空路・千之ナイフ・野口千里・呪みちる「心霊怪奇伝説スペシャル」(2007年12月10日第1刷発行)

 収録作品

・呪みちる「鬼貫きの針」
「キャンプの前日、山田少年は駅前の金物屋で十徳ナイフを購入する。
 その十徳ナイフには十一番目の道具があり、それは奇妙に曲がった針であった。
 少年が訝しがっていると、父親がそれは「鬼貫きの針」だと言う。
 父親は、今も深い山には人食い鬼が棲んでおり、鬼と出会った時にはこの針で身を守るよう、彼に使用法を教える。
 キャンプ当日、少年達の班は山で迷ってしまう。
 どこを行っても堂々巡りで、しかも、何の動物かわからない、三本足の足跡がある。
 そんな時、少年達を捜して、谷川先生が現れるのだが…」

・千之ナイフ「水の底から」
「夏、こずえは親友の美樹からバカンスに誘われる。
 美樹が小学校の頃、お世話になった家庭教師の礼子は、山中の川べりに別荘を持っており、誘われたというのだ。
 礼子の車に乗り、こずえと美樹は別荘へと向かう。
 だが、買い出しに行った礼子から、途中で事故に遭い、その夜は帰ってこれないという連絡を受ける。
 その夜、こずえが笑い声で目を覚ますと、別荘の裏手の川で子供達が水遊びをしていた。
 こずえは美樹を起こすが、子供達の姿はない。
 翌日、二人が水着で川に入ると…」

・空路「闇の中の目」
「流依は、兄の涼と二人暮らし。
 彼はオウムだけを友達にして、家に閉じこもっていた。
 それには理由があり、彼には霊を視る能力、そして、人にその霊を見せる力があった。
 彼の前に、連続放火事件の犠牲者の霊が次々と現れるのだが…」

・野口千里「老化症」
「義母と同居することとなり、嘆く久子。
 だが、ある朝、彼女が目覚めると、老婆になっていた。
 医者に診せると、これは最近、急増している、原因不明の奇病、メルモ病で、治療法はまだ見つかっていないという。
 老婆となった久子は身体の不自由さを痛感させられ、様々な屈辱を味わう。
 だが、そんな彼女を親身になって世話してくれたのが義母であった。
 メルモ病の正体とは…?」

・野口千里「被顔花」
「後ろ姿だけはいい娘。
 夜道、彼女は、顔を布で隠した女性から、顔をもっと美しい顔に交換できると、夢見館という店を紹介される。
 彼女が夢見館を訪れると、そこの若い主人は彼女に「被顔花」というものを見せる。
 それは美しい顔をした花で、初めての方は無料サービスと言われ、アパートに持ち帰る。
 娘が花を見ていると、花が急に彼女の顔に吸いついて、覆い込む。
 驚いた娘が鏡を見ると、彼女の顔は花のように美しい顔になっていた…」

・千之ナイフ「旧校舎」
「今は使われていない旧校舎。
 夕暮れ時、その廊下に小さな穴が時々開き、近付く者を死者の国に引きずり込むという噂があった。
 新聞部の八木薫は、三組の沙川に取材を申し込み、二人で旧校舎に向かう。
 沙川は、旧校舎で幽霊を見ていた。
 沙川は、幽霊は、旧校舎で行方不明になった自分の親友、木島路子だと薫に話す。
 そして、彼女は、路子と共に旧校舎を探索した話を始める…」

・呪みちる「噛む人魂」
「何かしら問題を持つ少年少女達が参加する、鬼岳での自然学習のキャンプ。
 生活班は四人で構成され、クールな不登校児、西尾ゆき子の班は、帰国子女の山田クロエとダフネ姉妹。
 それと、班長の、ボランティア活動が受験に有利ということで参加した、進学校でクールな杉田道子
 もちろん、この四人でうまく行くはずがなく、事あるごとに杉田と山田姉妹は衝突、ゆき子は傍観者に徹する。
 ある夜、とある事情から、四人は、こっそりキャンプを脱け出して、水晶の採れる谷へ探検に行く。
 立ち入り禁止の道に入り、四人は手をつないで、谷底に降りようとするが、奇妙な光を浴び、転落。
 気が付くと、全く知らない場所にいた。
 四人は地図を頼りにキャンプ場に向かうが、どうしてもキャンプ場に辿り着けず、さまよい続けることとなる…」

