紫垣まゆみ「血の生贄」(1995年3月1日初版第1刷発行)

 収録作品

・「血の生贄」(1993年「ホラーM」Vol.2)
「ある高校のオカルト研究会。
 椎名拓海(二年生)は昔から奇怪な夢を何度も見る。
 夢の中で、彼は血まみれになって倒れ、そのそばには美少女が立っている。
 どうやら彼は彼女に殺されたと思った所で、目が覚めるのであった。
 ある日、オカルト研究会に新入部員がやって来る。
 それは、清瀬紫(きよせ・ゆかり)という一年生で、彼女は転入したばかりであった。
 彼女を一目見た途端、拓海は涙を流す。
 しかも、紫は拓海を、だいぶ前に亡くした恋人の勇一に似ていると話す。
 拓海は勇一という名前に聞き覚えがあり、また、紫も彼に接近する。
 だが、クラブで最も霊感のある大泉司は彼を彼女から遠ざけようとして、部活を休んで、彼女に近づかないよう警告する。
 その夕方、学校で女子生徒がバラバラになって殺される。
 翌日、そのニュースを聞いた拓海は、似たような事件が以前にもあったように感じるのだが…。
 清瀬紫の正体は…?
 そして、椎名拓海、大泉司との関係は…?」

・「異形の血」(1994年「ホラーM」Vol.4)
「唯川笙子は七歳の時に、母親を失う。
 母親は化け物に喰い殺されたのだが、誰も彼女の言うことを信じてくれない。
 十年後、彼女はあるマンションで父親と二人で暮らしていた。
 いつの間にか隣室に若い兄妹が引っ越してくる。
 笙子が通りすがった時、兄の方は何ともないが、笙子は妹の方にイヤな気配を感じる。
 夜、笙子は窓から妹の方が外出するところを見るが、翌朝、近くで惨殺死体が発見される。
 殺害方法は彼女の母と一緒であった。
 夜にまた妹の方が外出するのを確かめて、笙子はその後をつけるのだが…。
 この兄妹の正体は…?
 そして、笙子とのつながりは…?」

・「血の祭典」(1994年「ホラーM」6月号)
「ある高校の新聞部。
 学園新聞の特集が「学園のミステリー」に決まり、木島守哉は「消えた女生徒の謎」の記事を担当となる。
 去年から一年の間、四人の女子生徒が帰宅途中、忽然と姿を消す。
 四人はいずれも美人で、去年の6月から三か月おきに失踪するが、家出扱いされていた。
 守哉の恋人、今野成美は彼に協力して、四人の知人に聞き込みをする。
 いずれも家出をするような理由はなく、また、四人とも、華道部部長の立花綾乃と仲が良かった。
 立花綾乃は華族の血をひく美人で、町はずれの洋館に大学教授の父親と住む。
 成美は綾乃にも行方不明になった四人について尋ねる。
 もちろん、答えは「いいえ」だったが、成美が立ち去ろうとした時、「吸血鬼っていると思う?」と聞いてくる。
 行方不明事件の犯人は…?」

・「目覚めの血」(1994年「ホラーM」8月号)
「森野高等学校女子寮。
 他の僚友達は既に帰省し、寮に残るは1年生の渡瀬亜美ただ一人。
 その夜、亜美は窓の外の茂みに倒れている女性を目にする。
 急いで駆けつけと、その女性は吸血鬼であった。
 亜美の悲鳴を聞きつけて、二人の男子生徒がやって来る。
 男子生徒は2年生の立木慎吾と有川雅也で、二人は夜のプールで泳いだ帰りであった。
 亜美は部屋に運ばれるが、吸血鬼に噛まれ、彼女は吸血鬼になりかけていた。
 亜美を助けるには、吸血鬼を倒すしかない。
 三人は準備を整え、次の夜を迎えるのだが…」

・「秘められた血」(1994年「ホラーM」10月号)
「練馬区N公園で発見された変死体。
 死体は、清水さつきの先輩である田辺友美で、外傷はないのに、全身の血を抜かれていた。
 このニュースを見て、さつきは子供の頃、祖母に聞いた「血を求める者が祖先の血を呼び覚ます」という言葉を思い出す。
 しかし、その言葉の意味はさっぱり掴めない。
 学校で、さつきは、二年生に美杉貴志というイケメンが転入してきたことを知る。
 だが、彼を一目見た時、さつきの脳裏に「キケン」という言葉がよぎる。
 猟奇殺人は再び起き、今度も犠牲者はさつきの通う高校の女子生徒。
 しかも、さつきは、犠牲者が美杉貴志と一緒にいるところを目撃していた。
 さつきは貴志に対して疑念を募らせるのだが…。
 祖母の言葉の意味するところとは…?」

・「永遠の血」(1994年「ホラーM」12月号)
「仲川ユリエは7歳の時、吸血鬼と遭遇する。
 吸血鬼は間宮智彦という青年で、ユリエを殺さず、一年ごとに会いに来る。
 そして、一年前、彼は彼女を花嫁にすると話す。
 18歳まであと一週間という時、ユリエの前に智彦が現れる。
 ユリエは恋人の瞬一に全てを打ち明けるが、二人とも、智彦にさらわれる。
 瞬一を殺すと脅され、ユリエはあきらめて智彦の花嫁になろうとするのだが…。
 智彦がユリエにこだわる理由とは…?
 そして、ユリエと瞬一の運命は…?」

 「吸血鬼」をテーマにした作品を六つ収録した単行本です。
 特に奇をてらった内容ではなく、ベタな話もありますが、頑張って「ホラー」をしていて、好感が持てます。
 個人的には、ミステリー仕立ての「秘められた血」が凝っており、面白いと思いました。

2023年1月16・18日/3月31日 ページ作成・執筆

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