御茶漬海苔「地獄劇場」(1997年8月10日初版第1刷発行)

 収録作品

・「地獄劇場」
「第一話・柿子の場合」(「恐怖の快楽」1996年第8号(「イカしてソーロウ3月28日増刊号」)初出)
 黒山家にて、当主、桃人の嫁が惨殺される。
 死体は刃物で滅多刺しにされ、口や乳房、性器が切り取られていた。
 横で寝ていた桃人は睡眠薬を飲まされていたが、事件の夜、不審な男が家を覗き込んでいたのが目撃される。
 不審な男は、桃人の嫁に片想いしていた山男で、同じ夜に、彼は遺書を残して入水自殺する。
 犯行は山男によるものと思われたが、桃人の親友、地獄探偵は、ある点に不審を感じ、真犯人を導き出すのだが…。
「第二話・貴美子」(「恐怖の快楽」1996年6月号初出)
 地獄探偵は、青島貴美子の父親の葬儀に駆け付ける。
 母親の嘆きようは大変なもので、貴美子によると、18歳の母親は40歳の父親に一目惚れして以来、ずっと愛し続けていたのだという。
 葬式の夜、貴美子が就寝中の母親を惨殺したところをお手伝いの女性が発見。
 だが、貴美子は何も覚えておらず、母親の頭部の行方もわからない。
 地獄探偵は、ふとしたことから、父親の過去が不明なことを知る。
 彼が父親の書斎を調べていると…。
「第三話・青井悪代」(「恐怖の快楽」1996年8月号初出)
 豪雨の中、地獄探偵は、春子の誕生パーティに間に合うよう、車をとばす。
 途中、対向車と正面衝突しそうになり、対向車の女性に安否を尋ねようとするが、女性はすぐに去ってしまう。
 誕生パーティの場所は、晴子の友人の純子という女性のマンションであった。
 晴子は、地獄探偵に純子を紹介し、彼女の亭主は悪い女にだまされているから、相談に乗ってほしいと彼に頼む。
 その時、純子に警察から電話があり、亭主が、愛人の青井悪代の部屋にある浴室で刺殺されたと報告される。
 青井悪代は犯行を否定。
 そして、純子と春子はずっと部屋で料理をしていたとアリバイを主張するのだが…。
「第四話・妹」(「恐怖の快楽」1996年12月号初出)
 地獄探偵は、友人の白峰を訪ねる。
 白峰の相談は、妹を殺すという脅迫状が届いたことであった。
 その話をしていた時、妹の百合は、邸の屋根から跳び下り自殺を遂げる。
 妹の部屋には、「私のからだは汚れました ごめんなさい」という兄への遺書が残されていた。
 白峰百合の告別式の日、地獄探偵は、白峰が男を惨殺した場面に遭遇する。
 白峰が語る、事件の真相とは…?

・「BODY」(「フィールヤング」1992年9月5日増刊号初出)
「涼子は、小説家の秀二を心の底から愛していた。
 彼の家を訪ねては、何から何まで世話を焼くが、彼は彼女を決して抱こうとはしない。
 涼子の親友のリサ子は業を煮やし、秀二に涼子の件で抗議する。
 その夜、涼子とリサ子が電話で話していると、リサ子が秀二に襲われた気配がある。
 涼子は慌てて、リサ子の部屋に向かうが、そこで目にしたものとは…?」

・「地獄劇場あとがき」
 御茶漬海苔先生は、横溝正史や江戸川乱歩の映像作品が大好きとのことです。
・「解説・谷間夢路/研ぎ澄まされたナイフのような鋭利さ―御茶さんは漫画界のムンクである」(1997年6月吉日)

 「地獄劇場」は、「地獄探偵」を主役に据えた(一応は)「探偵もの」ですが、地獄探偵はどちらかと言うと、狂言回しに近く、本格的な推理・ミステリーを求める向きには物足りないかもしれません。
 「BODY」は強烈な性的倒錯(ネクロフィリア)が描かれており、こちらの方が出来がいいように思います。(ゲロゲロですが…)

2020年3月16日 ページ作成・執筆

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