峠哲兵「もぐら少年/悪魔の椅子」(2020年8月15日発行)
収録作品
・「もぐら少年」(壽出版社/1950年1月15日発行)
「野球少年三人組に襲われ、バットでぶん殴られた、もぐら。
もぐらは、復讐に燃え、人間の男の子へと変身する。
だが、復讐を開始する前に、ひでお(?/作中では、ひでちゃん)と出会う。
ひでおの親切心に、もぐら少年の復讐心は挫けそうになり、また、ひでおが野球少年と知り合いということがわかり、もぐら少年はひでおのもとを去る。
もぐら少年は野球少年達への復讐を開始し、彼らは警察に相談。
警察は捜索隊を組織し、また、もぐら少年を研究しようとする科学者達ももぐら少年を追う。
ひでおはもぐら少年を守ろうとするが、追われるうちに、もぐら少年は人間への敵意を深めていく…」
・「悪魔の椅子」(娯楽社/1948年9月25日発行)
「深井は、大宝庫の地図を持っている青川を殺したいと考えていた。
そんな彼の前に、殺人クラブのメンバーが現れ、十万円で彼の依頼を受けると言う。
深井は殺人クラブの本拠地に案内されるが、首領の渦巻により拉致される。
渦巻は、大宝庫の地図を狙っていたのであった。
渦巻は深井に変装し、青川邸を訪れ、青川を山へと誘い出す。
渦巻は青山から地図を奪おうとするが、青川の正体は、私立探偵の金助であった。
格闘の末、渦巻は崖から落下。
渦巻は、重傷を負いつつも、青川を誘拐する。
更に、刑事部長の園田に化け、金助達をだまして、殺人クラブの本拠地へと連れ込む。
「殺人機」にかけられた金助達の運命は…?」
峠哲兵先生は、いなば哲先生の以前のペンネーム(?)です。
楳図かずお先生がファンだったことで知られ、漫画界のミッシング・リンクと言うべき御一人なのではないでしょうか?
赤本といった戦後の漫画本については、全くと言っていいほど、知識がありませんので、実のある話はできませんが、この二作品を読むだけで、どれだけ才能のある方だったのかがわかります。
特に、怪作「もぐら少年」は必読!!
殺伐とした内容のわりに恐ろしく牧歌的で、この落差が何だかクセになりそうです。
そして、迎えるラストはカタルシス皆無で、何と形容していいかわからない読後感がひしひしと押し寄せてきます。
併録の「悪魔の椅子」は探偵もので、奇抜さは薄いですが、躍動感に溢れ、ぐいぐい読ませる手腕はさすがです。
なお、付録ペーパーに、川勝徳重氏と辻中雄一郎氏による解説(川勝氏の解説はアツい!!)、また、峠哲兵扉絵コレクションが掲載されております。
2021年1月14日 ページ作成・執筆