日野日出志「幻色の孤島」(1976年9月15日発行/HC・40)
日野日出志「ぼくらの先生」(1985年10月6日/青100)

 収録作品

・「ぼくらの先生」
「ぼくらのクラスの先生は学校中の人気者。
 子供が大好きで、気の優しい彼は、大きな体と額にあるホクロから大仏先生の愛称で呼ばれる。
 また、無類の動物好きで、家で様々な動物がケージに飼ってある。
 子供達から慕われる大仏先生であったが、彼の恐ろしい秘密とは…?」

・「おーいナマズくん」
「病弱で、気の小さい少年、鯰(ナマズ)太郎。
 彼の実家のある村は、代々ナマズを神社にて祀っていた。
 町の学校へ転校した彼は、名前を理由に、いじめられる。
 夏休み、彼は、神社の裏手にある、なまず沼の畔で、神様に、皆を見返したい、もういじめられたくない、と願う。
 すると、沼の主である、大ナマズが現れ、彼の身体に乗り移る。
 大ナマズの助力を得て、太郎は身体を鍛え、自信をつけていく…」

・「かわいい少女」(「少年キング」1972年2号)
「古い民家や村の写真を撮るために、旅をしている青年。
 道に迷った彼は、夕暮れ時に、ある村に辿り着く。
 道を聞くために、彼がある家を訪ねると、少女が一人留守番をしていた。
 両親が葬式から戻るまで、彼は囲炉裏のそばで待たせてもらうが、その間、少女は彼に村に伝わる伝説を語る。
 昔、この村の人は足を怪我した老僧を手厚くもてなし、老僧はこの村の寺に住むようになる。
 この老僧の不思議な力とは…?」

・「幻色の孤島」(1971年)
「気が付くと、男は奇妙な孤島にいた。
 彼は記憶をなくしており、原色に彩られた風景の中をさ迷い歩く。
 そのうちに、巨大な門を目にする。
 門の周りには大きな石を積み上げた塀が続いており、その中には仮面を付けた人々が住んでいた。
 男は門の内側に入ろうとするが、門の内側の人々は彼を攻撃する。
 彼は、門近くに隠れ住み、ひそかに門の周辺を観察する。
 だが、入り口は全く見つからず、彼は向こう側の世界への憧れと懐かしさを募らせていく。
 門の向こう側にはどのような世界があるのだろうか…?」

・「つめたい汗」
「夏、暑さに苛立つ浪人。
 一休みするために、茶屋に立ち寄るものの、彼の神経を逆撫ですることばかり。
 遂に、我慢の限界に達した浪人は、彼を小バカにした雑夫を斬り捨てるのだが…」

・「猟人」
「冬山で吹雪に遭った男。
 彼は、山小屋に住む老人に助けられる。
 男と老人は狩猟の趣味を同じくし、意気投合、酒を酌み交わす。
 男がひと眠りして、酔いが覚めた頃、老人が秘蔵のコレクションを男に見せてくれると言うのだが…」

・「人魚」
「鯉好きな殿の命を受け、陣内という侍が人魚を探す旅に出る。
 人魚は蝦夷地の奥深くの湖に棲み、雪のような白い肌に漆黒の瞳に長い黒髪、そして、黄金をまぶしたような七色の鱗が輝くさまはこの世のものとは思えない美しさだと伝えられていた。
 彼は様々な艱難辛苦を乗り越え、地獄山に到着し、そこの老婆から湖の場所と人魚のことを教わる。
 人魚は七年に一度、七日しか現れず、陣内はその日をただ待ち続ける。
 遂に、ある夜、彼は「永遠不滅の美神」たる人魚の舞う光景を目撃する。
 そして、彼は樽に詰めた人魚を城に持ち帰るのだが…」

 デビュー作「つめたい汗」から、強烈なトラウマ・ホラー「幻色の孤島」、民話風の「かわいい少女」(サキ「開いた窓」が下敷き)、幻想的な「人魚」等、バラエティー豊かな傑作短編集です。
 見所は何と言っても、名作「幻色の孤島」。
 隅々までトラウマな幻色に染め上げられた「悪夢のパノラマ」というべき作品で、この次元にまで達した作品はこの世にほとんど存在しないのではないでしょうか?(個人の感想です)
 あと、江戸時代を舞台とした、幻想的な「人魚」は、不思議な余韻を残します。(侍の妄想と切り捨てることも可能ですが…。)

 「幻色の孤島」はヒバリ・ヒット・コミックスよりも先に虫・コミックス版がありますが、そちらでは「猟人」の代わりに、「ばか雪」と「水の中の楽園」が収録されております。

・備考
 HC版は非常にボロい。カバーがボロボロで、欠損やテープ補修が幾か所あり。本体もシミが多く、ヨレヨレ。

2018年1月1日 ページ作成・執筆
2018年1月29日 加筆訂正
2023年1月27日 加筆訂正
2023年11月30日 加筆訂正
2023年12月27日 加筆訂正

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