いなば哲「九ちゃん怪奇談」(170円)



 収録作品

・「お加代人形」
「都会での成功を夢見ながら、山小屋で一人暮らす青年。
 ある日、彼が家に戻ると、手負いの老人が家の中で倒れていた。
 老人は人形師で、江戸のある大名に頼まれ、人の魂を込めた人形を作ったと話す。  その人形は何でも願いを叶えるという不思議な力を持っており、その人形を狙う連中に老人は追われていた。
 老人は青年に人形を託し、四日後の昼に昌平橋まで持ってきてくれたら、大金の
礼をすると約束する。
 そこへ追手が現れ、青年は逃げ出すが、草むらの中に追い詰められてしまう。
 彼が助かるよう祈っていると、草むらの中に若い娘が現れ、追手達が娘に気を取られている隙に、彼はうまく逃げおおせる。
 後で、彼が人形箱を見ると、「お加代人形」と書かれており、中には若い娘の人形が入っていた。
 彼は先程の娘が人形の化身と考え、人形を利用して、江戸で成功しようと目論む。
 宿屋でもお加代は追手から人形を取り戻し、更に、追手を偽の情報で攪乱する。
 気が大きくなった青年であったが、道中、追手に見つかり、人形は取り上げられ、木に縛り付けられてしまう。
 彼が助けを求めていると、その前を例の娘が通りがかる。
 娘の正体とは…?
 そして、彼はお加代人形を老人に渡すことができるのであろうか…?」

・「ぼたもちにきけ!」


「江戸。
 ある青年を、三人の友人が訪ねてくる。
 訪問の目的は、鶯谷に「伊奈葉哲斎」という、俗悪な怪奇絵を描く怪画家がいるので、改心を迫ろうと勧誘に来たのであった。
 四人は哲斎の荒屋敷に踏み込むが、応対に出た哲斎は柔和な笑顔の好好爺で、四人は呆気にとられる。
 とりあえず、ファンのふりをして、ぼたもちを御馳走になりながら、俗悪な絵を描かないよう、哲斎に求める。
 哲斎は一応はそう心がけると誓うものの、強硬派の青年は、絵を描くそばで監視すべきと主張。
 というわけで、青年達は交代交代で哲斎の仕事を見張ることとなる。
 だが、哲斎は、絵に描いた相手を絵の中に閉じ込める魔力を持っていた。
 一人、また、一人と青年達は絵に封じ込められていく…」

 故・坂本九さん(以下、敬称略)を(恐らく、無断で)登場人物として使った作品です。
 ただ、私、坂本九については「上を向いて歩こう」(米国では「SUKIYAKI」)以外は、ヒット曲もどんな人物かもほとんど知りません。(飛行機事故で亡くなった時、私はまだ小学生でありました。)
 というわけで、細かいネタ等、ほとんど理解できてないのですが、とりあえず、思ったことは、主人公が坂本九である必要は全くないなぁ…。
 「お加代人形」のラストは悲惨の一言ですし、「ぼたもちにきけ!」(凄いタイトル…)は不条理感溢れる作品で、表紙の爽やかな笑顔とは程遠い内容となっております。
 でも、ストーリー自体は非常に出来はよく、面白いです。
 坂本九のファンの方が読んだら、どんな感想を持つのか、気になるところです。

 ちなみに、「ぼたもちにきけ!」の右画像に、手塚治虫先生に関する言及があります。
 関西で活躍していた先輩筋の、いなば哲先生には、宝塚出身の天才漫画家、手塚治虫先生はどのような存在だったのでしょうか?
 また、漫画が俗悪か否かという議論が出ているところも興味深いです。

・備考
  状態悪し。I文庫仕様(カバー裏に新聞紙等による補修。表紙を本体から取り外し、本体を何らかの厚紙で覆っている)。糸綴じあり。カバー痛み(特に、背表紙がボロボロ)。pp13・14、下隅にコマにかからない小欠損。

2018年3月23日 ページ作成・執筆

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