曽祢まさこ「罪なき子」(2019年7月1日初版第一刷発行)

 収録作品

・「罪なき子」(「まんがグリム童話」2017年11月号)
「十九世紀末、イギリス中部。
 地方の名士、R・S氏に長男ロビンが生まれる。
 五歳のデイジーは母親を弟に独占され、不満を募らせる。
 ある時、彼女が赤ん坊の弟にクッキーをあげたところ、喉を詰まらせ、大騒動になる。
 以前より、デイジーの残酷さを気にしていた母親は、デイジーを自分と弟に近づけないようヒステリーを起こす。
 仕方なく、父親は、デイジーを、自分の姉のマージに預ける。
 マージと夫は、自分達でデイジーの世話を見ず、女中のエメリーに丸投げ。
 エメリーは面倒見がよく、デイジーは彼女と彼女の祖母と仲良しになる。
 しかし、時が経つにつれ、デイジーは母親が恋しくてたまらなくなる。
 母親のもとに戻るために、デイジーは…」

・「罪なき花」(「まんがグリム童話」2019年2月号)
「五年後、デイジーは十歳、ロビンは五歳。
 姉弟はとても仲がよく、母親はデイジーがあんなに面倒見がよかったのかと驚きを隠せない。
 だが、実際は、デイジーは、母親に好かれるよう、一生懸命、良いお姉さんのふりをしていただけで、内心では、いつか弟を亡き者にしようと考えていた。
 また、母親が好きで好きでたまらないデイジーは、母親を傷つける者達を決して許さない。
 冬のある日、ロビンを事故死に見せかける絶好のチャンスが訪れるのだが…」

・「断罪の家」(「まんがグリム童話」2017年8月号)
 強盗目的で五人を殺害したサミュエル・クーパーをテーマにした作品。
 父親による壮絶なDVのために異常者となったクーパーだが、この作品では、父親によるDVの被害者であった娘や母親の方に焦点が当てられ、裁判がハイライト。
 「毒親」を扱うと、途端に、曽祢まさこ先生の筆は冴えるような気がします。
 サミュエル・クーパーに関しては、現在も絶賛更新中の凄過ぎるブログ「世界の猟奇殺人者」の記事が参考になります。

・「革命と断頭台」(「まんがグリム童話」2017年5月号)
 フランス革命中、ジャン=ポール・マラーを暗殺したシャルロット・コルデーをテーマにした作品。
 曽祢先生はフランス革命について興味があったのでしょうか、ちゃんと細かいところまで調べ上げているようです。
 ただ、曽祢先生にかかると、「暗殺の天使」も、ほとんどサイコパスではありますが…。

 どれも粒よりですが、「罪なき子」「罪なき花」が最もホラー寄りです。
 あとがきで、この作品のもとになったのは、わたなべまさこ先生「聖ロザリンド」と、シャルル=ルイ・フィリップ(仏/1874〜1909)「小さき町にて」(注1)とのこと。
 特に、「小さき町にて」は、曽祢先生のトラウマ作品の一つと書かれております。
 それにしても、一見、正常だけど、心の奥底の一部が、確実に狂っているキャラを描かせたら、曽祢先生の右に出る者はないような気がするなあ…。

・注1
 「フィリップ傑作短編集」(福武文庫/1990年1月12日発行)では「アリス」のタイトルで収録。
 短いながらも、かなり異様な内容で、この作品に付いていた挿絵ってどんなのだろう…?

2020年6月20日 ページ作成・執筆

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