いなば哲「顔のない顔」(190円)



・「顔のない顔」
「愚連隊から若い女性を助けた舟木一太郎。
 女性の美しさに心を打たれた一太郎は、翌日、その女性と偶然に出会う。
 志乃と名乗る女性は昨日の礼を一太郎に述べるが、どうも心配事があるような様子。
 急に泣き崩れた女性を屋敷に案内し、母を交えて、事情を聞くと、三十も年の離れた男性との縁談を嫌い、家出したと話す。
 このままでは自殺しかねない勢いなので、一太郎は母親に相談し、志乃を一時、家に置くことにする。
 甲斐甲斐しく働く志乃は母親に受けが良く、一太郎も彼女への好意を募らせる。
 が、ある日、外出した一太郎は往来で志乃とそっくりな女性と見かけ、声をかける。
 すると、その女性は一太郎を見て喜び、先日、助けられたお礼がしたいと言い出す。
 この女性は四国屋の菊といい、外見は志乃とそっくり。
 このままでは一太郎に助けられた人物が二人いることになるのだが…」
 タイトルが「顔のない顔」で、何のことやらワケがわかりませんが、読めば納得です。
 ネタバレですが、要は「のっぺらぼう」(口だけはあり)なんですよね。
 この顔なし女がポンチ絵フェイスで男に迫るシーン(上右図参照)は、なかなかに不気味です。
(何も片っぽだけ「オバQ」みたいな目を描かなくてもいいじゃないか!!)
 ちなみに、ラストは顔なし女は男を独占するために食べてしまい、その後、喰人鬼になったそ〜な。
 味わい深いです…。

・「借りた顔」
「金田一之進の屋敷を訪れた、浪人の不古田義助。
 不古田は一之進の昔の同僚であり、それを笠にきて、傍若無人な振る舞いをする。
 帰宅した一之進は不古田と会うと、不古田は多額の金を要求してくる。
 もしも要求に応じなければ、失うもののない者の強み、何をしでかすかわからない。
 とりあえず、一之進は不古田を一晩泊め、その夜、裏庭にある、城中に通じる古井戸に不古田を案内する。
 しかし、それは真っ赤な嘘で、一之進はそこで不古田を斬殺、不古田は井戸に転落する間際まで呪いの言葉を口にするのであった。
 そして、翌朝、あろうことか、一之進の息子、辰之助の顔が殺された不古田の顔に変わっていた…」

。・備考
 カバー痛み、背の下部、欠損。p1、茶の色鉛筆(?)による落書きあり。pp2・3にて割れ。p35、掌らしき痕あり(汚い手で触ったな)。

2016年3月1日 ページ作成・執筆

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