日野日出志「恐怖列車」(1976年7月15日発行/HC・54)
日野日出志「恐怖列車」(1985年5月16日発行/黄6)
日野日出志「地獄から来た恐怖列車」(1986年10月16日発行/青133)

 収録作品

・「恐怖列車」
「秋の連休を利用して、田舎の祖父のもとを訪れた秀一と、友人のユキとブーちゃん。
 帰りの列車が、トンネルに入った時、列車が激しく揺れ、停電が起こる。
 しばらくして、灯りが戻ると、彼らと同じ席にいた、黒づくめの服装の男性の姿を変え、その場にはカラスの羽が一つ残されていた。
 しかも、彼ら以外の乗客は皆、白目で涎を垂らし、様子がおかしい。
 電車から降り、安堵する秀一であったが、家の前で、例の黒づくめの男の姿を目にする。
 先刻と同じように、その場にカラスの羽が残されており、秀一が男のことを両親に話すと、両親の態度が一変。
 秀一が両親の態度を訝っていると、父親の喉に以前にはなかった傷が、また、母親の喉にホクロがあることに気付く。
 その夜、秀一は、両親が人の死体を庭に埋めるところを目撃する。
 現場を見られた両親は秀一を、秘密を漏らせば殺すと脅す。
 翌日、秀一がユキとブーちゃんに両親が殺人者であることを打ち明けると、二人とも秀一と同じ体験をしていた。
 三人はこのことを担任の先生に相談するが、実は先生は両親達とグルで、ブーちゃんは刺殺される。
 秀一とユキは建設中の建物に逃げ込むが、隣の建物に板を渡して、移る最中に、板を外され、ユキは転落死。
 運よく砂場に落ちた秀一が逃げ込んだ先は、夜の遊園地であった…」

・「竹藪地獄怨絵草子(たけやぶじごくうらみのえぞうし)」(「HC」のみ収録)
「昔、上州のあるところに、飢饉に苦しむ村があった。
 村人達は通りすがりの旅人を襲い、食料や金品を奪い、食いつなぐ。
 ある日、江戸から越後に向けて旅をしていた絵師の親子が村人達の犠牲となる。
 父子は惨殺され、母親はレイプされ、発狂。
 気のふれた母親は、夫と息子の死体を引きずり、竹藪の奥へと消える。
 後、村は平和を取り戻すが、狂女は竹藪の中の小屋で生き延びていた。
 彼女は、夫と息子の死体の前で、地獄絵を描き続ける。
 やがて、竹藪の中に魔が潜むという噂が村人達の間に立ち始める…」

・「狂人時代」(全てに共通して収録)
「怪奇と恐怖にとりつかれた漫画家、もしくは、正義と真実の人「ウルトラ漫」を自称する、日野日出志先生。
 その日野先生が、自身の秘密を、そして、出生の秘密を赤裸々に語る…?!」

・「奇病時代」(「HC」のみ収録)
「貧乏で、子だくさんの音楽家の一家。
 窮乏に耐えかね、一家心中をする前に、「最後の晩餐」を腹いっぱい詰め込むことにする。
 だが、食べ過ぎて、腹を壊した亭主が思わずもらすと、亀さん(チ○ポ)からは砂金が、尻の穴から紙幣が出てくる。
 その後も、順調に紙幣と砂金は出続け、一家は大金持ちになるが…」

・「或る剣豪の最期」(背表紙「HC」のみ収録)
「寛永年間、秋。
 旅の武芸者、室戸一平は、いずこかの山中に入ったという噂の剣豪、九鬼陣内を、ある農村で目にする。
 陣内は、あることを機に剣を捨て、今は一介の百姓の身であった。
 そして、今まで殺した人々の墓標を立て、そのそばに仏の石像を彫り続けていた。
 一平は陣内に勝負を挑むと、陣内は仏像が完成する三日後を指定する。
 三日後、その仏像の前で、二人は対峙する…」

・「地獄小僧」(ヒバリ・ヒット・コミックス「地獄小僧」からの続き)(背表紙「ヒバリ・マーク」に収録)
「流れ流れて、地の果て、雪国に地獄小僧はいた。
 雪原の中、凍死寸前の彼はある少女に助けられる。
 その少女の両親は出稼ぎに出たまま、消息を絶ち、少女は祖父と二人で暮らしていたが、祖父はすでに病死。
 また、少女も実は死んでおり、自分を捨てた両親への恨みの念から、雪少女となって、家々を訪れては、人を凍死させていた。
 祈祷師のお告げにより、少女の死体のある家は焼き討ちにあい、その際に、地獄小僧も瀕死の重傷を負う。
 遂に、息絶えた地獄小僧は地獄へ行き、閻魔大王より千年地獄の刑を科されるのだが…」

 ジェットコースター的展開で有名なトラウマ・ホラー「恐怖列車」が売りですが、他の収録作が、首を捻ってしまうようなものが多く、何とも形容しがたい読後感を味わえます。
 ギャグを狙って、変態性ばかりが際立ってしまった「狂人時代」は文字通りの「怪作」ですが、それ以上に、前期のバージョンでしか読めない「奇病時代」(一部で有名)は本気でヒド過ぎます。
 全体的に、中途半端な作品を寄せ集めたような、雑然とした印象がある単行本です。

・備考
 HC版、水濡れにより、後半に歪みあり。

2018年1月1日 ページ作成・執筆

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