「怪奇貸本収蔵館第三号 竹内寛行・編」(2017年5月3日初版発行)
・竹内八郎・名義「血痕」
「終戦後、伊勢湾のとある町で、老婆が宝くじを売って、生計を立てていた。
彼女は夫と息子を亡くし、町外れにある、夫の残した家に住んでいた。
その二階には源吉と由美子の夫婦が間借りしていたが、源吉は戦争ですっかり人が変わり、ろくに働きもせず、博打に明け暮れていた。
台風の夜、源吉は宝くじを売った金に目を付け、老婆を襲う。
老婆は左腕に噛みついて抵抗するも、喉笛にナイフを突き立てられて殺されてしまう。
源吉は金を懐に妻と一緒に家を出ると、ちょうど津波が来るところで、老婆の死体も全て流され、完全犯罪となる。
源吉は老婆から奪った金で宿屋に泊まり、相変わらず、博打を続けていたが、一か月後、彼が老婆から盗んだ宝くじが一等賞に当たる。
彼は賞金の五百万円で立派な屋敷を買い求め、更に、妻の由美子が可愛い女の子を出産する。
彼は自分の悪運の強さを誇るが、それと同時に、左腕の傷が再び痛み始める。
ある日、由美子の母親が子守りの老婆を連れてくるのだが…」
・なるみ寛・名義「吸血婆」(水木しげる「河童の三平G」)
「ひなびたお寺。
そこで下働きをするお虎という老婆は天井裏で鬼吉という奇怪な子供を育てていた。
鬼吉には墓場の死体を食べさせていたが、彼は肉が固いと不平をこぼす。
ある夜、和尚が天井裏のネズミを殺そうと言い出したので、お虎は和尚の喉元に食いつき殺害。
和尚の手足をもぎ、鬼吉に与えると、今度は大層ご満悦。
お寺の坊主に言われて、お虎は和尚の弟のもとを訪ねるのだが…」
「血痕」は竹内寛行の最高傑作と言われており、「因果応報な怪奇譚」(by 成瀬正祐氏)は確かに完成度は高いです。
個人的には、戦後の荒廃した人心がやけにリアルに感じられました。
また、女性キャラの凛とした雰囲気も作品に張りを持たせており、なかなかステキです。
併録の「吸血婆」は…私にはちょっと面白さが理解しかねる作品でした。
こういうのが好きでたまらない方もいるとは思いますが、私の好みでないです、あしからず…。
付録ペーパーには妖奇七郎氏「鬼太郎中興の祖としての竹内寛行 そして会う話」、成瀬正祐氏「ハレンチになれなかった男」、辻中雄二郎氏「竹内寛行『血痕』」が収録されております。
そのスジでは大物中の大物である三氏がアツく語っており、非常に勉強になります。
・備考
付録ペーパーに折れあり。
2025年5月26・27日 ページ作成・執筆