杉戸光史「生首館」(1980年5月10日発行/黒138)
「美也子は毎夜、生首が身体を返すよう叫ぶという悪夢に悩まされる。
公園で、彼女が男友達の勅昭(のりあき)に悪夢のことを相談していると、見知らぬ男が美也子の肩を叩く。
彼は右腕が自分の自由にならないようで、彼の頭上には、夢に出て来る生首の幻影が浮かんでいた。
この件をきっかけに、勅昭は一年前の事件を思い出す。
その事件とは、朝井由貴という娘が、生首死体で発見され、胴体が見つからずじまいだったというものであった。
何らかのヒントがあるかもと、美也子と勅昭が朝井由貴の墓参りを行くと、墓に見知らぬ娘が参っていた。
娘は二人に気付くと、逃げ出すが、その走り方は朝井由貴とそっくりであった。
娘を見失い、二人が帰ろうとすると、今度は男の悲鳴が聞こえてくる。
駆け付けると、森の中の屋敷から、公園で会った男が走り出てきて、右手で自分の首を絞め、絶命。
二人は警察を呼ぶが、現場に戻った時には、死体は消えていた。
勅昭が屋敷を調べようとすると、如何にも頑固そうな老人が現れ、二人を追い返してしまう。
その頃から、美也子の身辺では怪死事件が連続し、夢に出て来る生首は身体の一部を一つずつ取り戻していく。
生首男の正体とは…?」
後記によると、杉戸光史先生が交通事故で入院した際に、「ケガした手足をとりかえたらその人はどうなるんだろう」と考えたことがきっかけで産まれた作品とのことです。
ストーリーはまあまあ、面白いと思うのですが、構成に難ありで、どこかとりとめのない印象のみ残ります。(注1)
そのせいで、生首男の正体も納得いかないものになっているように思います。
あと、男の左腕を中年のマダムにつなげてたりしていて、谷ゆきお先生の怪作「おとこ足の少女」がフラッシュバックいたしました。
ひばり書房黒枠単行本からの再刊です。
再刊の際に、巻末の「後記」が削られております。
・注1
謎の娘の名前が最初は「奇死子」なのに、ラストは「不死子」になっているのは、やはり、描きとばしていたから?
2019年7月10日 ページ作成・執筆