川島のりかず「私は生血が欲しい」(1988年9月6日発行/青258)

「夏休み、唯はミーコと共に田舎に遊びに行く。
 しかし、妙な霧の中に迷い込み、ウロウロしているうちに、唯は崖から滑落し、突き出ていた木切れが右足を貫通。
 ミーコと怪我を負った唯は、見知らぬ村に迷い込むが、そこは異次元の村であった。
 村の老婆は唯の治療として、傷口に泥を塗ろうとする。
 拒否する唯に、皆は「とに角 ここでは信じれば 助かるのだ シアワセになれる」と言う。
 唯とミーコは村からの脱出口を捜し求めるが、力尽きたところを、もとの世界から迷い込んで、長い間、この村に暮らしている医者と青年に助けられる。
 仕方なくこの村で暮らすことにする二人だが、ある日、村で奇病が発生。
 その病気は「体がむくんで激痛のうえ体が溶けてしまう」というもので、治すには「双頭のヘビの生血」を飲まなければいけない。
 が、双頭のヘビが見つからないので、代わりに、人間の生血を使うことになり、唯とミーコが狙われる。
 時を同じくして、青年がもとの世界に戻る、空間の切れ目を発見。
 青年と医者は惨殺されてしまうが、唯とミーコはもとの世界に戻ることができた。
 しかし、二学期が始まり、ミーコが奇病に冒されていることが発覚する…」

 どう説明したらいいのか、端緒すら掴めない、異端の作品。
「とに角 信じれば 助かるのだ シアワセに」なるために、変容する少女の物語…と言っていいものかどうか…。
 川島のりかず先生が、「発狂」以外に、心の平穏を得た「完璧な状況」を提示した、恐らく、唯一の作品ですが、その「状況」があまりにもあんまりで絶句するしかありません。
 肉体からも自我からも解放された「本来の魂のありかた」というものは鈍重な肉体をまとった我々には想像もつかないものなのでしょうか、そういう「本来の魂のありかた」というものを描いてみたかったのかもしれません。
 川島のりかず作品の中で最も宗教的な作品だと思います。一歩間違えれば、カルト狂信者の心理すれすれでしょうが…。

平成27年1月20日 ページ作成・執筆

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