高港基資・他「恐怖体験 雨の訪問者」(2012年7月9日初版発行)

 収録作品

・高港基資「黒点」
「ある日、フリーターの青年は駅のホームで若い女性が電車にとび込み自殺をする場面に遭遇する。
 女性の身体は電車に撥ね飛ばされ、その際、彼女の血が青年の右目に入る。
 以来、彼の右目には黒いシミのようなものができ、日を追うごとに広がっていく。
 ある夜を境に、黒いシミはなくなるが、今度は右目に死者の姿が映るようになる。
 調べると、鉄道自殺した女性も彼と同じ経験をしていた。
 彼は右目に眼帯をして、しのごうとするのだが…」

・高港基資「曾々祖父」
「杏花のひいひいおじいちゃん。
 彼は百歳を過ぎ、寝たきりであった。
 杏花が曾々祖父の田舎に行った時、彼は彼女にある話をする。
 百歳を過ぎた頃から、老人は眠るだけであの世に行けるようになった。
 三途の川の向こう側にはまだ行く気がなく、彼は河原で退屈しのぎに石を積む。
 ふと目が覚めると、手には河原の石が握られていた。
 その石はピクピク動くと、虫になって飛んでいく。
 老人は、これが事実かどうか確かめるため、次はわざと石を持ち帰ると…」

・高港基資「塚田のおとん」
「塚田の父親は阪神タイガースの帽子が目印の陽気で人の良いおっさん。
 だが、そんな年でもないのに、ひどくボケて、亡くなる。
 その葬式の際、小説家の男性は塚田の父親が家の中をウロウロしているのを視る。
 どうやら自分が死んだことに全く気が付いていない様子であった。
 それから、半月後…」

・高港基資「シアワセナオウジ」
「恩田是也は不世出のバレエ・ダンサーと言われた恩田悟の息子。
 バレエ・スクールで熱心に練習に励むも、是也には父親の才能は一片も受け継がれていなかった。
 だが、時折、彼の技が鋭く映える瞬間がある。
 更に、体調不良で数日休んだ後には、父親と同じバレエを踊り、イギリスへの留学生に選ばれる。
 コーチは是也を父親に会わせようと、父親の住む山奥の別荘に向かうのだが…」

・高港基資「不用少女」
「山間の町の小学校。
 瑠依の家は母子家庭で、タチの悪い男が転がり込んでからは、彼女は虐待を受けるようになる。
 更に、その家庭環境故に、学校では三人の男子から陰湿ないじめを受ける。
 家にも学校にも居場所がなく、彼女はよく茂みの中の空き地に行き、そこの樹の下で一人で泣いていた。
 片山という少年は彼女が心配で、彼女に食べ物をあげたり、慰めたりしていたが、自分もいじめられるのが怖く、彼女のいじめを止める勇気はなかった。
 ある日、少年がその空き地に行くと、瑠依は腹から血を流して、うずくまっている。
 話しを聞くと、運動会で彼女がゼッケンを付けたないことに母親が腹を立て、彼女の腹にゼッケンを縫い付けたのであった。
 あまりにひどい出来事に、彼は警察に行こうと勧めるが、瑠依は「もういいの」と断る。
 その日から、彼女をいじめていた人物が次々と行方不明になり…」

・高港基資「水に溶けた子供」
「井上は妻の連れ子を躾と称して洋式便所で溺死させる。
 しかし、裁判では全て妻の罪となり、彼が罪に問われることはなかった。
 ところが、虐待死させた子供の霊が水のある所に現れ、彼を狙う。
 彼は水のある所には近寄らないようにするが…」

・油豆「罠」
「夜のマンション。
 男性が心霊もののDVDを観ていると、ドアのあたりで物音がする。
 覗き穴で外を見ると、ドアの前の床に女性が倒れいている。
 慌ててドアを開けるも、そこには誰もいない。
 気のせいと思いつつも、気持ちが悪く、その夜はもう寝ることにするのだが…」

・しがみ吾郎「Fが丘パークタウン」
「宅配ピザ屋『ピザ・オット』。
 戸田は新人の配達人だが、町のことなら隅から隅まで詳しかった。
 ある夕方、Fが丘パークタウンへの配達の電話があり、皆、顔色を変える。
 戸田は皆の心配をよそに配達を引き受け、Fが丘パークタウンに向かう。
 目的の家を目前にした時、あたりには霧が出始めて…」

・稲垣みさお「鬱の家」
「稲垣みさお先生の旦那さん、ヒイト氏の半生について描いたもの」

 高港基資先生の「曾々祖父」は実に不思議な話で、余韻のあるラストが素晴らしい。
 同じ作者の「塚田のおとん」は一応はハート・ウォーミングな内容なのですが、妙なリアリティがあって、しみじみと不気味です。
 ボケ老人の幽霊…これからの超高齢化社会ではもっと身近な存在になる…かも。

2023年4月24・26日 ページ作成・執筆

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