「怪談特集 鬼A」
(1960年5月頃?(注1)/150円)



 収録作品

・岩井しげお「蟇之介(がまのすけ)見参」
「道場同士の果し合いにより、父親を亡くした青年。
 父親の仇を討とうと焦るものの、まだまだ腕は未熟。
 気晴らしに散策に出た時に、とある谷で遭難してしまう。
 そこで、彼は奇妙な仙人と出会い、剣術の手ほどきを受ける。
 が、それから青年は変わってしまうのだった…」

・後恵二郎「丙午(ひのえうま)」
「道に迷った侍がたどり着いた一軒家には、念仏を唱える男がいた。
 そして、奥の間には頭蓋骨が一つ…。
 男は武士に自分の身の上を話し始める。
 男は以前、武士だったのだが、友人が惚れていた女性と結婚し、嫉妬。
 友人に、その女性が丙午の生まれであると嘘を言う。
 赤子が死産したことをきっかけに、友人はそのことを気にしだし、遂には妻を殺害。
 しかし、奇怪なことはそれだけにとどまらず、その友人も妻の頭蓋骨に喉を喰いちぎられてしまう。
 そして、呪いは男の身にも振りかかってくるのだった…」

・いなば哲「怨霊破れ傘」
「梅雨の頃。
 雨宿りをしていた娘に傘を貸した侍が、無頼の浪人共に絡まれ、斬殺されてしまう。
 それを目撃していた娘も、浪人に襲われ、雨で増水した川に転落、流される。
 その翌日、その浪人たちのもとに、娘の霊が現れ、浪人を一人また一人と破滅に追いやるのだった…」
 この本の中で、一番出来がよいです。今読んでも、まあまあ面白いです。
 まとまりが良く、いなば哲先生の短編の中でも、かなりの出来栄えでは?

・巌太郎「地獄への案内者」
「道に迷った侍は、顔半分がケロイド(?)になった男の案内により、人形屋敷を訪れる。
 彼の部屋には、柩があり、その中には女性の死体があった。
 そこの女主に問うと、それは蝋人形だと言う。
 その時、女主の兄が館に帰ってきた…」
 裏の傑作。
 ストーリーを簡単に記述しておりますが、完全に破綻しておりますので、全く無意味です。
 内容は、まさしくバッド・トリップそのもの。
 ワケのわからなさは、「幽霊館の鬼女」を遥かに凌駕します。
 そして、奇怪な出来事の数々に途方に暮れた主人公のとった行動とは……

 ふて寝!!
 …
 ……
 ………なるほど、一理あるかもしれません…。
 テンパった時には、とりあえず、ふて寝。私も一度、試してみましょう。

・沢田竜治「怪談足伏せ原」
「足伏せ原に出没する僧侶に願い事をすると、叶うかわりに、悲惨な運命が待ち受けるという。
 それを試しに、とある侍が足伏せ原を訪れるが、彼はその僧侶が絶対に実現できない願い事をしようとする。
 そして、彼は、僧侶に願い事をしたばかりに最期には首をくくることになった友人に会うことを願うが…」
 世に無数にある「猿の手」のバリエーションですが、これはイマイチです。

・注1
 巻末に「専属作家募集」の広告があり、その締め切りが「35年6月15日」であるため。

・備考
 糸綴じあり。pp31〜34、pp93・94、pp99〜102、pp105・106、pp135・136、下部に切れあり。pp43・44、下部に一部欠損あり。

平成26年8月1日・10日 執筆・ページ作成

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