御茶漬海苔「恐怖テレビ(TVO)御茶漬海苔自選集」(1998年5月1日初版第1刷発行)

・「チャンネル1 クスリ」(1996年「月刊ホラーM」8月号)
「東都小学校。
 六年生の青池万理は友人の一ノ瀬奈々美から「やせるクスリ」をもらう。
 これを飲むと、何を食べなくても平気で、しかも、頭が冴えわたるという。
 実際、その通りで、二人はクスリを飲んで、ダイエットに励む。
 二人はきれいになって、海に行こうと約束するのだが…」

・「チャンネル2 コンビニエンス・チルドレン」
「夜のコンビニで、高文という少年がゲーム雑誌を立ち読みしていると、見知らぬ少年が話しかけてくる。
 少年の名は高崎杉夫で、家で話題のゲームをさせる代わりに「友達」になろうと言う。
 杉夫のマンションに行くと、両親は出張でいないという話で、妹のすみれだけがいた。
 高文は杉夫とゲームをして楽しむ。
 また、杉夫はすみれを女中のように使い、高文は性欲の処理までさせてもらう。
 しかし、家に帰ると、塾をさぼったことを妹にチクられ、父親から体罰を受ける。
 翌日の夜、彼はまた杉夫のマンションを訪ねる。
 そこで、彼は自由になる方法を知る…」

・「チャンネル3 受験ファイア」(1989年「ヤングサンデー」No.3)
「東大受験まで一週間の浪人生。
 彼は勉強を励もうとするも、外でサバイバル・ゲームに興ずる子供達の騒ぎ声が気になって、手につかない。
 ある日の夕方、彼は近所のおもちゃ屋でボウガンを購入する。
 翌日、彼は騒ぐ子供達にボウガンで狙いながら、静かにさせようと想像する。
 彼が一線を超えた時…」

・「チャンネル4 生産と消費」(1989年「ヤングサンデー」No.10)
「ある一家(両親と一人息子)が東京湾に浮かぶ「TOKYO NEW TOWN」に移り住む。
 ここは「ゴミのない美しい暮らし」を謳い、コンピューターが清掃を管理して、「清潔で楽」な「夢の島」。
 ある日、息子はダストボックスから「カサカサ」という音がすることに気づく。
 友人に協力してもらい、彼はダストボックスから地下へと降りるのだが…。
 彼がそこで見たものとは…?」

・「チャンネル5 ノイズ」(1996年「月刊ホラーM」10月号)
「小学生の雪子は血友病であった。
 彼女は入院した際、血友病に良いと言われ、非加熱製剤を打たれる。
 一年もの間、その薬を使用するも、やがて「ノイズ」に感染していることが判明。
 原因はどうやら非加熱製剤らしい。
 そして、病院長の阿部代はそれを知っている様子であった。
 彼の目的とは…?」

・「チャンネル6 沖縄」(1996年「月刊ホラーM」9月号)
「ある家に住む山城の姉妹、弓代と広美。
 毎日、基地の騒音に悩まされているだけでなく、姉妹の母親は米兵の車にはねられて亡くなっていた。
 ある日、半年ぶりに父親が東京から戻ってくる。
 だが、父親もまた米兵による轢き逃げにあい、意識不明の重体となる。
 姉妹は、父親の回復を願い、母親の墓参りに行くが、広美が米兵に拉致され、レイプされた後に死体で発見される。
 しかし、日本の警察は基地に立ち入ることはできず、犯人の裁判はアメリカ側で行われるという。
 弓代が悲嘆に暮れていると、ふとある記憶が甦る。
 昔、祖父は自分の軍用拳銃を弓代と共に裏山に埋めたことがあった。
 祖父は戦争はもう終わったと言っていたが…」

・「チャンネル7 規則」(1989年「ヤングサンデー」No.5)
「香織は兄のことが自慢。
 兄は小さい頃から彼女をいつも守ってくれ、今は国防軍で、国のために働いていた。
 香織は高志という青年と結婚することとなり、二人は潜水艦乗りの兄と会おうとするのだが…」

・「チャンネル8 死」(1989年「ヤングサンデー」No.21)
「戦場。
 ハリーは人を殺すのも、自分が死ぬのも何とも思わない兵士。
 新人兵士のジョンは怯えて役に立たず、ハリーは彼を嫌悪し、逃げたら殺すと脅す。
 ハリー、ジョン、スティーブの三人に午前二時、敵陣への突撃命令が下る。
 敵の攻撃は激しく、スティーブが殺されるのを見て、ジョンは恐怖で身がすくむ。
 ハリーだけは敵を片端から掃射していくのだが…」

 御茶漬海苔先生による「恐怖テレビ(TVO)」の自選集です。
 作者の志向が強く出ているためか、社会批判的な傾向の作品が多めです。
 中でも、「月刊ホラーM」に掲載された「クスリ」「ノイズ」「沖縄」はそれぞれ「年少者に広がるドラッグ問題」「薬害エイズ問題」「沖縄問題」と微妙なネタを扱っております。
 特に、「沖縄問題」に関しては、御茶漬海苔先生はアツく訴えたいことがあるようですが、一筋縄ではいかない問題でありますし、ちょっと直情的な内容に感じられたので、あまり感銘は受けませんでした。
 ちなみに、帯には小泉今日子さんによる推薦文が載せられております。
 「御茶漬海苔さんのホラーは童話みたい。ピュアで美しく、とってもとっても恐ろしい。」とのことですが、私に言わせれば、御茶漬作品は「童話」というよりは「トラウマの活け造り」です…。

2023年10月13日の金曜日 ページ作成・執筆

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