曽祢まさこ「新・呪いの招待状C 罪の行方」(2010年3月1日初版第一刷発行)

 カイは呪殺専門の呪術師。
 彼は依頼者の寿命十年と引き換えに、憎い相手を呪殺してくれる。
 さて、今回の依頼は…?

・「堕ちた女神」(2009年「月間ホラーM」4月号)
「美鈴は高校二年生の時、生徒会会長を二期務めた、才色兼備な娘。
 彼女は、副会長だった聖也と知り合う。
 二人は趣味嗜好が合い、別々の大学に進学してからも、付き合いは続く。
 彼女にとっては友達以上でなかったが、彼にとっては彼女は「女神」であった。
 年を重ねるにつれ、彼はどんどん男らしくなり、彼女は彼に好意を抱き始める。
 だが、何度か誘ってはみたものの、その度にあっさり断られてしまう。
 お互い就職が決まり、焼き肉屋でお祝いをした際、美鈴は彼に従妹の真理を紹介する。
 彼女は19歳で、美容師になるために上京してきた。
 聖也と真理は意気投合し、付き合い始め、一年後に結婚。
 その一年後、真理が美鈴を訪ねてくる。
 真理は聖也の秘密を知り、美鈴にその秘密を打ち明ける。
 美鈴はどうにか誤魔化して真理を説得するものの、後に、その秘密が彼女を絶望に追いやることとなる…」

・「罪の行方」(2009年「月間ホラーM」6月号)
「小学四年生の大石ナツメと湯浅はるみは仲良しの二人組。
 と言っても、妙に大人びたナツメに、はるみが調子を合わせるという主従関係に近かった。
 ナツメは担任の若い男教師、Kに反抗的な態度をとり続けていたが、実は彼のことが好きであった。
 しかし、ナツメの大嫌いな音楽教師の花岡と結婚すると聞き、花岡への憎しみが燃え上がる。
 ある日、ナツメとはるみの二人は音楽室のピアノに、花岡の苦手なクモの人形を仕込む。
 花岡は驚いた拍子に、後ろに倒れ、後頭部を強打し、重体となる。
 時は流れ、三年後。
 花岡は障害が残り、夢をあきらめただけでなく、婚約者のKが別の女性と結婚したと聞かされた日に、睡眠薬のオーバードーズで亡くなる。
 花岡の母親は、娘は殺されたのに犯人は野放しであることに納得がいかず、当時のクラスの生徒達と一人一人会い、話を聞く。
 彼女は犯人と思しき二人組の情報を得るのだが…」

・「人の非ざるもの」(2009年「月間ホラーM」8月号)
「みちかは幼い頃から「人でないもの」を識別することができた。
 人外のものは人のふりをして自然に紛れ込んでいるが、何故か、彼女にはわかる。
 小学校の頃、父方の祖母と同居することとなる。
 祖母も彼女と同じく、人外のものを見抜く能力を持っていた。
 祖母は、あれは正体を知られることを嫌うから、気づかないふりをして、やり過ごすよう忠告される。
 もしも、あれにそのことを知られたら、命に危機にさらされるかもしれなかった。
 16歳になった頃、みちかは学校からの帰り道、恐ろしくやばいあれに出会う。
 それは、外見は可愛い女の子であったが、彼女が人生で見た中で最も危険であった。
 知らぬふりをして通り過ぎようとしたものの、つい目を合わせてしまい、向こうに、彼女が正体を知ったことを悟られてしまう。
 しかも、少女の一家は彼女の近所に住んでおり、みちかは少女に監視される。
 さゆりは祖母に助けを求めるが、祖母はアルツハイマーで施設に入っていた…」

・「絶対的幸福論」(2009年「月間ホラーM」10月号)
「リサの母親は昔から自分の価値観を娘に押し付けてきた。
 その価値観は「フツーが一番しあわせ」というもので、その価値観から外れるものは一切認めない。
 母親の独善的で無神経な言動に耐えかね、リサは大学進学を機に家を離れる。
 春休み、彼女はバイト先で、はるなという27歳のOLと知り合う。
 彼女と付き合ううちに、リサは自分が同性愛者だと気づき、彼女に告白。
 はるなも同じで、二人は同棲生活を始める。
 しかし、リサが実家に帰って、カミングアウトしたことが悲劇を生むことに…」

・「シュガーレスタイム」(2009年「月間ホラーM」12月号)
「優華(16歳)は優等生。
 ある時、クラスメート達に誘われ、「秘密のパーティ」に参加する。
 それは、シド(苗字が紫堂だから/大学三回生)主催の、彼の弟、サトル(19歳/T大生)の誕生パーティであった。
 優華がさっさと帰ろうとすると、シドが彼女を車で家まで送ると申し出る。
 車の中で彼女はシドからダイエットシュガーという粉末をもらい、家でコーヒーに入れて飲む。
 すると、頭がすっきりクリアになり、力が湧いてくる。
 翌日、シドと会い、この粉末について聞くと、これはサトルが開発した向精神薬だと話す。
 しかも、習慣性も依存性もないという優れもの(?)。
 シドはこの薬を売る手伝いをしてくれる相手を探していて、彼女こそがその相手だと直感し、彼女に声をかけたのであった。
 二人は何度か会ううちに、付き合うようになり、優華は粉末をUS(ウルトラ・シュガー)と名付けて、女子高生達に売りさばく。
 商売は順調で、優華は輝くような時間と素敵な恋を手に入れる。
 しかし、夢の時間が終わる時…」

 この単行本の収録作品は粒よりです。(「人に非ざるもの」はイマイチですが…。)
 「堕ちた女神」と「シュガーレスタイム」の出来はかなり高いと思います。
 「絶対的幸福論」は曽祢まさこ先生の「るさん・ちまん」が炸裂していて、読後、どんよりします…。(これはこれでお勧め。)

2022年6月22日 ページ作成・執筆

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