岸本修「赤い沼の火」(1994年4月4日発行)
収録作品
・「赤い沼の火」(1959年「りぼん」夏増刊・別冊)
「ルミは両親を亡くした後、おじに世話され、兄と共に、山中の屋敷に住む。
屋敷の近くに、おじは薬の工場を経営し、兄はそこの工場長であった。
そして、工場の裏には沼があり、劇薬が流れ込んだため、沼の生き物は死滅し、それは不気味な様相を呈していた。
ある雨の夜、兄の運転する車に乗っていたルミは、沼の上に赤い火が燃えるのを目にする。
沼に車を近づけると、車の前に若い女性がさまよい出て、はねてしまう。
兄は彼女を家へ連れ帰り、医者に診せると、かなり衰弱しているとのこと。
また、娘は天涯孤独の身の上ということで、兄妹の家で療養することになる。
娘の名は美川たまきといい、明るい娘で、身体が回復してからは、女中の手伝いもするようになる。
ただ一つ、彼女の変わっているところは「刺身」しか口にしないことであった。
ある日、「たくわんおしょう」と名乗る坊さんが訪れ、家に魔物に憑りついていると告げる。
兄は坊さんからお札を貰うが、たまきに乞われ、そのお札を燃やしてしまう。
以来、たまきの周辺でおかしなことが起こり始める。
不審に思った兄は、食事の献立から刺身を外すのであったが…。
たまきの正体とは…?」
・「望遠鏡はしっていた!?」(1959年「少女ブック」三月号別冊)
「逃走中の強盗殺人犯、松本清太郎。
彼は、冬の間、別荘を管理する老人を殺害し、その老人になり代わる。
だが、その別荘の近くにあった、別の別荘に住む少女が、双眼鏡で殺人現場を目撃していた。
少女は、別荘の管理人をしている老人と共に暮らしており、清太郎は彼女の命を狙う。
ある雨の日、清太郎は、別荘から麓に向かう途中の少女を刺殺し、その死体を埋める。
これで一安心と安堵する清太郎であったが、一週間経った雨の夜、奇怪なことが彼の周りで起こる。
少女の幽霊かと訝み、彼は死体を確かめるために、少女を埋めたところを掘り返すのだが…」
・「生きかえったおばさま」(1959年「少女ブック」一月号増刊)
「初冬、おばの葬式のために別荘を訪れた木暮たまみ。
おばの三名部久美は美しく優しい人であったが、あやまって別荘裏の滝に落ちて、急死した。
おばは亡くなったおじから莫大な遺産を受け継いでおり、おばの死により、この遺産はおじの弟、三名部次郎・庸子夫婦のもととなる。
大好きだったおばの別荘から離れがたく、たまみはずるずると滞在期間を伸ばしてしまう。
八日過ぎた夜、女中の菊子が寝室で刺殺体となって発見される。
凶器の短剣はおばの棺に入れたものであったが、地下廟に確認に行くと、棺の中から短剣が消えていた。
たまみは警察により捜査が終わるまで、別荘にいなければならなくなる。
そんな中、殺された菊子に代わり、あけのという娘が職安から新しい女中として派遣されてくる。
あけのには不思議な能力があり、こちらが考えていることをわかっていたり、未来を予知したりする。
また、あけのは亡くなった久美おばに似ており、三名部次郎・庸子夫婦は彼女を気味悪く思う。
そして、嵐の夜、別荘で起きる、恐ろしい出来事の数々…。
あけのによって明かされる、久美おばの死の真相とは…?」
岸本修先生について私はこの作品集以外、全く知りません。
巻末に菊地秀行先生による解説があり、それによると岸本修先生は「私の知る限り、極めて初期から、西洋式怪奇漫画を志向していた人物」とのことです。
海外の「スリラー・サスペンス・ホラー(映画・小説等)」の影響はかなり強いようで、後に大発展を遂げる怪奇マンガの原型と言っていい作品ではないでしょうか?
まあ、この時代の怪奇マンガに対する私の知識は微弱なものでして、より詳しい方の検証が待たれるばかりであります。
個人的には、見開きや大ゴマでショック描写(正体を現した化け物、埋めた死体、等)を見せつける「直接的」なところに感銘を受けました。
菊地秀行先生を含めた当時のチビっ子達は大いに震え上がった模様です。
2017年10月11日 ページ作成・執筆