・空路「霊視少年真央」
「横断歩道で、自分が交通事故死するシーンを何度も繰り返す、少年の霊。
 彼に自分を死を気付かすために、真央は、友人の姉妹の協力のもとに、夜の横断歩道で彼に説得しようと試みる…」

・野口千里「皮捲り」
「佐伯日奈子は、亭主がリストラされ、貧乏暮らしにうんざり。
 ある夜、亭主と喧嘩をして、アパートを出た時、夜道で一万円札を拾う。
 だが、同時に、一万円札を、奇妙な老婆が手にしていた。
 日奈子は万札を老婆から奪うと、老婆は「金なんか何の意味もない」云々と言い残し、いつの間にか姿を消す。
 部屋に戻ると、日奈子は、自分の皮膚が一万札に変化していることに気付く。
 痛みを我慢して、それを引っ剥がすと、それは本物の紙幣であり、また、紙幣は幾らでも彼女の身体に浮き出てくる。
 片端からそれを剥がして、彼女は大金を手に入れるのだが…」

・千之ナイフ「闇の頁」
「内気な少女、毬乃は、図書館で本の間から日記帳を見つける。
 それは「S・Y」というイニシャルの青年の日記であり、返事の書き込みを希望していた。
 興味を持った毬乃は日記に返事を書いて、図書館の棚に戻し、交換日記が始まる。
 だが、以来、彼女をいじめたり、傷つけたりした人物が不審死を遂げていく。
 図書室に伝わる「呪いの日記帳」とは…?」

・空路「望々村奇譚」
「望々村に迷い込んだ少女、夕美。
 彼女は祖母を探していた。
 満月の夜、巨大な木の祠で、夕美は村の長の老婆に、自分の祖母について語る…」

・「復讐の人面疽」(「オール怪談」1998年・No11)
「父親は事業の失敗で自殺、母親は水商売、そんな貧しい家庭ののり子。
 彼女がゴミ捨て場で遊んでいた時、ケイという妖精の子を見つける。
 のり子はケイと毎日楽しく過ごすが、ある日、風間丈という奇妙な男と出会う。
 彼は、ケイを、危険な小人型宇宙人と呼び、探していた。
 彼から逃げる際、のり子は転んで膝を擦りむく。
 帰宅後、その傷をケイが嘗めると、以来、膝にできものができ、それがどんどん広がっていく。
 妖精の正体とは…?
 そして、妖精を探す風間丈という男との関係は…?」

・野口千里「ストレス鬼譚」
「育児にテンパりまくりの若い母親。
 散々ストレスがたまったせいか、鬼の幻覚が現れるようになる。
 いくら幻覚とは言え、鬼に囲まれていると、余計にストレスがたまり、そのせいで、育児も上手くいかず、またストレスがたまるの悪循環。
 見かねた亭主は、義母を呼び、妻を子育てのストレスから解放しようとするのだが…」

 空路先生、千之ナイフ先生、野口千里先生、呪みちる先生(五十音順)という、そのスジでの大ベテランの作品が収められた、素晴らしい短編集です。
 奇跡的なことに、一つも外れがありませんが、個人的に、プッシュしたいのが、野口千里先生。(そのスジでは、評価の高い漫画家さんです。)
 「オール怪談」(蒼馬社)で、奇想の炸裂した、上質な作品を描いていた、才能溢れる御人であるにも関わらず、作品の発表の場に恵まれず、今現在、実話怪談等のコンビニ本で仕事をしているようです。
 もしも、野口先生が新たな作品を発表したいという意欲があるのであれば、個人的には、大いに応援したいところです。
 そのためには、まず、過去の作品が再評価される必要があると思いますので、このような駄文でも、再評価につながれば、と祈っております。
 ちなみに、個人的なベストは「ストレス鬼譚」。この突拍子もないユーモア感覚、ステキです。

2018年10月24・25日 ページ作成・執筆

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