高港基資・他「恐怖体験 怨嗟の声」(2012年9月6日初版発行)

 収録作品

・高港基資「あやの」
「サラリーマンの男性が行きつけの文具店で買い物をする。
 ふと、試し書きのメモ帳を見ると、相合傘が落書きされており、右には「あやの」と書かれていた。
 彼は戯れに自分の名前をその左側に書き込む。
 以来、彼は何者かの視線を感じるようになる。
 それは白い布で包まれた骨壺を両手で持つ女性の幽霊であった。
 息子の大樹はその幽霊が「あやの」であることを知る。
 「あやのの祟り」とは…?」

・高港基資「安い家」
「五百万円という破格の値段でマイホームを手に入れた夫婦。
 喜びいっぱいで引越しするが、その夜、強風で家がガタガタ揺れて眠れない。
 だが、翌日、昨夜は風なんか吹いていなかったと近所の人から言われる。
 次の夜も同じで、妻は「たくさんの人がなんか叫びながら家を揺さぶっている気がする」と話す。
 翌日、妻は、大学の後輩で、右目に眼帯をしている鳥谷という青年を家に呼ぶ。
 彼は本物の霊能者というのだが…」

・高港基資「盂蘭盆会」
「お盆。
 ヒロの家にはご先祖様の霊がたむろしている。
 この家で霊能力があるのはヒロと祖母だけだが、祖母は今、病院で寝たきりになっていた。
 霊たちの中に一人だけ外国人の青年がいて、どう考えても、うちの血筋ではない。
 本来は見て見ぬふりをすべきだが、青年の霊があまりに寂しそうで、ヒロは妙に気になる。
 ある日、青年の霊は田んぼを眺めて、嬉しそうにしているので、ヒロは彼に話しかける。
 テレパシーで意思疎通ができ、青年の「キレイダ」という感情がヒロに伝わって来る。
 ヒロは彼が何者か突き止めようとするも、彼の記憶は失われ、手掛かりは彼の「ワラッテ」という思いのみ。
 彼がヒロ達の笑顔を見たがる理由とは…?」

・高港基資「灰郎の肖像」
「多野という老人が散歩をしていると、どこかで見たような少年を目にする。
 記憶をたぐると、三十年前に、映画の裏方をしていた時の記憶が甦る。
 昼、彼は、小菅灰郎という子役の少年と一緒によく昼食をとっていた。
 ある時、灰郎はナイフを自分の二の腕に突き刺すが、傷が一瞬で消える「手品」を見せ、多野に深い印象を残す。
 多野はその少年の家に行き、少年の家族に会おうとする。
 今、家には少年だけで、多野は家の中でコーヒーを御馳走になる。
 だが、そのコーヒーには眠り薬が仕込まれていた。
 少年は自分が小菅灰郎本人であると明かし、自分の不死の秘密を話す。
 どうにか灰郎の家から逃げ出した多野は長らく空家にしていた生家に身を潜めるのだが…」

・高港基資「アットホーム」
「深夜、サラリーマンの男性は若い女性を轢いてしまう。
 近くのバス停のベンチに女性を寝かせ、公衆電話で救急車を呼んだ後、その場から逃走。
 翌日、彼は新聞でその女性の死を知る。
 以来、彼女の霊が彼の前に現れるが、彼は家族を理由に自首を拒む。
 彼女の霊の標的は彼の家族に移り…」

・高港基資「愛母」
「ある母子家庭のヘルパーとして働くことになった青年。
 ヘルパーと言っても、彼の役割は子供の「お受験係」であった。
 青年は、美大の教授の母親から分刻みのスケジュールを渡され、それに従って、五歳の知哉の面倒を見る。
 午前四時に起き、塾に行くまで勉強、二時に塾から帰ってからは午後六時に就寝するまで、またひたすら勉強であった。
 でも、知哉は文句を言わず、課題をこなし、その健気な姿が逆に痛々しい。
 ある日、青年は予定より勉強が先に進んだので、知哉に読書をさせる。
 そこにこっそりと母親が帰ってきて…」

・油豆「お地蔵さん」
「ある女性がファミリーレストランで恋人の潮と会う。
 彼はすっかり憔悴していた。
 彼の話によると、彼は、悪友の七松に心霊スポットに連れていかれたという。
 以来、彼は「お地蔵さん」に絶えずつきまとわられているのだが…」

・しがみ吾郎「浮いてるんです」
「作者が体験したり、聞いたりした「浮きネタ」(幽霊等が浮かんでいる話し)を幾つかご紹介」

・稲垣みさお「鬱の家」
「稲垣みさお先生の一番の親友、みきやん。
 彼女は元モデルで、夫と共に東京に住んでいた。
 彼女は非常に複雑な家庭環境で育ち、常に死ぬことが目標であった。
 首吊り、飛び降り、リストカット、睡眠薬…でも、何故か助かってしまう。
 遂に、彼女は精神科に入院するのだが…」

 高港基資先生「あやの」、油豆「お地蔵さん」等、良作が多いのですが、一番インパクトがあるのは稲垣みさお先生「鬱の家」。
 これに出てくる自殺志願者の女性のエピソードは、のほほんと生きている私のような人間にとっては別次元の話で、いろいろと勉強になりました。

2023年3月31日/4月1・11日 ページ作成・執筆

コンビニ本・リストに戻る

メインページに戻る