「怪談特集 鬼@」(150円)



 収録作品

・岩井しげお「木乃伊(ミイラ)」
「二百石取りの御家人、榊原剛三は元、強盗団の仲間であった。
 かつての仲間が二人、金を強請(ゆすり)に来るが、剛三は彼らに、大金が転がり込む話を持ち掛ける。
 剛三の住む屋敷は別名「ミイラ屋敷」と呼ばれ、金の亡者として知られた荒巻主馬の屋敷であった。
 荒巻主馬は旗本相手に高利貸しで唸るほどの金を貯めたものの、病と老齢には勝てず、臥せる身となる。
 自分の金を人に取られることを恐れた彼は、土蔵の下に穴蔵を掘らせ、その中に全財産を運び入れると、中に閉じこもり、そこを自分の墓穴とする。
 数年後、主馬の親類が穴蔵の中に入ると、主馬はミイラになりながらも生きており、中に入った連中は皆、狂死してしまったのであった。
 剛三は二人に、穴蔵に入って、財宝を持ち帰るよう依頼するのであるが…」

・「幻々怪々 ゆうれいがもって来た着物」(文章)

・いなば哲「犬鳴峠伝奇」
「江戸で牢抜けをした、三人の悪党が、関所を破ったものの、山中で迷ってしまう。
 そろそろ体力の限界に達しようかという時、彼らは山中で小屋を見つける。
 小屋には、盲目の老人と一匹の犬が暮らしていた。
 彼らは小屋で一夜を過ごすが、悪党のうち、一人が、老人が大金を隠し持っており、それをひそかに地中に埋めようとするのに気づく。
 彼は、土を掘る老人に斬りつけ、襲いかかった犬にも傷を負わす。
 老人はしつこくも彼に取りすがろうとするが、右腕を切り落とされ、老人は絶命。
 他の二人には老人が密告しようとしていたと説明し、彼は老人を埋める。
 だが、小屋に戻るたびに、何故か、切り落とした右腕が彼の身体についてくるのであった…」

・巌太郎「死者の贈り物」
「将軍家の隠し目付であった司は、桜井十馬、田辺三郎太と共に、奥飛騨に向かう。
 そこで将軍家打倒を企てているとの情報があり、彼らはその一党に紛れこみ、連判状を手に入れる。
 しかし、脱出の際、彼らの正体がばれ、雪山で一党に追われることとなる。
 雪崩により追手は壊滅したものの、彼らも遭難し、田辺三郎太は寒さと飢えにより死亡。
 続いて、十馬も力尽き、ひそかに手に入れた金を家族のもとに届けるよう、司に頼んで、自殺する。
 一人、ようやく山小屋に辿り着いた司は、十馬の金を横領し、出世の糸口とすることを決意する。
 その夜、誰も来るはずがないのに、山小屋の戸を誰か叩く者がいる…」



・「怪談ひとくちばなし 馬の怪」(文章)
・「奇談・怪談」第一回(文章)

・沢田竜治「血妖地獄」
「山中で道に迷った侍と使用人の源助。
 日も暮れ、途方に暮れていた時、二人は荒れ寺を見つける。
 寺には人が住んでいる様子がなく、中に入ると、人骨が幾つも転がる部屋があった。
 とは言え、野宿はできないので、他の部屋で休むが、侍は肉を焼く匂いに気付き、様子を見に行く。
 すると、寺の庭で、顔が半分爛れた男が火を焚き、肉を焼いていた。
 男は寺の墓守で、寺には彼一人。和尚は半年前に狂死したと言う。
 男に猪の肉を勧められ、侍はそれを食べると、なかなか味がいい。
 源助の分ももらい、侍が引き返すと、片腕の女が目の前に現れる。
 女は腕を返すよう、しきりに繰り返すのだが…」

・美原雄二「野ねずみ地獄」
「少年は、奇怪な老人が自分の住む村に向かうのを目にする。
 その老人は、笛で野ねずみを操り、殺人を繰り返す狂人であった。
 少年の祖父もねずみの犠牲となり、白骨と化す。
 そんな時、彼は侍と出会う。
 侍は、父親を殺され、老人を追っていた。
 少年は侍を自分の小屋に泊め、二人で老人の凶行を阻止しようとするのだが…」

 1960年頃から金竜出版社から刊行されたと思しき「怪奇特集 鬼」の第一冊目です。
 トータルで何冊出たのかは定かでありませんが、ベテランのいなば哲先生(以下、敬称略)、岩井しげお、沢田竜治、巌太郎あたりが常連だった模様です。
 この単行本でも、いなば哲先生の作品は抜きんでており、いやはや、安心して読めるというのはありがたいものです。
 でも、個人的なベストは、沢田竜治先生「血妖地獄」。
 絵はそこまで上手いものとは言えず、ストーリーもわかるような、わからないような内容です。
 ですが、グロ描写に異様な程、力を注いでおり、墓守の男の描写や女幽霊の描写は今見ても、かなり不気味です。(画像を参考のこと/水木しげる先生等の影響あり?)
 また、美原雄二先生「野ねずみ地獄」は、人がネズミの群れに襲われる描写があり、派手さはないものの、当時としてはかなりショッキングだったのではないでしょうか?

・備考
 カバー貼り付け、また、痛みひどし、背表紙の下部が破れかけ。糸綴じあり。前の見開きに「ていねに見て下さい」とサインペンで書き込みあり。

2019年8月19日 ページ作成・執筆

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