亜月亮「深・都市伝説@」(2013年8月17日第1刷発行)
華嶋れいこ(28歳)は大手出版社の編集者(彼氏いない歴は三年)。
彼女はバーであったゲイの青年、ハルとあるきっかけで同居することとなる。
彼女が配属されたマイナー・カルト雑誌「SUR」編集部では体当たり企画「深・都市伝説」を担当することとなり、二人は突撃取材を敢行するのだが…。
・「ドッペルゲンガー」(「JOURすてきな主婦たち」2013年5月号掲載)
「れいことハルは読者体験談に応募してきた女子高生二人を取材する。
彼女たちはある高校の二年生の、大野しずか(おとなしめ)と南野麻子(派手)。
応募したのは麻子だが、実際に恐怖体験をしたのはしずかで、ヒデアキという青年と付き合い始めてから、奇妙なことが度々起きるようになったという。
まず、彼氏からもらったプレゼントやペアグッズがなくなったり壊されたりし、最近は夜中、ベッドの足元に誰かが立つようになる。
顔は真っ暗で見えないものの、ギラギラ光る目で彼女を睨み、何かブツブツ呟き、しばらくして消えるらしい。
更に、しずかとヒデアキのツーショット写真には奇怪な黒い影が写り込んでいた。
麻子はこの黒い影はヒデアキの前の彼女の生霊ではないかと推測し、れいこにお祓いを頼む。
とりあえず、れいことハルはヒデアキの前の彼女を調べることにするのだが…。
しずかに付きまとう黒い影の正体は…?」
・「包帯女・前篇」(「JOURすてきな主婦たち」2013年6月号掲載)
「包帯女による連続通り魔事件。
包帯女は顔を包帯をグルグル巻きにした、トレンチコートを着た長身の女で、大きめのカミソリで女性を襲っていた。
ネットの噂では包帯女は整形依存症で、整形の失敗で醜くなり、きれいな女性を襲っているというが、本当のところはわからない。
副編集長の命令で、れいこはこれを取材することとなるが、そんな時、年の離れた妹のヒトミ(17歳?)がマンションを訪れる。
ヒトミは今、高校生で、美容整形を受けるため、千葉県から上京してきたのであった。
ただ、未成年が美容整形を受けるには保護者の同意が必要で、ヒトミはれいこに同意書のサインと押印を頼む。
ゲイと同居しているという弱味を握られ、れいこはひとまず、病院のカウンセリングに付き合うこととなる。
それは美容外科の内情を知る絶好のチャンスでもあり、翌日、れいこ・しずか・ハルは高月クリニックを訪れる。
院長はテレビにも出ているイケメンで、カウンセリングの最中、彼はれいこに興味津々であった。
一方、ハルは待合室で待たされるが、ふと看護婦たちの会話を耳にする。
包帯女はここの患者と関係があるようなのだが…」
・「包帯女・後篇」(「JOURすてきな主婦たち」2013年7月号掲載)
「包帯女は高月クリニックと何らかの関係があるらしい。
だが、どこか釈然としないところも多々あり、れいことハルはヒトミに内緒で高月クリニックを訪れる…」
・「誕生」(「JOURすてきな主婦たち」2012年12月号掲載)
「花島は中学校一年生を担当する女性教師。
彼女は病院に入院している西野佐穂の見舞いに行く。
西野佐穂は窓を拭いている最中、二階から転落し、足の骨にひびが入ったと言われていたが、実際は、クラスでいじめられ、二階から突き落とされたのであった。
それを知りつつも、花島は素知らぬ顔をして、佐穂に接しようとする。
当然、拒絶されるが、彼女は佐穂に「ひきこ」の面影を重ね合わせる。
「ひきこ」は彼女が小学校高学年の頃、クラスでいじめの標的になっていた少女で、中学校時代に自殺したと言われていた。
花島は自分が何故、あんな残酷なことをしたと後悔していると、看護婦が彼女を呼びに来る。
彼女が佐穂の病室に駆けつけると、クラスメートの本性を知った佐穂が窓から跳び下りようとしていた…」
華嶋れいこ・ハルの凸凹コンビが主人公の「深・都市伝説」はコメディ・タッチで、かなり面白いです。
どこかズレた登場人物のちぐはぐな会話はじわじわキマすよ。
また、「包帯女」で、すっぴんの顔と化粧の顔が違いすぎる描写に過去、接客業をしている時のことを思い出しました。
アルバイトの女の子はいつもお目目パッチリだったのに、突如、腫れぼったい顔になって、衝撃を受けたのですが、まあ、すっぴんってそんなもんですよね…。
男に産まれて良かったとしみじみ思います。
「誕生」はれいこ・ハルは出て来る前の作品で、かなりシリアスで重い内容です。
深く考えさせられるだけでなく、舞台が病院なので、じわじわと怖さが伝わってきます。
佳作ではないでしょうか?
2025年4月1日 ページ作成・執筆