「怪奇貸本収蔵館第六号 大村功/カワダマサキ・編」(2020年8月15日初版発行)

・大村功(aka 高田修)「呪いの小指」(1961年「河童の三平 第三集」(兎月書房)収録)
「明治十年。
 大和銀行の次男坊、黒田八郎は、米問屋の越後屋の娘、花江に夢中であった。
 熱烈な恋文を書き、証拠を見せるよう言われると、左手の小指を躊躇なく切り落とすという熱の入れよう。
 越後屋の使用人、伝吉は、八郎に花江との取次ぎを頼まれるものの、八郎の醜い容貌故に、話が壊れるのではないかと危惧する。
 そこで、貧乏官吏だが、イケメンの荻原新三郎に頼み、花江に彼を八郎と思い込ませるのに成功。
 以来、八郎と花江の間で毎晩手紙が交わされるようになる。
 しかし、伝吉は、相手の家が借金で困っていると、八郎と花江から大金をだまし取って、逐電。
 花江は恋煩いで寝付くも、新三郎を偶然に見つけ、ことの真相を知る。
 だが、彼女の想いは本物で、二人は結婚することとなる。
 納得いかないのが八郎で、結婚式の日に刃物を持って乱入するが、二階から放り投げられた挙句、袋叩きにあい、遂には死刑になってしまう。
 そして、翌年、新三郎と花江の間に男の子が産まれる。
 だが、その男の子の左手には小指がなかった…」

・カワダマサキ(aka 宇田川マサオ)「夢魔 ある狂人の話より」(1962年/竹内寛行」墓場鬼太郎 十八巻」併録)
「田代達也は、英国に留学する為、乗った船が印度洋にて沈没する。
 生き残ったのは彼を含めて、たったの八人。
 島を見つけ、上陸するが、食人種のような奇怪なものに襲われる。
 とりあえず、灯台へと避難すると、そこは荒れ果て、屋上には骸骨が横たわっていた。
 灯台でも、奇怪なものに襲われるが、奴らは神出鬼没で、現れたと思えば消えてしまう。
 彼らは次々とその餌食となっていき…」

 貸本マニアには有名な大村功先生とカワダマサキ先生の怪奇短編のカップリングで復刻した本です。
 両先生については、付録ペーパーにて妖奇七郎氏と成瀬正祐氏が詳しい解説をしておりますので、興味ある方は是非お読みください。(大変、勉強になりました!)
 また、大まん祭での販売分には「お笑い貸本収蔵館 宇田川雅男・編 火星人がやってきた」という小冊子が付いていたようです。

 なお、本編の内容については、カワダマサキ「夢魔」が個人的に大ヒット。
 タイトル通りに「バッド・トリップ」な内容で、どこか温かみのある絵柄に反して、エゲツない描写が満載です。
 カワダマサキ先生にはもっと怪奇ものを描いて欲しかったものです。

2020年8月29日 ページ作成・執筆

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