英洋子「女王蜂」(1998年2月1日初版第1刷発行)

 収録作品

・「闇鳥」(1996年「月刊ホラーM」12月号掲載)
「立木翔子は、彼女をピアニストにしようとする両親の夢に押し潰されそうになっていた。
 スランプは心身症に発展し、遂に、彼女は自殺を考える。
 唯一の心の支えであった、文鳥の「ピー太」を放し、跳び下りに都合のいいマンションに向かおうとした時、ピー太が子供達に捕まりそうになっていた。
 子供達を止めようとした翔子は車にはねられ、意識不明の状態で病院に運ばれる。
 病院には、翔子のクラスメート、鳥山るりが、病気の母を見舞いに来ていた。
 彼女は窓の外にピー太を見つけ、翔子が良くなるまで、自分が面倒見ようと考える。
 しかし、ピー太を家に連れて帰ってから、自分の家の周辺をたくさんのカラスが群れるようになる。
 更に、ピー太に襲われ、気絶した、るりが気付くと、自分がピー太になっていた。
 彼女の身体で、ピアノを弾いているのは、一体誰…?」

・「胡蝶悪夢」(1997年「月刊ホラーM」4月号掲載)
「花を愛する川村蘭。
 だが、彼女が丹精込めて世話した花壇は心無い男子生徒に踏みにじられ、女子生徒達は誰も彼女の肩を持ってはくれない。
 家庭でも学校でも居場所がなく、唯一の心の拠り所であった花壇まで荒らされ、蘭は校舎の屋上から跳び下り自殺を図る。
 しかし、何故か、彼女は無傷で、地面にいた。
 更に、彼女には蜂や蝶といった虫達を自在に操る能力が備わり、今まで自分をいじめた連中に復讐する。
 とは言え、心が晴れるわけもなく、沈んだ気持ちで帰宅した蘭は、背中が猛烈にかゆくなる。
 すると、背中から、あげは蝶の羽が生え、彼女は、あげは蝶へと変身する。
 彼女は、あげは蝶の視点から、自分の一生を見つめなおすこととなるのだが…」

・「女王蜂」(1997年「月刊ホラーM」8月号掲載)
「香の幼馴染、富田美華は、姉が蜜蜂に全身を刺されて死んだ後、どんどん美しくなる。
 だが、根は優しいはずが、姉の死を少しも悲しむ様子はなく、凄まじく傲慢になる。
 また、クラスメートの彼氏を次々と奪い、逆上した女子生徒達に襲われても、返り討ちにする。
 香が美華を観察すると、彼女は、蜜蜂を召使いにしていた。
 香も蜜蜂に襲われるが、祖父が作っていた蜂蜜のおかげで、難を逃れる。
 すると、彼女の前に、奇妙な老婆が現れ、「特別なものになるために食するもの」を食べさせる。
 それはローヤルゼリーで、香は女王候補となり、富田家が最上階に住む六角マンションへと連れて行かれる。
 六角マンションは「蜂の巣」となっていた。
 香は、同じ女王候補の美華と対決せねばならないのだが…」

・「温室幻想曲」(1997年「月刊ホラーM」10月号掲載)
「森育子は元・お金持ちのお嬢様。
 しかし、バブル崩壊後、没落し、今はボロアパートに家族四人、両親は共働き、しかも、十歳も年の離れた弟ばかり可愛がって、育子は不満だらけであった。
 ある日の帰宅途中、彼女は、大きなお邸を目にする。
 そこから逃げてきた小鳥を捕まえたことがきっかけで、邸の住人の少女、ありすと知り合いになる。
 ありすは、豪勢な温室を持っており、そこに育子の花を植える。
 また、彼女は身に蛇をまとっており、蛇にお願いすれば、嫌いな人を苦しめたり、病気にしたりできるらしい。
 願いが叶うごとに、蛇は温室内の小鳥を食べて、どんどん太っていくのだが…」

・「蟷螂の斧」(1998年「月刊ホラーM」1月号掲載)
「美咲の母親は、父親の死後、過労で病気となる。
 幸い、父親の友人であった浦野家の主人の援助で、入院し、美咲は、浦野家に居候の身となる。
 だが、浦野の両親は不仲で、その娘、藤子はストレス発散のために、ことあるごとに美咲をいびる。
 それでも、母親の病気が治るまでは耐える他はない。
 ある時、美咲は、藤子がカマキリが苦手なことを知る。
 そして、自分よりも強大なものにも立ち向かうカマキリに、美咲は憧れを抱く。
 藤子が、病院に手回しして、母親を退院させた時、美咲の怒りは頂点に達し、藤子を引っかき、浦野家を出ようとする。
 藤子は、男友達と共に、美咲に仕返ししようとするが…」

 少女漫画家として高名な英洋子先生。
 怪奇漫画も幾つか描かれておりますが、ベテランの少女漫画家だけあって、良質、かつ、ハートウォーミングな作品が多いです。
 この単行本も、若干のグロ描写はあるものの、基本は、繊細さを感じさせる少女ホラーです。
 ただ、ラスト、ヒロインがブチキレる「蟷螂の斧」は、どこか中途半端で、作者の資質に合ってないように感じました。
 この単行本のベストは「闇鳥」。良い作品です。

2021年2月15日 ページ作成・執筆

ぶんか社・リストに戻る

メインページに戻る