山本まゆり「リセットシリーズ@ 悪魔と天使の選択」(1999年5月1日初版第1刷発行)

 あなたが人生を後悔した時に現れる堕天使アンリ。
 彼は「人生のセーブ係」で、人生を「リセット」できるチャンスを与えてくれる。
 あなたが選ぶのは「天使の道」?それとも、「悪魔の道」?

・「悪魔と天使の選択」(1998年「ホラーM」4月号)
「バレンタイン・デーの翌日。
 里奈は、弓子が江藤に告白して、付き合うことになったと知って、衝撃を受ける。
 しかも、里奈は江藤がひそかに好きで、江藤も彼女のことを悪く思っていなかったという。
 里奈は江藤にそのことを問いただすも、もう彼の心は弓子に傾いていた。
 里奈は意地を張らず、勇気を出してバレンタイン・デーに告白すればよかったと後悔する。
 そんな彼女の前に、堕天使アンリが現れ、リセットするかどうか選択肢を示す。
 バレンタイン・デー前日に戻った里奈は翌日、江藤に告白して、以来、すっかりラブラブ
 だが、彼女に対して嫌がらせが起きるようになり…」

・「母の愛/父の愛」(1998年「ホラーM」5月号)
「朋子の母親は朋子に厳しく、対照的に、父親は彼女に甘い。
 ある日、両親が突如、離婚することになり、朋子は父親を選ぶ。
 父親はだらしない性格で、朋子はそれにつけ込み、やりたい放題。
 だが、家事をする人間がおらず、生活が立ちいかなくなる。
 すっかり嫌気がさした朋子の前に、堕天使アンリが現れ、リセットできると言う。
 朋子は過去に戻り、今度は母親を選ぶ。
 彼女はしっかり者の母親と協力して、充実した生活を送るのだが…」

・「夢から醒めて…」(1998年「ホラーM」6月号)
「由紀と真美は迫山拓人の大ファン。
 ある日、由紀は、真美から劇団クアトロの「ハムレット」の劇に誘われる。
 真美の父親の会社が協賛の芝居で、真美は招待券を二枚もらっていたのであった。
 当日、由紀は熱を出し、芝居をキャンセルする。
 だが、後で、その芝居を迫山拓人本人が観に来ていたと聞いて、大ショック。
 しかも、彼は真美のすぐ横の席で、彼女は握手してもらったという。
 折角の機会を逃して、ガックリする由紀の前に、堕天使アンリが現れ、リセットのチャンスを与える。
 劇の当日に戻った由紀はしっかりオシャレして、劇場に向かう。
 座席の横には、憧れの拓人がいて、大興奮。
 劇が終わった後、彼女は拓人に声をかけようとするも、無理がたたって、倒れてしまう。
 気が付くと、彼女は楽屋で寝かされていた。
 拓人が彼女をここまで運んでくれたらしいが、彼はもう帰っていた。
 その代わり、拓人の友人である榎本充が彼女の様子を見てくれていた。
 由紀はこの榎本充と仲良くしておけば、拓人とまた会う
ことができると考えるのだが…」

・「哀しいリフレイン」(1998年「ホラーM」9月号) 「美咲は町中でカッコいい青年を見かけ、目を見張る。
 だが、青年の彼女は不器量な娘であった。
 彼を見ていると、青年が美咲に声をかけてくる。
 青年は、中学三年生の時、同じクラスだった保坂雄介であった。
 当時の彼は冴えないおデブであったが、「病気」をして痩せたらしい。
 しかも、五か月前の卒業式の時、美咲は彼から交際を求められた際、ボロカスに彼をけなしていた。
 彼女が失敗したと思っていると、堕天使アンリが現れ、彼女にやり直す機会を与える。
 美咲は卒業式の日に戻り、彼からの告白を受け、付き合うようになる。
 だが、彼は一向に痩せる気配がない。
 彼女は彼が「病気」で痩せたことに思い当たるのだが…」

・「盗まれた未来」(1999年「ホラーM」2月号)
「尾崎なつきと隅谷香代子は「まんが研究倶楽部」に所属する、漫画家志望の高校生。
 なつきは絵はうまいものの、ストーリー作りの才能がなく、対照的に、香代子は絵はイマイチであったが、ストーリー作りには抜群の才能があった。
 ある時、二人は雑誌の漫画大賞に応募する。
 大賞と金賞は該当者がなかったが、香代子の作品が銀賞に食い込み、なつきはショックを受ける。
 彼女は内心では香代子より上の賞を取れると思っていた。
 だが、実のところ、香代子の漫画は読んで面白く、自分の漫画には魅力がない。
 どうしたらストーリーが作れるようになるか悩んでいると、堕天使アンリが現れる。
 なつきは漫画大賞に応募する前に戻り、香代子の作品をアイデアを丸パクリした作品を描き上げる。
 その作品で大賞を受賞するも、後が続かず…」

 山本まゆり先生と言えば、心霊漫画の大御所で、「寺尾玲子」シリーズは三十年以上も続く心霊漫画の最高峰の一つです。(注1)
 でも、心霊漫画以外の怪奇漫画でも、幾つもの佳作を描いておられ、「リセット」もそのうちの一つです。
 「リセット」は「過去に遡り、別の選択肢を選ぶ」というよくある内容ですが、「リセットを二回までできる」という設定を加え、一捻りしております。
 普通に読んで面白いので、興味のある方は手に取ってみては如何でしょうか?

・注1
 「寺尾玲子」シリーズは、ちゃんとした実力を持つ霊能者を主人公に据えたことで、心霊漫画のターニング・ポイントになったと考えております。
 内容も非常に高度で、これから先、詳しく吟味される作品だしょう。
 ただ、個人的には、読むと、やけに疲れて、いろいろと鼻についてきます…。
 あと、ず〜っと思っているのですが、寺尾玲子さんは日本人なのに、何故、金髪かつ碧眼なんだ?

2022年7月13日 ページ作成・執筆

ぶんか社・リストに戻る

メインページに戻る