川島のりかず「ちぎれた首を抱く女」(1986年9月6日/青135)
「美人で才女の美ハルは、化学実験の事故で顔半分の皮膚を失う。
ふさぎ込む彼女に女友達は、婚約者そっくりのロボットをプレゼントする。
戸惑いながらも、相手がロボットという気安さと寂しさから、美ハルはロボットとの生活を楽しむようになる。
しかし、美ハルの婚約者のトールが宇宙旅行から戻ってくる。
トールは美ハルの容貌を受け入れ、一緒になろうとするが、美ハルはトールのことを信じきれない。
常にロボットとの共同生活を強いられるトールは遂にロボットを破壊する。(椅子で殴った程度で、首がちぎれてます。)
美ハルはトールを修理するが、この時に、ロボットが人間に対して暴力を振るうことができるようプログラムを変更する。
その為、またもロボットを破壊しようとしたトールに反抗、美ハルは警察に追われる身となる。
ロボットと美ハルの逃避行の行末は…?」
恐らく、川島のりかず先生のヒバリ・ヒット・コミックにおける第十八作目と思います。
川島のりかず先生の作品は「SFミステリー」という肩書きがついておりますが、「SFミステリー」の中での、個人的な最高傑作です。(注1)
バリバリの近未来なのに、スラム街や見世物小屋があるのがひっかかるとは思いますが、「ブレードランナー」だって屋台があったので、あまり気にしないでください。
とにもかくにも、ラストが余りにもやりきれない。
本当にやりきれないよ、これ!!
しかも、よくよく考えてみると、実はこれ、川島のりかずには数少ない、恋愛ものなんです。(他には、「地獄花」くらいでしょうか…)
何でこういう方面の作品をもっと描かずに、どばどば殺人シーンを活写する方面に行ってしまったのか?…って、そりゃそっちの方が小学生のガキどもに受けたからでしょうがね…。
余談ですが、表紙の左の上側に伸びて、妙な形になっている、髪がとても気になります。恐らく、髪を振り乱している様子だとは思いますが、僕にはタマネギか球根にしか見えません。
う〜む、これを見ていたら、無性に「クックロビン音頭」が聴きたくなってきた…。
・注1
初期の頃はSFテイストの強い話がいくつかあります。
全体社会(「血塗られた処刑の島」「恐怖!!顔をとられた少女」)
宇宙人のもたらした謎の球体(「狂乱!!恐怖の都市へ」)
アンドロイド(「呪われた死体」)
宇宙人の子供たち(「化けもの赤ちゃん」)
超能力(「みんな死んじまえ」)
ただ、本格的な「SF」とも「ミステリー」とも口が裂けても言えないのが、苦しいところ…。
また、後期にさしかかるにつれ、人間の心理に重点を置いているので、「SFミステリー」というより、むしろ「サイコ・スリラー」になっております。
そして、転換期に当ったのが、この「ちぎれた首を抱く女」だと、(根拠はありませんが)考えております。
平成16年8月15日 もとになる文章執筆
平成27年1月13日 ページ作成・執筆