曽祢まさこ「琥珀色の夜」(1993年8月1日第1刷発行)
収録作品
・「黄泉路はるか…」(「LCミステリー'91年10月号」掲載)
「惰性で生きる人生に飽き飽きし、死を望み続ける女子高生のアキ。
しかし、独りで死ぬには、怖いし、寂しい…。
ある日、アキの友人、珠美が一緒に死んでいいと言ってくる。
いつも明るい珠美であったが、外見でそう振舞っているだけで、明るく装うのに疲れてしまったのだった。
二人は五日の間、好きなことや身辺の整理をして過ごす。
決行の当日、マンションの屋上できれいな夕陽を眺めた後、二人は手をつないで、飛び降りるが…」
・「琥珀色の夜」(「LCミステリー'91年11月号」掲載)
「百年も前に、良家の子女の育成のために建てられた、寄宿制の女学校、エセルベック女学院。
そこでは昔と変わらず、修道院のような厳しい規則に縛られた生活が送られてきた。
転入してきたばかりのエマ・ラッセルは、皆から「特別」扱いされているオードリィ・バーンズに興味を抱く。
オードリィは、両親のことなどは一切わからないが、寄付が桁違いで、一人部屋の「特別室」をあてがわれていた。
先生達の態度も違い、他の生徒ともなじまないので、いつも独りで過ごしていた。
オードリィと話をしたエマは、オードリィから彼女の部屋でお茶をするよう招待される。
その部屋は「特別室」と言われるだけあって、内装も家具類も豪華であった。
が、エマがその部屋に違和感を抱き、落ち着かず、早々に辞去する。
エマがその違和感の原因に気付いた時、オードリィの心の闇を深く深く覗き込むこととなる…」
・「海に還る」(「LCミステリー'92年10月号」掲載)
「海のそばの白い家に住む三人家族、母親と娘のリーザ、そして、弟のルカ。
リーザとルカの父親は船乗りで、いつも遠くの海を航海していた。
でも、二人は少しも寂しくなかった。
と言うのも、海は二人にとって親友で、海の妖精や波の海、人魚といつも遊び戯れていたのだった。
二人の父親が言うには、彼の家系は「海の民」を血をひき、決して海で溺れて死ぬことはないのだと言う。
しかし、ある日、二人の父親が嵐の夜に海に転落して、行方不明になったという連絡が入る…」
後書きによると、「なかよし」に昔、発表した「ファニートの海」という作品のリメイクとのことです。
それを抜きにしても、完成度の高い名品だと思います。
・「闇の左手」(「LCミステリー'93年2月号」掲載)
「暗闇の中から白い左手が伸びてきて、暗闇に引きずり込もうとする夢を見るようになった真帆。
家族も、友人達も皆、真帆のことを心から心配してくれて、真帆は白い手に負けるものかと決意を固める。
しかし、白い手に腕を掴まれた時、真帆は真実を悟るのだった…」
半世紀以上の歴史を持つ少女マンガの中で、「少女マンガの皮をかぶったヘビ〜な怪奇マンガ」の名品は幾多とあります。
その中でも、「少女マンガの皮をかぶった『真に』ヘビ〜な怪奇マンガ」は曽祢まさこ先生の作品にあるのではないかと私、思ってます。
この単行本でも、「海に還る」以外は、心に重い余韻を残す作品でして、人によっては鬱陶しく感じるかもしれません。
が、そこを、巻末の「おまけのページ」の、ドライでありながらポジティブな作品解説で中和しております。
なかなか心が和みます。
平成27年9月25日 ページ作成・執筆