犬木加奈子・御茶漬海苔・関よしみ「レジェンド・オブ・ホラー」(2016年7月13日第1刷発行)

 収録作品

・関よしみ「ミラクル・カプセル」
「渡辺なごみは物忘れの激しい女子中学生。
 自分の記憶力の弱さにコンプレックスを抱く、なごみは、保健の豊田先生から「ミラクル・カプセル」の噂を聞く。
 「ミラクル・カプセル」とは、記憶力を亢進したり、イヤなことを忘れさせたりできる薬らしいが、違法サイトである故に、なかなかヒットしないと言う。
 なごみは「夢の薬」とスマホで探してみるものの、掴まされたのはバッタもの。
 意気消沈しているところに、豊田先生がなごみの家を訪ねてくる。
 彼女は、絶対に口外しないことと定期的に状況を報告することを条件に、なごみに「ミラクル・カプセル」を手渡す。
 なごみがミラクル・カプセルを飲むと、一目見て、あらゆることが脳裏に焼き付く。
 片端から参考書や辞書を暗記して、翌日のテストに臨むのだが…」

・勝川克志「関よしみさんのこと」

・御茶漬海苔「地下の部屋」
「心霊部の美麗と菊子は、ある夜、学園の地下の部屋を調べに行く。
 その部屋には、巨大なガラスのカプセルがあった。
 菊子がそのカプセルに触れると、彼女の姿は見る見るカプセルの中に吸い込まれてしまう。
 カプセルは床下に消え、美麗が床を調べていると、後藤という女子生徒が様子を見に来る。
 床下へ続く階段を発見した二人が地下に降りると、先程のカプセルがそこにあった。
 うっかりカプセルに触れた後藤もカプセルの中に吸い込まれ、美麗が途方に暮れていると、カプセルの中から刃傷だらけの女子高生と菊子が姿を現わす…」

・木村直巳「賛・御茶漬海苔」

・犬木加奈子「光あれ」
「光と影にまつわるイメージの連鎖。
〜影ふみあそび〜ピーターパン〜恋する影〜そして影だけが残った〜シャドーマン〜月の影〜マッチ売りの少女〜最後の光〜」

・三浦みつる「ホラーじゃないホラー漫画家・犬木加奈子さんへ」
・門倉紫麻「犬木加奈子はホラー漫画界の「王女」である」
・あとがき

 犬木加奈子先生の漫画家再開の際に、クラウドファンディングで資金が募られ、予想以上に成功した「レジェンド・オブ・ホラー」。(三百万円以上!!)
 まさしくホラー漫画の伝説である、犬木加奈子先生、御茶漬海苔先生、関よしみ先生の力作を読むことのできる一冊です。
 私にとっては、非常に思い入れのある一冊なので、うだうだと昔話することをお許しください。
 2015年9月、発表する当てもなく約二年も作り続けていたサイト(「怪奇マンガのあなぐら」)を、ツイッターで怪奇マンガを紹介している方々の刺激を受け、ようやく公開に踏み切りました。
 その当時、私にとって一番の心配事が「著作権」問題。
 いろいろと本で調べたり、出版社のサイトを覗いたりしましたが、イマイチはっきりせず、こうなったら、漫画家さん本人に確認を取らなきゃならないのか…とヤケのヤンパチになりました。
 とりあえず、お気に入りの漫画家さんについてあれこれネットで調べていた時に、この「レジェンド・オブ・ホラー」を知ったのです。
 これにサポートしたことが縁となり、様々な出会いに恵まれ、様々な体験をさせていただくことになりました。
 引きこもりがちで、他人と接点をさほど持たない私にとって、まさしく貴重な出会いであったと、心から感謝をしております。(注1)

 作品に関しては、お気に入りは関よしみ先生の「ミラクル・カプセル」です。
 記憶力の話というと、ホルヘ・ルイス・ボルヘス「記憶の人フネス」や荒俣宏「偉大なる記憶力の持ち主」(「パラノイア創造史」(ちくま文庫)収録)を読んでおり(注2)、また、「勉強し過ぎて頭が破裂」という内容は犬木加奈子先生や佐伯かよの先生が(記憶に間違いがなければ)描いていたはずなので、どんな出来になるのか、ちと心配しておりました。
 ところが、蓋を開けると、「こう来るか〜」と予想外のオチで、素直に感心しました。なかなかの出来だと思います。
 御茶漬海苔先生の「地下の部屋」は暗鬱な作品。
 この荒んだ雰囲気は捨てがたいですが、ストーリーが薄味過ぎるように思います。
 犬木加奈子先生の「光あれ」は、系統だった筋立てがあるというわけでなく、「影」に関するイメージの連続と形容していいでしょうか。
 その奔放かつ豊潤なイメージは非常に味わい深く、これはこれであり、だと思います。(私はこの作品、好きです。)
 個人的に、感銘を受けたのは、ラスト付近が、川島のりかず先生の「私の影は殺人鬼」になるところ。
 もしかして、読んだことあります?(「犬木加奈子 meets 川島のりかず!!」…一人で勝手に血沸き踊ってる…。)

・注1
 あと、リターンでささいな不手際があった際、情けないことに、私はひどくテンパってしまい、犬木加奈子先生には多大なるご迷惑をおかけしてしまいました。
 この文章を目にするかどうかは定かではありませんが、この場を借りて、お詫びしておきます。
 あの時は、不必要に騒ぎ立てて、申し訳ありませんでした。
 あと、遅ればせながらではありますが、ほぼ一人であの企画を支えたことに対し、お疲れさまでした。

・注2
 後に、ロバート・シルヴァーバーグ「記憶の呪縛」(「ミュータント傑作選」(講談社文庫)収録)も読みました。
 ラストがハッピー・エンドなのは、やはりポジティブなアメリカ人だから?

2017年11月24日 ページ作成・執筆

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