曽祢まさこ「恐怖クラブ」(1996年4月1日第1刷発行)

「全寮制の私立女子校、聖・マグノリア学院。
 ある少女は、ふとある張り紙を目にする。
 それは「恐怖クラブ」の部員を募集するもので、「死ぬほど恐ろしい体験をした人」が「恐怖を語りあい、過去の悪夢から逃れる道をさがす手伝いをする」と書かれてあった。
 顧問は学院の院長であるマザー・マグノリア。
 少女は一晩考えて、クラブの指定する部屋を訪れる。
 厚いカーテンに閉ざされた暗い部屋には院長と、他に少女が二人。
 そして、院長に促され、三人の少女は「死ぬほど恐ろしい体験」を一人ずつ話し出す…

・「第一話 変身」(主婦と生活社「アップルミステリー」90年No.1)
「最初に話し始めたのは、松崎弓子。
 太った醜い容貌のため、小さい頃から、同じ年頃の子供達からいじめられるだけでなく、家族からもかまってもらえなかった。
 ある日、母親の冷たい一言に一念発起し、弓子はダイエットを始める。
 しかし、無理なダイエットが祟り、一年後には拒食症で入院。
 一年の療養を経て、弓子はスマートな身体と美しい容貌をようやく手に入れる。
 一から出直すため、遠く離れた高校に入り、楽しい日々を過ごす…つもりだったが、ある男が彼女の過去を知っていた。
 その男は昔、彼女をいじめたいた男の子で、自分と付き合わなければ、彼女の過去を皆にばらすと脅す。
 彼がいる限り、自分は過去から解放されないと思い悩んだ弓子は、彼を殺そうと考える…」

・「第二話 優しい恋人」(主婦と生活社「アップルミステリー」90年No.2)
「二番目の話者は、斉藤杏樹。
 彼女は、前の学校で、中等部一年の時、二歳年上の先輩、結城薫に告白される。
 薫は、杏樹に「最初見た時 妙になつかしい気がした」のだと言う。
 彼は、とても優しく、素敵なボーイフレンドで、彼女は楽しい日々を過ごす。
 しかし、ある日、高等部にいる薫を訪ねた際、ちょっぴり不良の大里俊を一目見るなり忘れられなくなる。
 大里俊とお近づきになろうとちょろちょろするものの、杏樹はさっぱり相手にされない。
 杏樹は胸の思いを薫に打ち明けるが、「杏樹のねうちがわからないやつなんか 早く忘れてしまえよ」と優しく諭されただけだった。
 それでも大里俊のことが思い切れないでいると、ある日突然、彼は事故死してしまう。
 悲嘆に暮れ、薫の胸の中で泣く杏樹。
 二人は元の鞘に納まったように見えたが…」

・「第三話 闇の捕囚」(主婦と生活社「アップルミステリー」90年No.2)
「最後に話すのは、片桐美輪。
 彼女は、とある地方の実業家のお嬢様。
 そんな彼女は、使用人夫婦の娘、えつ子と、年が同じこともあってか、姉妹のように仲良く育った。
 えつ子は頭が良く、頼りがいがあり、甘えん坊の美輪はいつもえつ子に頼りっ放し。
 高校も同じ女学校に通うようにして、美輪はえつ子を誇りに思っていた。
 ある日、えつ子と一緒に裏山に探索に行った美輪は、えつ子によって、穴に突き落とされる。
 その穴の中には、大量の食料と水、ラジオと懐中電灯があった。
 助けを求める美輪にえつ子は一言、「いい気味だわ」。
 そして、愛憎渦巻く幽閉生活が始まる…」

・「最終話 レクイエム」(主婦と生活社「アップルミステリー」90年No.3)
「少女達の話を聴き終えた学院長のマザー・マグノリア。
 マザーは少女達を救う為に、真実を見つめるよう助言する。
 彼女達の「真実」とは…」

・「恐怖クラブ」製作裏話

 面白いです。
 スーパーファミコン末期を飾った傑作『学校であった怖い話』を連想させる部分がありますが、それよりも前の作品です。
 注目すべきは「第三話 闇の捕囚」でしょう。
 よく練られておりまして、幽閉される者と幽閉した者との心の交流を描いた人間ドラマにもなっております。
 ただ、個人的には、この話を読むと、ジョン・ソール『暗い森の少女』を思い出してしまいます。
 私が注意力散漫な読者であることは認めますが、あんまりよくわからない話でありました。(特に、ラストはさっぱりわかりません…。)
 記憶に残っているのは、ただただ、子供への陰湿な虐待描写だけなのです。

平成27年6月7・8日 ページ作成・執筆

学研・リストに戻る

メインページに戻る