関よしみ「パニック! ―あたし死ぬの?―」(2016年8月1日初版第一刷発行)

 収録作品

・口絵「この世で一番嫌な死に方」(1994年少女フレンド4月号増刊サスペンス&ホラー特集号」)

・「絶望へのカウントダウン」(1995年少女フレンド1月号増刊サスペンス&ホラー特集号)
「高校受験を控え、受験勉強に日々追われる、女子中学生、長瀬真由美。
 彼女が住む町の近くに、軍用機が墜落する。
 その軍用機には、細菌兵器が搭載されていた。その細菌兵器は、体中の細胞を溶かすというもので、ワクチンはなし。
 町は隔離され、住民達は次々と発症していく。
 パニック状態になった人々は自分の奥底になる欲望を満たそうとして、町は混乱状態に陥る。
 真由美は学校からどうにか逃げ出し、家に駆け込むが…。
 この極限状況に真由美の家庭はあっさり崩壊し、真由美は一人、町をさまよう…」
 傑作単行本「壊れた狂室」(講談社)に収録された名作です。
 再読して、私も「虚栄心」や「欲望」「執着」等々をかなぐり捨てないといけないと痛感いたしました。(通報されました。)

・「閉ざされた扉」(2003年月刊ホラーM9月号)
「20XX年、父親の転職により、平和(ひらわ)町に引っ越すことになった稲井一家(父は要、母は遙、姉弟の円と護)。
 この平和町は、父親が中途採用された平和グループによってつくられた町であり、有事の際のために、あちらこちらに避難用のシェルターを設置。
 シェルターは町の人々にとって心のよりどころであり、何か起きた時、最寄りのシェルターに逃げ込むよう訓練を受けていた。
 ある日、夏祭りの準備たけなわの時、テロリストが町内に侵入したというアナウンスが流れる。
 脳震盪を起こした男友達をかばったために、足を骨折した稲井円はシェルターに入りそこね、一人、町に取り残される。
 そこで、円は平和グループの真の姿を知ってしまう…」

・「あたしのお葬式」(1994年少女フレンド9月号増刊サスペンス&ホラー特集号」)
「海外旅行から帰って来たばかりの留美子。
 彼女は、海外でとった花に潜んでいた新種の蜂に刺されて、仮死状態に陥る。
 この蜂に刺されたものは原因不明のショック死を起こすが、50時間後には生き返るのだと言う。
 最初は、家族や友人の反応を見て楽しんでいたものの、葬儀が本格的に行われるうちに、徐々に不安になる…」
 名アンソロジー「13人のショート・サスペンス&ホラー」(講談社)に収録された短編です。

・「絶望の赤い華」(2001年月刊ホラーM9月号)
「そのあくどさから実の息子達からも忌み嫌われていた、市倉真夏の祖父が亡くなった。
 遺産は120億円…しかも、相続人は一人だけ。
 祖父の死から一週間後、相続権を持つ人々は祖父の住んでいた島に集まる。
 遺産相続の権利を手に入れるのは、山頂にある屋敷の庭に咲く赤い華を一番最初に手にした者のみ。
 皆、我先に山頂に向かうが、この島には至る所に地雷が埋められていた。
 祖父のどす黒い悪意の前に、市倉真夏の家族もその叔父一家もバラバラになり、憎悪を剥き出しにする。
 赤い華を手にするのは果たして誰…?」
 心にしみ入るマンガがまた一つ日の目を見ました。
 「遺産相続のためのサバイバル・ゲーム」というテーマに「地雷だらけの島」という発想を持ち込むのが、いやはや「関よしみワールド」!!
 情け容赦のない残酷描写やドロドロしまくったた人間模様は相変わらずですが、「家族愛」にも力点が置かれておりまして、読後感はさわやか…なワケ、ありません。
 う〜ん、「関よしみワールド」…。

・「あとがき 死について」
 関よしみ先生の死生観についてちょこっと書かれております。
 死んだ後のことをくよくよ考えず、意外やポジティブです。

 最近、活動を再開された、関よしみ先生の久々の単行本であります。
 「ホラーM」に掲載された単行本未収録作品が二つ入っているのが、嬉しい限り。(注1)
 20年前の「サスペンス&ホラー」に掲載されたイラストも口絵に載っており、サービス精神旺盛な一冊であります。
(ただ、作品解説がカバーをはがした本体の裏表紙にあるのは何故…?)
 一応、本屋を覗いた感じでは(残念ながら)爆発的な売れ方はしていないようですが、近日中に第二弾が出るようです。
 こうして、単行本も書店に並び、新旧両方の怪奇マンガ・ファンの目に作品が触れるようになれば、近い将来、積極的な再評価に結びつくかもしれません。
 そして、ブーム再燃、遂には「壊れた狂室」が宝塚でミュージカル化されることを、心より祈っております。

・注1
 21世紀に入ってから関よしみ先生の「ホラーM」掲載作品は電子書籍化は多くされておりますが、紙媒体では発行されておりません。
 私、時代錯誤なオヤジなせいでしょうか、電子書籍というものにどうも食指が動かないのであります。
 というワケで、まだ読んでない作品がてんこ盛りだったりします。
 こんなことじゃ、ダメですね…。

2016年8月5日 ページ作成・執筆

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