いなば哲「幻影城の花嫁」(170円)



「自然の要塞に守られた奥山に築かれた幻影城。
 城主、三郎丸のもとに風魔族の鶴姫が輿入れしてくる。
 ところが、鶴姫は精妙に作られた人形であった。
 家老は鶴姫が何かの術を用いているのだろうと、何事もないかのように振る舞う。
 腹立ちのあまり、座を蹴った三郎丸だが、夜、鶴姫の部屋に忍んでいくと、人形の鶴姫がさっと立ち上がり、部屋から出て行く。
 慌てて後を追うが、鶴姫の姿はどこにもなく、見張り達は誰の姿も見なかったと言う。
 訝りながら。三郎丸が鶴姫の部屋に戻ると、そこには鶴姫の人形が鎮座していた…。

 さて、その翌朝、山中をさまよう武士が一人。
 彼は、木に腰巻一つで逆さづりにされ、烏の餌食になろうとしている娘を発見する。
 危ういところを助け出し、意識を回復させると、娘は自分を風魔族の鶴姫と名乗る。
 娘に命令されるまま、武士は幻影城を探す手伝いをすることとなるのだった。
 ようやく幻影城に辿り着く二人であったが、今度は偽物として捕らえられてしまう。
 そして、二人の前に、昨日、輿入れしたばかりの「本物」の鶴姫が現れるのだが…」

 厳密には「怪奇色のあるミステリー」でありますが、怪奇色がかなり濃く、内容も面白いです。
 加えて、本書のヒロイン、鶴姫様が素晴らしい!!
 ちっとも顧みられることがなく遺憾千万なのでありますが、いなば哲先生の女性キャラ、個人的にかなり好きです。
 少女マンガのようにゴテゴテと修飾せずに、シンプルな線で描かれており、独特の清涼感があるように思います。
 私が読んだ限りでは、いなば哲先生のヒロインは大人しい町娘がほとんどですが、本書では珍しく、高ビーな鶴姫様の魅力が炸裂!!
 腰巻一枚で逆さ吊り(上半身は裸)の「ほんわかエロス」を始め、「無礼者ッ」(振り仮名がコマの外にはみ出ちゃってます)と振り向きざまに一喝するコマとか、惚れ惚れしてしまいます。
 強気で、お転婆だけど、女らしい一面も…なんて、男殺しなキャラですな。


・備考
 カバー痛み(折れ痕、後ろ側に紙が貼りついて、剥がれた痕あり)。貸本として使用された形跡なし。

2016年3月11日 ページ作成・執筆

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