犬木加奈子・他「旅の怪談」(2006年7月10日初版第1刷発行)
収録作品
・佐々木慶子「蟻地獄の館」
「N高テニス部の一行はOBの先輩と共に箱根にドライブに行く。
北浜先輩、松宮奈利子、洋子の三人が乗る車は、残りのメンバーの乗る車よりも先に別荘に到着。
中に入るものの、ドアや窓が開かず、外に出れないだけでなく、電話も通じない。
しかも、館の中には三人以外にも人がいた。
それは三人にそれぞれゆかりのある死者達で…」
・佐々木慶子「雪女パニック」
「雪子はある会社社長の娘。
父親は病気で日々弱っていたが、彼女には従兄弟の貴弘という婚約者がいた。
ある日、彼女は父親と貴弘の話を立ち聞きする。
実は、雪子は実の娘ではなく、十七年前の雪の降る日、背の高い髪の長い女から託されたものであった。
女は赤ん坊の雪子を渡すと、その場に倒れ、その身体は雪と共に消えてしまったと言う。
この話に雪子はショックを受けるも、貴弘は彼女が養女であろうと気にしないと慰める。
父親の初七日が終わった後、雪子と貴弘はスキーに出かけるのだが…」
・御茶漬海苔「殺人ダイアル9999」
「夏休み、春子、夏子、冬子の三人は湖のそばの別荘を訪れる。
しかし、三人のうち、誰もが誘った覚えはない。
訝っていると、別荘に電話がかかってくる。
それは、一年前に彼女達がいじめで死なせてしまった秋江からで、彼女達に復讐すると告げる。
逃げようとするも、唯一の脱出路である吊り橋は燃やされ、雨も降ってくる。
三人は二手に分かれて、屋敷内に脱出口がないか探すのだが…」
「麻美と父親は、古びた洋館を買い、移り住む。
ほどなくして、麻美の肌には卵を産みつけたようなイボイボが幾つもでき、遂には身体中を覆う。
医者ができものからサンプルを採取して調べると、できものは虫の卵が数千個集まったものであることがわかる。
その虫は新種で、繁殖能力は恐ろしく速い。
英語で書かれた日記に、虫の秘密を解く鍵があるようだが…」
・川中島みゆき「魔女が微笑う時」
「奈津美は、恋人の高志と新潟を訪れる。
高志は刑事で、五日ほど休暇が取れたのであった。
弥彦の温泉旅館に泊まった際、二人は、男連れのとても美しい女性を目にする。
その女性は、奈津美の叔母の家の横に住んでいた。
そこは東京の実業家の建てたお屋敷で、旦那は週末にだけ帰ってくると言う。
その夜、奈津美は父親の形見の腕時計をなくしたことに気づく。
恐らく、叔母の家の裏で落としたようで、高志は捜しに行く。
そこには、弥彦温泉で出会った女性が彼を待っていた。
彼女は彼を誘うようだったが、その場に亭主が現れ、事なきを得る。
だが、彼女と付き合ったいた男達は皆、不審死していた…」
・「不幸福の王子」(2002年月刊ホラーM11月号)
「自動車事故により、両親を亡くした少女、幸田杏奈。
兄の幸田善行は下半身に重度の障害を負い、一生車椅子生活となる。
親が遺してくれたマンションの家賃収入と、事故の際の保険金で、二人は生活には困らなかったが、善行は自分の身に降りかかった不幸を思い、欝々と過ごす。
退院して幾日経ったある日、善行は杏奈に、これから「幸福の王子」になると宣言する。
善行は、マンションの屋上から望遠鏡で辺りを観察して、世の中には自分よりも不幸な人がたくさんいることに気付いたと言う。
不幸な人々を救うために、善行は不幸な人へこっそり金を届けるよう、杏奈に頼む。
自動車事故の責任を感じていた杏奈は喜んで兄の手足となって働くが、その行為が様々なトラブルの種となっていく…」
・「家のない蝸牛」(1992年「月刊少女フレンド9月号増刊「サスペンス&ホラー」特集号」所載)
「夏休み、蒸し風呂のような都会に飽き飽きした少女三人(みよ子、カンナ、サツキ)。
彼女達は、祖母のいる海村で夏を過ごしている滑川影代を強引に訪問することに決める。
滑川影代は、陰気な少女で、三人と同じ連絡班に属していながら、三人とつるむようなことはめったになかった。
更に、ある雨の日、影代はドブにいたナメクジを家に持って帰ってから、徐々に様子がおかしくなり、夏休み前に学校に来なくなった。
そこで、三人が夏休みの課題を影代の家に持って行った際、家族の病気の療養のため、祖母の実家で夏を過ごすと影代は話したのである。
電車やバスを乗り継ぎ、ようやく三人が訪れた海村は、ひどく寂れた僻村であった。
奇妙なことに、住人はほとんど姿を見せようとせず、この暑さにどこも雨戸は締めきったまま。
また、三人を迎えに来た影代もひどく顔色が悪く、祖母の家も暗く湿っていて、床や壁に白く光る跡が至る所にあり、異様な印象がぬぐえない。
影代は、家の奥に病気の家族が寝ているから、絶対に行かないように三人に告げる。
こっそりと影代はみよ子に明日すぐに立ち去るよう耳打ちするのだが…。
影代とその家族の秘密とは…?」
「旅の怪談」を銘打ってはおりますが、あんまり関係ないです。
でも、犬木加奈子先生、御茶漬海苔先生、関よしみ先生といった大御所から、佐々木慶子先生、川中島みゆき先生といった渋いあたりまで幅広く作品を揃えておりますので、収録作品のレベルは高いです。
佐々木慶子先生「蟻地獄の館」は多少、スタニスワフ・レム「ソラリス」っぽいかも。
御茶漬海苔「殺人ダイアル9999」のこのエピソードは単行本未収録のようです。
にしても、表紙の女性の顔、怖すぎるぞ…。
2022年12月29日 ページ作成・執筆