言う。
 レイコはユミの変貌ぶりに興味を持ち、彼女のアパートの部屋を訪ねる。
 鍵が開いていたので、中に入ると、全裸のユミが彼女を待ちかまえていた。
 レイコはユミの姿に怖気を振るって、帰ろうとするが…」

・「お気に召すまま」(1995年「月刊ホラーM」1月号)
「ヒロミはクールでかっこいいタカヒロに夢中になる。
 まず、ライバルの女達をあらゆる手段を駆使して蹴落とし、恋人の座をゲット。
 その後も「理想の恋人」となるべく、彼の好みに徹底して合わせようとする。
 ところが、「自主性のない女のコは好きじゃない」とフラれてしまい、ヒロミは自殺を図るのだが…」

・「双子の恋」(1995年「月刊ホラーM」3月号)
「ヒトミの恋人は双子のケンイチとケンジ。
 ケンイチとケンジは顔も体つきも趣味も思考も何から何まで一緒。
 双子はヒトミにどちらか選ぶよう求めるが、ヒトミはそんなことなどできず、デートはいつも喧嘩別れ。
 双子はこれでは埒が明かないと解決策を考える。
 一方のヒトミも妙案を思いついたようなのだが…」

・「パパはあなたが嫌いみたい」(1995年「月刊ホラーM」5月号)
「安達美和子は一人娘で、父親が男手一つで彼女を育てた。
 彼女は美しく、彼女の恋人が何人も結婚を申し込みに家を訪ねようとする。
 父親は彼らが迷わないよう出迎えに行くのだが…」

・「きつね」(1995年「月刊ホラーM」7月号)
「夜更け。
 人気のない道を若い女性と男性が歩いている。
 女性は後ろを歩く男性を痴漢ではないかと疑い、男性は自分が痴漢と間違われているのではないかと怪しむ。
 男性は誤解を解こうとするも、女性はますます彼を痴漢と思い込む。
 だったら、前を歩こうと男性が女性より先に行こうとすると、女性は襲われると思い走り出す。
 痴漢に間違われたままだとまずいと考え、男性は女性の後を追うが、いつの間にか二人とも、見知らぬ場所を走っていて…」

・「似たもの同士」(1995年「月刊ホラーM」9月号)
「黒岩比喜子と白川多恵子は天敵同士。
 幼い頃から二人とも、何かにつけ争い、その関係は高校になっても続く。
 ある日、多恵子が交通事故にあい、片足を骨折する。
 比喜子はいい気味と笑っていたが、階段から転落し、同じ足を骨折、しかも、多恵子と同じ病室であった。
 以来、二人はどちらかがケガや病気をすると、もう片方も同じ状況になることに気付く。
 気味悪く思いながらも、多恵子に富岡修一という恋人ができたことで、比喜子はこれを利用する。
 多恵子がデートをする前夜、比喜子は冷たいシャワーを浴び、わざと風邪をひくと、多恵子も同じく風邪をひいてダウン。
 次は比喜子が富岡修一と恋仲となるが、デートの前日、多恵子も同様の手段をとって妨害。
 二人は相手を傷つけようとエスカレートしていって…」

・「首を吊っているのは誰?」(1996年「月刊ホラーM」3月号)
「始業前、岡田という女子生徒が他の女子生徒たちに怪談を話す。
 下校時間がとっくに過ぎた、人気のない頃、彼女が廊下を歩いていると、後から誰かが近づいて来る。
 それは少女で、彼女の横を通り過ぎるが、足音が全く聞こえない。
 不思議に思い、足元を見ると、彼女のつま先は廊下からわずかに浮いていた。
 顔を上げると、少女は首を吊っており、天井まで身体が持ち上がると、身体がくるっと岡田の方に回転する。
 その顔は…というところで、教師がやって来て、話は打ち切りとなる。
 放課後、岡田が下校していると、中尾という女子生徒が背後から話しかけてくる。
 彼女は首を吊っていたのが誰かと尋ねるのだが…」

・「猫の実」(1995年「月刊ホラーM」11月号)
「夏の暑い日。
 双葉という女子高生が学校をさぼって、ぶらぶらする。
 立ち寄った小さな神社の近くの草むらの中で彼女は若い娘の死体を発見する。
 娘は強姦された後、扼殺されていた。
 死体を見るのは初めてであったが、ちっとも怖くなく、見ていると心が落ち着いてくる。
 以来、彼女は毎日、死体を見に来て、死体は暑さのためにどんどん腐敗する。
 ある日、死体の口から草の芽が出ていることに気付く。
 彼女は草の芽がどんな花を咲かすのか興味を抱き、家に持ち帰り、裏庭に植える。
 水をやって世話をするが、枯れそうで、死体から咲いたからには死体が肥料なのだと気付く。
 そこで、彼女は野良猫をくびり殺して、その死体を埋めたところに草の芽を植えるのだが…」

・「フタバ」(1996年「月刊ホラーM」1月号)
「放課後、フタバという女子生徒が帰る準備をしていると、キタガワ・ユミコが迫ってくる。
 ユミコはレズっぽく、フタバにキスしようとしたため、フタバは彼女の左手の小指を折る。
 その夜、フタバはユミコの小指を痛さを思い、ゾクゾクする。
 翌日、スズキ・コウジという男子生徒がフタバに声をかけてくる。
 彼はフタバにラブレターを出していた。
 フタバは彼をからかうが、電柱の陰で二人を見つめるユミコに気付き、フタバは彼と付き合うことを決める。
 その日の放課後、ユミコはコウジを刺殺した後、失踪。
 次の日にユミコは登校してきたフタバに目がけて、飛び降り自殺をするのだが…」

・「コイン・ロッカー・ベイビー」(1997年「月刊ホラーM」5月号)
「学校の帰り、いつものように、フタバがコインロッカーで着替えようとしたら、いつものコインロッカーに赤ん坊が捨てられていた。
 彼女は赤ん坊には何の愛情もわかず、公園に出て、池に赤ん坊を捨てる。
 それからすっかり赤ん坊のことは忘れていたが、ある日、公園に立ち寄ると、池からあの赤ん坊が顔を出し、彼女を見つめる。
 身体中、鱗に覆われ、どうやら水中生活に適応したらしい。
 しかも、刷り込みによって、赤ん坊はフタバを母親と思い込んでいた。
 呼ぶと、池から這い出してきて、夜中に彼女は赤ん坊と公園を散歩する。
 赤ん坊は彼女の言うことなら何でも聞き、フタバは赤ん坊を使って様々ないたずらをするのだが…」

 「ホラーM」に掲載された短編を収録しております。
 雑誌のカラーなのか、グロ描写のキツい作品が多いように感じます。
 個人的なお気に入りは「首を吊っているのは誰?」。
 「あとがき」にて「読み返すと自分でも何がなんだかさっぱりわからんな」とのことですが、シュールな内容が逆に新鮮に感じました。

・備考
 カバー痛み(この手の紙のカバーは傷みやすい気がしている)。

2024年1月17〜19日 ページ作成・執筆

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